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2023年度からの第4期がん対策推進基本計画に向け、現行「第3期計画」の中間評価を実施―がん対策推進協議会

2019.7.1.(月)

 2018年度からの「第3期がん対策推進基本計画」に沿った取り組みがどのように進んでいるか、▼がんの予防▼がん医療の充実▼がんとの共生▼これらを支える基盤の整備―の各項目に沿って中間評価を行っていく―。

 6月28日に開催された「がん対策推進協議会」(以下、協議会)で、こういった内容(第3期がん対策推進基本計画の中間評価)が概ね了承されました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 中間評価結果は、2023年度からの「第4期がん対策推進基本計画」策定論議における最重要資料の1つとなります。

6月28日に開催された、「第73回 がん対策推進協議会」

6月28日に開催された、「第73回 がん対策推進協議会」

 

がんゲノム医療の推進に向け、「我が国発の抗がん剤」開発状況などを調査

 我が国のがん対策は、5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に沿って実施され、現在、第3期計画(2017年10月、2018年3月に閣議決定)が稼働しています。第3期計画が終了した後は、次の第4期計画へバトンタッチとなりますが、「第3期計画の終了を待って、その効果等を評価し、第4期計画を策定する」のでは、第3期計画と第4期計画との間に隙間が生じてしまいます。

そこで、第3期計画の中間年となる2020年度に「中間評価」を行い、その結果を踏まえて第4期計画策定に向けた議論をしていくのです(医療計画の中間見直しとも歩調を合わせることになる)。
がん対策推進協議会 180830の図表
 
協議会では、「どういった指標を用いて中間評価を行えばよいか」を、第3期計画の「分野別施策」の柱である▼がんの予防▼がん医療の充実▼がんとの共生▼これらを支える基盤の整備―の各項目に沿って検討。6月28日の会合では、「基盤整備」の評価指標を検討するとともに、中間評価全体の項目を固めました。

第3期がん対策推進基本計画の概要

第3期がん対策推進基本計画の概要

 
まず「基盤整備」については、▼研究に関して「日本発の治療薬の創出に向けて導出された治験の数」を日本医療研究開発機構(AMED)のJCRP(japan cancer research project)現況報告から把握する▼人材育成に関して国の実施する研修(緩和ケア研修(医師・医師以外)、がんゲノム医療コーディネーター研修会、小児・AYA世代のがんの長期フォローアップに関する研修会)への参加人数を把握する▼がん教育に関して「外部講師を活用してがん教育を実施した学校の割合」「がん相談支援センター/相談支援センターについて知っているがん患者・家族の割合」を把握する―こととしてはどうか、との提案が厚生労働省から行われました。

がん研究について、薬剤開発状況を指標にした背景には「がんゲノム医療」の進展があります。がんゲノム医療は、言わば「患者の遺伝子変異調べ、個々の患者に最適な抗がん剤を選択して投与する治療法」ですが、「遺伝子の変異は判明したが、その変異に適した抗がん剤がまだ開発されてない」という点がボトルネックとなります(複数の遺伝子変異を一括して検査するパネル検査の治験等では、最適な抗がん剤が見つかる確率は現時点では1-2割程度にとどまる)。このため、多様な抗がん剤の開発が期待されるのです(関連記事はこちらこちらこちら)。

ただし委員からは、「がん研究に関して、医薬品以外の治療法(例えば高度な放射線治療機器を用いた治療法)に関する治験数も調べる必要がある」との指摘が出ており、研究に関しては、JCRP現況報告から「がん治療」に関する治験実施数などを、詳細に調べることになりました。

なお、薬剤開発状況について「海外の開発状況を調べてはどうか」との指摘も出ていますが、中間評価は、あくまでも「第3期がん対策推進基本計画で提言された取り組みが、どれだけ実施されているか」を評価するものです。海外における薬剤開発は、我が国の「がん対策推進基本計画」とは直接関係なく(国際共同治験などはあるが)、開発促進は期待されますが、「がん対策推進基本計画の評価」には馴染まないと考えられます。

また、がん教育に関して、「地域の学校教員へのがん教育研修受講状況などを調べられないか」などの指摘が数多く出され、厚生労働省・文部科学省で「把握可能かどうか」なども含めて検討することになりました。

都道府県のがん対策推進協議会に患者代表がどれほど参加しているかも調査

 「基盤整備」論議が済んだことで、第3期計画の「分野別施策」の柱である▼がんの予防▼がん医療の充実▼がんとの共生▼これらを支える基盤の整備―のすべてについて一通りの議論を終えたことになります。厚労省は、これまでの議論を整理した「第3期がん対策推進基本計画中間評価指標(案)一覧」を提示しています。

