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2020年度材料価格制度改革を了承、市場拡大再算定ルールの新設、チャレンジ申請の拡大など―中医協総会(3)

2020.1.28.(火)

2020年度の次期医療材料価格制度改革の内容が1月22日の中央社会保険医療協議会・保険医療材料専門部会および総会で了承されました。

●令和2年度材料価格制度の⾒直し(中医協総会資料)

材料価格制度の内容は以下のとおりで、2月上旬に厚労省保険局長通知として各都道府県知事らに発出されます。

1月22日に開催された、「第108回 中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会」



【新規の機能区分に係る事項】

▽原価計算方式においても、イノベーションの評価について加算前の算定価格全体を対象として加算率を乗じる。あわせて加算率の係数を、製品総原価のうち保険医療材料等専門組織での開示が可能な部分の割合(開示度)に応じて▼80%以上では1.0▼50%以上80%未満では0.6▼50%未満では0.2―とする

▽補正加算前の価格が1000万円を超える著しく高額な医療材料で、ピーク時市場規模(予測)が50億円を超える場合は、その価格に応じて補正加算の加算率を傾斜配分する

▽再生医療等製品を原価計算方式で算定する場合の流通経費について、個々の品目毎に精査し、平均的な係数を用いた額よりも低い場合はその額を用いて算定する。条件・期限付承認を受けた再生医療等製品が改めて承認を受けた際、初回承認時に明らかでなかった医療上の有用性が客観的に示された場合は、「チャレンジ申請」の対象として補正加算の該当性について評価する

▽再製造品(単回使用医療機器(SUD)を回収・滅菌等、再製造した製品:RSUD)について、原型医療機器とは別の機能区分として価格を設定(原型医療機器の属する機能区分の価格に0.7を乗じた額を基本とする)し、同一機能区分に属する原型医療機器の再製造品は基本的に同一機能区分とする

▽保険収載希望時にB1(既存機能区分)・B2(既存機能区分・変更あり)の製品も「チャレンジ申請」の権利付与を行い、その場合にメーカーは「収載後のデータ収集、評価計画」を提示するとともに、データ収集の進捗状況等について定期的に報告する。収載時の評価を下回る結果が得られた場合には「評価の見直し」も検討する

▽新規収載品にかかる外国価格調整について、「外国価格平均の1.25倍を上回る場合に1.25倍の価格」とする(現在は1.3倍)。ただし、「医療ニーズの高い医療機器に選定され、開発要請・公募に応じて開発された製品」や「希少疾病用医療機器」「加算を受けて新機能区分が設定されたもの」は「外国価格平均の1.5倍を上回る場合に1.5倍の価格」とする



【既存の機能区分に係る事項】

▽再算定については「当該機能区分に係る市場実勢価格平均が外国平均価格の1.3倍以上である場合を対象とする」仕組みを維持するが、内外価格差のさらなる是正を図るため再算定後額は価格改定前の材料価格の50%を下限とする(現在は25%)

▽新たに市場拡大再算定ルールを設ける

●特定保険医療材料
▼対象機能区分
次の要件の全てに該当する既存機能区分
・(1)原価計算方式で算定された機能区分(2)原価計算方式以外で算定されたもので、設定後に使用方法の変化、適用対象患者の変化などにより使用実態が著しく変化したもの―のいずれか
・機能区分設定または機能区分の定義・算定留意事項等の変更から10年経過後の最初の材料価格改定を受けていない
・(1)年間販売額(改定前価格に年間算定回数を乗じて算出した額)が150億円を超え、基準年間販売額(機能区分設定時の予想年間販売額等)の2倍以上となるもの(2)年間販売額が100億円を超え、基準年間販売額の10倍以上となるもの―
▼同一機能区分内の一部製品のみの適応追加等で市場が拡大する場合も想定されることから、市場における競合性が乏しいと認められるものは、再算定対象から除外し、機能区分を細分化する
▼市場拡大再算定後の額は、原価計算方式で算定された機能区分では改定前の75%、原価計算方式以外の方法で算定された機能区分では85%を下限として、価格引き下げを行う

●検査等の技術料として評価するもの
▼技術料として評価する体外診断用医薬品や遺伝子パネル検査等の一部の医療機器については、新規収載・適応追加等に伴う算定留意事項の変更にあたって、保険医療材料等専門組織で「収載時の市場規模予測を大きく上回り、これにより財政影響が無視できない範囲に及ぶことが想定されるものについて技術料の見直しを検討する基準」を併せて審議し、個々の技術料に応じた基準を設定する(
▼既に収載されている遺伝子パネル検査等の悪性腫瘍遺伝子検査については、将来的な市場拡大が想定されるため、現時点で「市場規模予測の2倍以上」という基準を設定する
▼保険医療材料等専門組織において技術料の見直しの妥当性が認められたものについて、中医協総会で具体的な見直しを検討する



【その他】

▽医薬品の適応判定補助に用いられる医療機器について、C2(新技術)として決定された場合でも、医薬品の保険適用状況を踏まえ、当該医療機器の保険適用決定を行った月の翌月に保険適用する特例を認める

▽B3(期限付改良加算)を期限付の暫定機能区分が設定されるものとしてみなし、B3(期限付改良加算)と決定された製品の後続品はB1(既存機能区分)とすることで先発品と同等の評価を得ることができることとする

▽医療機器の安定供給に支障がでるおそれがある場合に、正当な理由なく厚労省への遅滞ない報告が履行されなかった場合には、当該業者からの保険適用希望書を受け付けないことを可能とする



大きな見直しとしては、「原価計算方式における原価開示度に応じたイノベーションの評価」と「市場拡大再算定ルール新設」の2点があげられるでしょう。

前者については、薬価制度に倣って、従前「営業利益部分」のみに加算を行っていたところを、改定後は「加算前価格全体」を対象に加算が行われます。原価の開示が進まない場合には加算率が低く抑えられます(50%未満であれば加算率は20%となる)が、医薬品については「加算のベースが価格全体に広がったことから、低い開示度でも加算額は従前程度が維持され、原価の開示が進んでいない」という問題点が指摘されています。

今後の原価開示状況等を踏まえて、医薬品・医療材料ともに制度見直しが検討される可能性があります。

薬価制度における原価計算方式におけるイノベーション評価ルールの見直し(中医協・材料専門部会2 191115)



また後者の市場拡大再算定も、薬価制度に倣ったもので、医療保険財政への影響が極めて大きくなる場合に価格の引き下げが行われることになります。再生医療等製品や遺伝子パネル検査など、従前とは異なるタイプの医療材料が登場する中で、新ルールの必要性が強く指摘されたことを受けたものです。

薬価制度における市場拡大再算定ルールの概要(中医協・材料専門部会5 191115)



また、イノベーションを評価するために2018年度改定で創設された「チャレンジ申請」の仕組みが拡大されます。チャレンジ申請とは、新規収載時には有用性等のエビデンスがない製品について、使用実績を踏まえて有用性等エビデンスを構築できた場合に再評価(価格見直し)を行うものです。これまでC1・C2製品が対象でしたが、新たに「B1(既存機能区分)」「B2(既存機能区分・変更あり)」の製品も対象となります。

また収載時の評価を下回る結果が得られた場合には、「評価の見直し」が検討されます。具体的には「再評価により真の臨床的有用性が保険収載時の評価よりも下回るとされた医療材料については、その属する機能区分の見直しを検討する」こととなり、今後の運用に注目が集まります。



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