技術料と一体評価される機器等、チャレンジ申請の場合に有用性等をどう切り分けて再評価すべきか―中医協・材料専門部会
2021.9.27.(月)
技術料と一体評価される機器・材料についてチャレンジ申請を認めた場合、有用性等をどう切り分けて再評価するべきか。また技術料の引き上げがなされた場合、それをどうメーカーに配分していくのか―。
改正薬機法で設定された「先駆け審査指定制度」「特定用途医療機器」を踏まえた評価を行う際、既存の加算等の重複があってはならない―。
9月22日に開催された中央社会保険医療協議会の保険医療材料専門部会(以下、専門部会)では、こういった議論が行われました。
技術料を引き上げた場合、それを企業側にどう還元していくのか
2022年度の次期材料改革制度改革に向け、材料専門部会では保険医療材料専門組織(材料価格算定ルールに基づいて、個別医療機器の価格設定などを行う中医協の下部組織)からの改革案や材料・機器メーカー等の意見を踏まえた議論が進んでいきます。厚生労働省保険局医療課医療技術評価推進室の中田勝己室長は、9月22日の会合に、第1弾として次のような論点を提示しました。
(1)チャレンジ申請について次の見直しを行う
(i)企業が提出する保険適用後のデータ収集・評価計画に係る事項について、後述する項目をベースに、専門家の意見を踏まえながら申請様式を定型化し、審議の効率化を図る
(ii)「技術料に一体として包括して評価される医療機器等」についても対象とすること、およびその審査プロセスをを検討する
(2)改定薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で「先駆け審査指定制度」「特定用途医療機器」が法制化されたことを踏まえ、現行の補正加算等との整合性を踏まえた評価を検討する
まず(1)のチャレンジ申請について見てみましょう。
医療機器・材料については、例えば長期間体内に埋め込む(ペースメーカーなど)など、その効果評価に長期間が必要なものがあります。こうした機器・材料では、保険適用までに「十分な効果評価」が得られないため、「途中経過で有用性を判断する」こととなり、「価格設定が低くなっている可能性がある」と指摘されるものが少なくありません。
このため2018年度の材料価格制度改革で、保険適用後のデータに沿って新たな機能区分を申請できる(つまり高価格獲得の可能性がある)仕組み(チャレンジ申請)が導入され、2020年度改定で拡大されました。これまでに6製品の有用性が再評価されています。
現在は、保険償還価格(材料価格)が設定される機器・材料がこのチャレンジ申請の対象となっていますが、「技術料と一体として評価される機器・材料でも状況は同じであり、チャレンジ申請の対象とすべきではないか」との指摘が保険医療材料専門組織やメーカーサイドから出ています。8月25日のメーカー等ヒアリングでは、▼人工関節手術を支援するロボット(Makoシステム:手術部位と手術器具の位置関係をリアルタイムで立体的に表示し手術を支援するロボットで、術後疼痛・再手術が軽減される。K939【画像等手術支援加算】の「1 ナビゲーションによるもの」(2000点)として評価▼経皮的冠動脈形成術(PCI)の遠隔治療支援ロボット(CorPath GRXシステム:遠隔支援となるので術者の医療被曝を95%軽減でき、高精度の手術が可能。メーカーは今後のチャレンジ申請に期待を寄せている)―などの具体的技術・機器への対象拡大も提案されました。
こうした声を踏まえて中田医療技術評価推進室長は、(1)(ii)の論点を提示したものです。「対象拡大は認められない」との反対意見は出ていませんが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は改めて「再評価(価格を引き上げるか否かの審査)に当たっては、効果・有効性を見ることになるが、それが技術による効果・価値なのか、機器・材料による効果・価値なのかの切り分けが難しい。そこをどう考えていくのかが、対象拡大の最大のポイントである」と指摘。
また幸野委員は、「技術料と一体となった機器・材料についてチャレンジ申請の結果、高い評価が得られた場合、技術料(手術料など)が上がり医療機関等の収入増になる。そこから機器メーカー等に『引き上げ分』がどう流れていくのか」との疑問を提示しました。この点、医療機器メーカー・卸業者と医療機関等との間では、通常の市場取り引きが行われ、例えば「技術料を●点上げたので、メーカーへの支払額を▲円上げなければならない」などを国が示すことはできません(独占禁止法に抵触する恐れがある)。一方、技術料を引き上げたにもかかわらず、メーカー等に支払われる金額が上がらないのであれば、今般の改正の趣旨である「イノベーションの評価充実 → 優れた医療機器の開発促進」がかないません。幸野委員の疑問は「どのようにしてメーカーに流れるお金を増やし、イノベ―ション評価の実効性を高めていけばよいか」という考えに基づくものと言え、非常に難しい論点です。今後、どういった議論が行われるのか(あるいは「市場取り引きに完全に任せるべき」とし、議論を一切行わないのか)注目する必要があるでしょう。
なお、審査プロセスについて、現在は▼機器・材料は保険医療材料専門組織で原案を作成し、中医協総会で決する▼技術料は医療技術評価分科会で原案を作成し、中医協総会で決する―こととなっており、「技術料と一体となった機器・材料についてチャレンジ申請」の評価をどう進めるのか、今後、整理していくことになります。
また(1)(ii)はチャレンジ申請において提出すべきデータ等を明確化し、評価を効率化するとともに、メーカーサイドの申請へのハードルを下げる狙いもあります。
他方、(2)は、改正薬機法で制定された枠組みを加算等で評価すべきか否かが検討されます。現在、医薬品については【先駆け審査指定制度加算】などがありますが、機器・材料に関しては、希少疾病用医療機器への評価(市場性加算)、先駆け審査指定制度の対象品目は「新規区分に設定する」(一定期間、高価格が維持される)などの評価がなされていますが、小児用の医療機器・材料などの評価離されていません。こうした点について加算での評価がなされれば、メーカーサイドの開発意欲も高まると期待され、材料専門部会でも反対意見は出ていません。
ただし、支払側の幸野委員、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)ともに「重複評価がなされないように留意する必要がある」と指摘しています。単なる「新加算の創設」にとどまらず、既存加算を含めた「評価の組み換え」につながる可能性もありそうです。
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