項目は膨大ですが、目立つものを拾ってみると、予防に関しては、▼がんの年齢調整死亡率▼がん種別の年齢調整死亡率の変化▼がん検診受診率▼精密検査受診率―などが調べられます。

また、がん医療に関しては、▼医療が進歩していることを実感している患者の割合▼納得のいく治療を受けられたがん患者の割合▼がんゲノム医療中核拠点病院等における診療実績(遺伝子パネル検査を受けた患者数、遺伝カウンセリングを実施した患者数など)▼拠点病院における5大がん患者の術後30日以内の死亡率▼がん専門薬剤師またはがん薬物療法認定薬剤師が配置されている拠点病院の割合▼専門チームを整備し、がん患者に関してコンサルテーションを行っている拠点病院の割合▼緩和ケアチームを設置している病院の割合▼拠点病院に通院・入院中のがん患者でリハビリテーションを受けた患者の割合▼拠点病院において支持療法に関する標準診療を実施された患者の割合▼希少がんについて、専門的な医療を受けられたと感じているがん患者の割合▼小児がん患者の3年生存率▼AYA世代で発症したがん患者の3年生存率▼常勤の病理専門医が1名以上配置されている拠点病院の割合▼臨床試験・治験に関する窓口がある拠点病院の割合―などを把握します。

さらに、がんとの共生に関しては、▼自分らしい日常生活が送ることができていると感じるがん患者の割合▼がん診断から治療開始前に病気や療養生活について相談できたと感じるがん患者の割合▼心のつらさがあるときに、すぐに医療スタッフに相談できると感じている患者の割合▼国民の緩和ケアに関する認識▼ピアサポーターについて知っているがん患者の割合▼がん情報サービスにアクセスし、探していた情報にたどり着くことができた者の割合▼在宅で亡くなったがん患者の医療に対する満足度▼望んだ場所で過ごせたがん患者の割合▼治療開始前に、就労継続について説明を受けたがん患者の割合▼がんと診断後も仕事を継続していたがん患者の割合▼治療と仕事を両立するための勤務上の配慮がなされているがん患者の割合▼治療開始前に、生殖機能への影響に関する説明を受けたがん患者・家族の割合▼治療開始前に、教育支援等について、医療従事者から説明を受けたがん患者・家族の割合▼治療中に、学校・教育関係者から、治療と教育の両立に関する支援を受けた家族の割合―などを調べます。

基盤整備については、上述のとおり研究(日本発の薬剤や機器に関する治験実施状況)や教育、人材育成の状況を調べます。

なお、がん患者代表の1人として協議会に参画する村本高史委員(サッポロビール人事部プランニング・ディレクター)の指摘を踏まえ、「都道府県のがん対策推進協議会への、患者代表の参加状況」も把握することとなりました。第3期計画で「都道府県計画の見直しの際には、都道府県の協議会等にがん患者等が参画するなど、都道府県は、関係者等の意見の聴取に努める」と提言されていることを重視した評価指標と言えます。

 
こうした中間評価項目の内容(評価指標)について、上述のように「がん教育の推進状況(教員のがん教育研究への参加状況など)を勘案できないか」という指摘も出ていますが、山口建会長(静岡県立静岡がんセンター総長)と事務局(厚生労働省・文部科学省)とで相談の上、必要な対応を行うことを条件に協議会としての了承が得られました。

●第3期がん対策推進基本計画中間評価指標(案)一覧はこちら(さらに一部修正が行われます)

評価指標には、「すでに厚生労働省の統計資料(国民生活基礎調査やDPCデータなど)から把握可能なもの」、「患者体験調査を実施し、把握すべきもの」、「厚生労働科学研究での分析等が必要なもの」などが混在しており、可能な項目からデータの収集・分析をはじめ、協議会で中間評価論議を行っていくことになります。

がん医療の質向上・経営の質向上を目指すCQI研究会、8月に都内で研究会を開催

 ところで、100超のがん診療連携拠点病院などが参加する CQI(Cancer Quality Initiative)研究会(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、DPCデータをもと「がん医療の質向上」に向けた研究を行っており、メディ・ウォッチを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)がデータ分析等を担当しています。

 今年8月24日には、都内で第14回研究会を開催します。研究会では、「診療の質」と「経営の質」を向上するためのデータ分析方法を議論。GHCの開発した「がん診療分析システム」(下図)を用いて、例えば、結腸がんの「術式の割合」(開腹か、腹腔鏡か)、「平均在院日数」や「周術期の医療行為」などを、参加病院の実データを用いてベンチマーク分析し、自院の課題や改善方向などを探ります。

さらに厚労省のがん対策担当者による講演も予定しており、「がん医療の質・経営の質向上」を検討する絶好の機会です。CQI研究会の模様は、別途、お伝えします。

 

 

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