2022年度は診療報酬プラス改定する環境にない、メリハリをつけ急性期病床の集約化など進めよ—中医協・支払側委員
2021.11.26.(金)
新型コロナウイルス感染症は落ち着きを見せているが、社会・経済の先行きは不透明である。コロナ禍で2020年度の医療機関等経営は悪化したが、医業黒字を維持するところも決して少なくなく、補助金を加味すれば総じて医療機関経営は安定している―。
こうした状況に鑑みれば、2022年度は診療報酬を引き上げる環境になく「配分の見直しに主眼をおいたメリハリのある改定」とすべきである―。
具体的には、▼急性期病床における医療資源の集約▼急性期から回復期、慢性期までの連携推進▼かかりつけ医を起点とした外来医療の確保▼オンライン診療の推進—などを重視すべきである―。
中央社会保険医療協議会の支払側委員は11月24日に、後藤茂之厚生労働大臣に宛ててこのような要請(令和4年度診療報酬改定に関する要請)を行いました(健保連のサイトはこちら)。年末に向け、改定率を巡る議論が熱を帯びてきています。
診療報酬本体のマイナス改定を求めるかについては、支払側内部で意見割れる
要請を行ったのは、▼健康保険組合連合会▼国民健康保険中央会▼全国健康保険協会▼全日本海員組合▼日本経済団体連合会▼日本労働組合総連合会—の6団体です。
6団体では、▼新型コロナウイルス感染症の流行・拡大は関係者の努力で今秋から落ち着いてきているが社会・経済の先行きは不透明である▼昨年度(2020年度)の医療費は一時的に減少したが、少子・高齢化が進展する中で「人口構造・医療ニーズの変化」は止まらない▼新興感染症に対応できる功利的・効果的な医療提供体制の構築、医療保険制度の持続可能性確保が継続した重要課題である▼医療費の自然増の水準は依然として高い―といった具合に状況を分析。
また医療機関経営に目を移せば、▼2020年度には未曽有の医療費減少となったが、増加基調に戻りつつある▼コロナ対応の診療報酬臨時特例・補助金による支援が行われている―と指摘。
さらに、このほど中央社会保険医療協議会に報告された第23回医療経済実態調査結果によれば、「2019年度から20年度にかけて医業損益差額は悪化した」ものの、▼医療法人病院は黒字を維持し、一般診療所、歯科診療所、保険薬局は依然として高い水準の黒字である▼コロナ関連補助金を含めると、全体として損益差額は2019年度から改善し、総じて医療機関経営は安定している▼単月調査(2019・20・21年の各6月を比較)では、2021年は2020年に比べてコロナ関連補助金を含めずとも概ね改善し、一般診療所では2019年を上回っている―という「好調」要素も少ないことに着目しています。
こうした状況を踏まえれば、「2022年度は診療報酬を引き上げる環境にない」「配分の見直しに主眼をおいたメリハリのある改定とすべき」「診療報酬と補助金・交付金の役割分担・効果を検証し、整理するべき」と強調しました。
また診療報酬改定の内容に関しては、例えば▼急性期病床における医療資源の集約▼急性期から回復期、慢性期まで目に見えるかたちでの円滑な連携▼幅広い疾患に対応できるかかりつけ医を起点とした安心で安全な医療の確保▼患者のニーズと技術進歩を踏まえたオンライン診療の推進—などを重視しています(関連記事はこちらとこちら)。
急性期入院医療に関しては、コロナ感染症に対応する中で「医療資源(例えば医師や看護師などの人材)が散在してしまっている」ために重症患者対応が手薄になってしまっているという課題が明らかになりました。また、コロナ禍でも少子高齢化の進展は止まりません。来年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める、いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していくこと見られます。こうした中では「急性期病床の集約化、機能分化」「急性期病床と回復期・慢性期病床との連携推進」が非常に重要になり、2022年度改定でも強力な対応をとる必要があると6団体は考えています。
あわせて限られた医療資源の中で医療の質を高めるため、▼後発医薬品を患者が安心して使用できる環境の整備▼経済性も考慮した処方の推進▼創薬力の強化等のイノベーション推進▼医療従事者の働き方改革、処遇改善—についても診療報酬改定を通じて進めることを要望しています。
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