2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2021.12.2.(木)
2022年度の次期診療報酬改定に向け、例えば「経済状況を踏まえた診療報酬改定」「いわゆる敷地内薬局への厳正な対処」なども重要視点に据えて「改定基本方針」を策定してはどうか―。
12月1日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こういった議論が行われました。2022年度の次期診療報酬改定基本方針策定は目前に迫っています。
また、オンライン資格確認等システムの本格稼働から1か月間の状況報告等も行われました。今後に期待が集まります。
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、骨子案は概ね了承
Gem Medで報じているとおり、診療報酬改定に向けた議論は▼改定率(つまり財源配分の大枠)を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中医協で改定内容を詰める―という役割分担をして進められています。
医療保険部会・医療部会では基本方針策定論議を精力的に進めており、12月1日の医療保険部会では、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長が示した「骨子案」に基づいた議論を行っています。骨子案はこれまでの両部会で出された意見を踏まえて作成されており、実質は「取りまとめ案」に近いものとなっています。
骨子案では、(1)新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で 質の高い医療提供体制の構築(重点課題)(2)安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等 の推進(重点課題)(3)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上—の4本柱を基本的視点に据え、それぞれについて具体的な改定方向を示しています(医療部会で既に骨子案が示されており、その内容に関する記事はこちら)。
医療保険部会では骨子案に対し「こうした点を盛り込んでほしい。こうした表現に変えてほしい」などの注文は尽きましたが、内容への異論・反論は出ていません。厚労省で委員の意見を踏まえ最終取りまとめ案の作成に入ります。
医療保険部会委員から出された注文内容を見ると、例えば▼いわゆる「敷地内薬局」は医療保険制度の面からも地域包括ケアシステムの面からも問題である。薬局側・医療機関側の双方に厳しい対応をすべき(佐野雅宏委員:健康保険組合連合会副会長、森昌平委員:日本薬剤師会副会長)▼経済回復には業種や企業規模などで大きな格差があり、先行きが不透明である。診療報酬改定でもこうした点を勘案すべき(藤井隆太委員:日本商工会議所社会保障専門委員会委員)▼中央社会保険医療協議会の支払側が後藤茂之厚生労働大臣に申し入れたように2022年度はプラス改定を行えるような状況になく、配分見直しに主眼を置くべき(安藤伸樹委員:全国健康保険協会理事長)▼看護職員の賃金引上げについて診療報酬で対応する場合、現場職員に確実に届く(賃金引上げが担保される)ような仕組みとすべきである(村上陽子委員:日本労働組合総連合会副事務局長)▼医療分野でのデジタル化推進の重要性を基本認識等に書き込むべき(菅原琢磨委員:法政大学経済学部教授)▼OTC類似薬について保険給付からの除外などを指摘する委員もおられるが暴論である。一般用医薬品の漫然とした長期服用は危険であり、必要な医薬品はきちんと保険給付すべきである(松原謙二委員:日本医師会副会長)—などが目立ちます。
診療報酬改定に直接関連しない意見も目立ち、厚労省で「診療報酬改定の基本方針」に盛り込むべき事項か否かを精査し、必要な修文を行い、医療保険部会で最終とりまとめを行うことになります。間もなく改定基本方針が固まります。
オンライン資格確認の本格稼働から1か月、マイナンバーカード出の資格確認は12万件弱
12月1日の医療保険部会では、▼薬剤給付の適正化▼オンライン資格確認の状況―なども議題にあがりました。
前者の「薬剤給付の適正化」では、上述した「OTC類似薬」について「保険給付からの除外や保険償還率の引き下げ」を検討していくべきとする意見(例えば佐野委員ら)と、これに強く反対する意見(例えば松原委員ら)とが大きく対立する構図が続いています。今後も議論が継続されます。
また、健康保険組合を対象にした「医療費適正化に繋がるセルフメディケーション推進事業」(例えばレセプトデータから医療用医薬品をスイッチOTC(医療用医薬品、処方医薬品から一般用医薬品に転用されたもの)に転換可能と思われる患者を抽出し、いわゆるセルフメディケーションに関するリーフレットを送付して、セルフメディケーションの普及啓発を図るなど)が今年度(2021年度)から実施されていることも紹介。この事業の中で一定の成果(医療費適正化効果)が認められれば、2024年度からスタートする新たな医療費適正化計画(都道府県による計画)に反映させていくことも検討されます。
後者のオンライン資格確認については、本格稼働した10月20日からの1か月間(10月20日-11月16日)の利用状況が公表されています。
オンライン資格確認運用施設(11月14日時点で1万5657施設)において▼マイナンバーカードによる資格確認が11万6358件▼被保険者証による資格確認が1085万2658件▼一括照会(医療機関等が翌日の予約患者の被保険者資格状況を審査支払機関に照会する)が329万9107件—行われています。今後、マイナンバーカードの被保険者証利用が進み、オンライン資格確認等システムの導入が医療機関等で進むことで、「マイナンバーカードによる資格確認」数が増加していくと期待されます。
また、マイナンバーカードによる資格確認の際には、「当該医療機関で特定健診や薬剤等の情報閲覧を許可するか否か」を患者自身が選択することになります。この点について同意(許可)をし、実際に情報閲覧・活用が行われたケースは、10月20日からの1か月間(10月20日-11月16日)では特定健診等3813件、薬剤7318件にとどまっています。ただし「同意」の件数ではなく、「情報の活用にまで至った」件数である点に留意が必要です。現在では格納されているデータが少ない(薬剤については今年(2021年)9月以降のデータ、特定健診については2020年度実施分以降のデータ)と思われ、データが蓄積される中で利活用件数も増加していくと予想されます。
なお、藤井委員は「情報閲覧のメリット、許可しない場合のデメリットを国民に広くPRすべき」旨の考えを示しています。特定健診や薬剤情報、さらには今後、閲覧可能となっていく過去の診療情報を医療機関サイドが閲覧することで治療内容や処方内容の質が格段に向上すると期待されます(例えば重複投薬や禁忌薬の回避、過去の処方内容を踏まえた現在の処方内容の改善など)。「マイナンバーカードの被保険者証利用」と合わせて、こうした「診療情報の利活用」についても広く国民の理解が進んでいくことが望まれます。
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