2022改定は診療報酬本体0.5%超の引き上げを、医療法人の事業報告書開示は丁寧な議論を―四病協
2021.12.16.(木)
現在「紙」ベースで行われている毎年度の医療法人の事業報告等について、「2022年度からG-MISへの電子データアップロードによる届け出とし、2023年度からは都道府県ホームページ等で閲覧可能とし、将来には全国データベースを構築する」考えが厚生労働省から示されている―。
しかし自由な閲覧やデータベース化には想定しきれない弊害が出る可能性もあることから、「丁寧な議論」を改めてしていく必要がある―。
12月15日に開催された四病院団体協議会の総合部会で、こういった意見が固められたことが全日本病院協会の猪口雄二会長から明らかにされました。
また2022年度の次期診療報酬改定に関して「診療報酬本体0.5%超の引き上げ」を、地域医療構想に関して「2040年度を見据えた必要病床数の設定」を求める考えもまとめられています。
医療法人の事業報告書、デジタル化は良いが「閲覧方法」等について改めて議論が必要
医療法人には、会計年度が終了するごとに次の書類を都道府県知事に届け出ることが義務付けられています。保険診療が公的性格を色濃く帯びていること(財源の7―9割は国民の税金、医療保険加入者の保険料・税で賄われている)、健全な経営を確保する必要性のあること(経営が不安定になれば地域医療に多大な影響が出てしまう)などを踏まえた義務です。
▼事業報告書
▼財産目録
▼貸借対照表
▼損益計算書
▼監査報告書
▼関係事業者との取り引きの状況に関する報告書
▼その他の書類
現在、これらの書類提出は「紙」ベースで行われていますが、厚労省は(1)2022年度からG-MISへの電子データアップロードによる届け出とする(2)2023年度からは都道府県ホームページ等でデータを閲覧可能とする(3)将来には全国データベースを構築する(検討中)―という方針を11月2日の社会保障審議会・医療部会に提示しました。
この点、(1)のデジタルアップロードについては、事務負担軽減というメリットが都道府県にも医療機関にもあるため反対意見は出ていませんが、(2)(3)については医療機関サイドから▼閲覧者が匿名で、つまりどこの誰か明らかでない人間が情報にアクセス可能とするのは問題ではないか。行き過ぎた詮索や営業活動などに使われるのは遺憾ではないか▼今の未成熟なネット事情を見れば、誰でも閲覧できる状況とすれば想定外の問題が生じる可能性が高い。医療に専念しなければならない一方で、そうした想定外の問題への対応をしなければならないとなれば医療法人経営が立ち行かなくなる―といった懐疑的な意見が出ています。
全日本病院協会・日本病院会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会の総合部会(会長・副会長といった各団体幹部の集まり)でも、12月15日にこの点を改めて討議。やはり上記のような「問題点」が再確認され、例えば「閲覧する場合には、希望者が都道府県に申し込むなどして身分を明らかにしてもらうなどの仕組みが必要ではないか」「医療法人は民間の法人である。同じ民間の法人である株式会社などは、上場企業でもそこまでの情報開示をしているのだろうか?上場していない企業ではどうなっているのか?その当たりを明確にしたうえで、再度検討する必要があるのではないか」などの意見が出され、「この問題について、厚労省や関係者と話し合う場を設け、閲覧や全国データベース化の必要性などから議論しなおすべき」との考えで一致したことが猪口・全日病会長から報告されました。
現在の「紙」ベースでの運用については「閲覧の際に申告が必要な自治体」「自由に閲覧できる自治体」「コピーが可能な自治体」など都道府県によって運用がさまざまです。この点についても猪口・全日病会長は「一度、状況をすべて把握し、統一ルールの必要性を検討する必要があるのではないか」といった旨の考えを示しています。
2022年度改定、看護職員賃金引き上げなどを踏まえて「本体0.5%超の引き上げ」が必要
また、2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が進んでおり、近く「改定率」が決定します(年末の2022年度予算案編成の中で決定される)。この点、四病協では12月13日に後藤茂之厚生労働大臣に充てて、▼診療報酬本体について大幅なプラス改定を行う▼不妊治療の保険適用や看護職員の賃上げに要する費用は、本体改定と別枠で手当する―ことなどを求めています。
猪口・全日病会長は後者(不妊治療の保険適用、看護職員の賃金引き上げ)について「プラス0.5%の引き上げが必要」と見積もり、そこに前者の本体プラス改定を行うことを考えれば「0.5%超の引き上げを行う必要がある」と訴えています(関連記事はこちら(不妊治療の保険適用論議)とこちら(看護職員の賃金引き上げ論議))。
さらに、地域医療構想の実現に関して「2025年度は目前である。そろそろ2040年度、あるいはその先をも見据えた必要用病床数を考えていく時期に来ている。2025年度以降は現役世代人口が急激に減少し、在院日数も大きく変化していく。そうした点を踏まえて必要病床数を考え直す必要がある」との考えで四病協が一致している点も猪口・全日病会長から報告されています(関連記事はこちら)。
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