日数に応じた調剤料の階段は合理的か?制度の抜け穴ついた「事実上の敷地内薬局」に厳正対処を―中医協総会(3)
2021.12.1.(水)
調剤料は、現在「処方日数に応じた階段状の評価」になっているが、「処方日数が長い」からと言って「高い点数を設定する」ことに合理性はあるのか―。
いわゆる敷地内薬局について、医療機関と薬局との間に第三者を介すことで「厳しい評価から逃れる」事例が散見される。こうした制度の抜け穴をつく事例について厳正に対処していくべきではないか―。
11月26日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした議論も行われました。
2022年度改定で「対人業務への移行」をどう進めていくべきか
2022年度の次期診療報酬改定に向けた論議が鋭意進められています。11月26日の中医協総会では、▼訪問看護▼データ提出やレセプト記載要領▼調剤報酬―を議題としました。本稿では調剤報酬改革について眺めてみます(訪問看護に関する記事はこちら、データ提出等に関する記事はこちら)。
調剤報酬に関しては、1巡目の議論を踏まえて次のような点が議題に上がりました(関連記事はこちらとこちら)。
(1)対物業務から対人業務への移行を見据えて、「調剤料」やその加算の評価をどう考えていくべきか
(2)薬局の同一グループの店舗数や立地別の収益状況を踏まえた調剤基本料、いわゆる敷地内薬局における評価をどう考えるか
(3)調剤基本料の【地域支援体制加算】について、今年(2021年)8月から施行された地域連携薬局も踏まえて要件をどのように考えていくか
(4)同一の薬局の利用による薬剤の一元的な把握等を推進するための方策をどう考えるか
(5)医療用麻薬持続注射療法、在宅中心静脈栄養法を実施している患者への薬学的管理を含めた【在宅患者訪問薬剤管理指導】の評価について、どう考えていくか
まず(1)の調剤料は、まさに「調剤業務を評価する」報酬で、現在は処方日数に応じた階段状の点数設定がなされています。
この点、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)や支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「日数に応じた評価はおかしい。処方日数が増えることでどのような手間が増えるのだろうか、調剤業務の内容精査を行ったうえで抜本的な見直しをしていく必要がある」と主張。
これに対し診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「対物業務・対人業務の双方があって調剤業務が完了する。対物行も欠かせせず、その質を担保するための評価は継続すべきである」「調剤料は技術料の過半を占めており、大きな見直しは薬局経営への影響が大きい」と反論しています。
また(2)の基本料では、とりわけ「いわゆる敷地内薬局の評価」に厳しい意見が相次ぎました。
いわゆる敷地内薬局とは、医療機関の敷地内に薬局を開設しており、▼医療機関と不動産取引その他の特別な関係がある▼病院敷地では2016年10月以降、診療所敷地では2018年4月以降に開局し、処方箋集中率が70%を超えている―という要件を満たす薬局と定義され、調剤基本料が通常の「42点」(調剤基本料1)であるところ、「9点」の特別調剤基本料を算定することになります。基本的に当該病院・診療所からの処方箋のみを応需することとなり「薬剤の備蓄品目数が少ない」(管理が比較的容易で廃棄も少ない)ことから経営効率が良いとみなされ、点数が低く設定されているのです。
しかし、例えば「医療機関と薬局とが直接不動産賃貸借契約を結ばず、間に第三者を介する」などの、いわば「制度の抜け穴」をつくケースが少なくないことも分かっています。
このため中医協では診療側・支払側双方の委員から「厳格な対応をとるべし」との意見が相次ぎました。ただし、「こういった事例は、いわゆる敷地内薬局と見做し、特別調剤基本料を適用する」と細かなルールを設けても、「制度の抜け穴」を完全にふさぐことは困難なために鼬ごっことなってしまうことも事実です。2022年度の次期改定でどういった対応が行われるのか注目する必要があるでしょう。
なお、関連して城守委員や松本委員は「敷地内の薬局は『院内処方の外部委託』と見ることが可能である。敷地内薬局では医療機関の院内調剤と同じ点数算定としてはどうか」との提案も行っており、今後の検討に注目が集まります。
また(3)について【地域支援体制加算】の取得要件と、「地域連携薬局」の認定要件とを比較すると下図のような違いがあります。いずれも「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を果たすことを期待するもので、将来的には「加算の在り方を含めた統合」の検討をしていく必要もあり(地域連携薬局=地域連携加算を取得する薬局といったイメージ)、松本委員もこうした方向でも検討を要請しています。
有澤委員もこの方向に反対はしていませんが、「地域連携薬局制度は今年(2021年)8月に始まったばかりであり、今後の認定状況や地域貢献実績等を見ながら、要件の整合性確保を段階的に検討していくべきであると要望しました。
他方(4)は、多くの患者が同一薬局を利用することで「薬剤の一元的管理」が可能となり、例えば「重複処方の削減」や「禁忌の阻止」など、薬学的管理の質向上を目指すものと言えます。お薬手帳の活用も含めて、調剤報酬サイドでどうアプローチしていくべきかを今後、さらに具体的に検討していくことになります。
また(5)は、医療用麻薬持続注射療法や在宅中心静脈栄養法を実施している患者に対する薬学的管理では、▼処方提案▼特定保険医療材料、医療機器の使用説明▼疼痛状況の確認▼配合変化の確認▼カテーテル感染症防止対策—などの「特別な配慮」が必要となる点を踏まえ、評価面でも「特別の配慮」を行ってはどうかという論点です。この点、有澤委員は実態を踏まえた「特別な評価」を求めていますが、城守委員・松本委員は「特別の薬学管理としてどういったものが、どの程度行われているのかに関する詳しいデータを見てから検討したい」と慎重姿勢をとっています。
「対物中心」から「対人中心」への移行を、2022年度改定でどう進めていくのか、さらに議論が深められます。
【これまでの2022年度改定関連記事】
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◆がん対策サポートに関する記事はこちらとこちら
◆難病・アレルギー疾患対策サポートに関する記事はこちら
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◆小児医療・周産期医療に関する記事はこちら
◆データ提出等に関する記事はこちら
◆調剤に関する記事はこちらとこちら
◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちらとこちら
◆医療経済実態調査(第23回調査)結果に関する記事はこちら
◆基本方針策定論議に関する記事はこちら(医療部会3)とこちら(医療保険部会3)とこちら(医療部会2)とこちら(医療保険部会2)とこちら(医療部会1)とこちら(医療保険部会1)
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