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医療材料の内外価格差是正に向け、外国価格調整ルールをさらに厳格化―中医協・材料専門部会

2019.10.25.(金)

医療材料の内外価格差をさらに是正するため、「外国価格と国内価格の比較水準」の基準値(現在は原則1.3倍)を厳しく見直すとともに、既収載品における「価格見直しの下限」についても厳しく設定しなおす―。

10月23日に開催された中央社会保険医療協議会・保険医療材料専門部会(以下、材料専門部会)で、こういった方向が概ね固められました。

10月23日に開催された、「第104回 中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会」

既収載品の内外価格差是正ルール、引き下げ下限値のために効果が薄くなっている

材料専門部会では、2020年度の次期材料価格制度改革に向けて▼内外価格差の是正▼遺伝子検査機器の保険適用時期の特例▼保険適用手続きの簡易化▼医療機器の安定供給―を議題としました。

医療材料の価格については、従前より「外国価格と国内価格との間に格差がある」と指摘されており、2002年から「内外価格差の是正」に向けた取り組みが進められてきています。大枠では、新規収載品・既収載品ともに「外国での販売価格と比べて国内価格が一定の基準よりも高額な場合には、基準まで償還価格を引き下げる」という仕組みが設けられていますが、新規収載品と既収載品に分けて見ていきます。

まず新規収載品では、上述のとおり「外国での販売課価格」と比べて、国内価格が基準値より高額な場合には、保険償還価格を基準値まで引き下げます。この基準は段階的に引き下げられ(厳格化)、現在は「1.3倍」(「医療上の必要性が極めて高い」などの例外品目については1.5倍)に設定されています(2016年度改定から据え置き)。

新規収載品の外国価格調整ルール(中医協・材料専門部会1 191023)



段階的な引き下げの効果が現れ、「基準値を超えて価格引き下げの対象となる」製品はなくなってきていますが、厚労省保険局医療課医療技術推進室の岡田就将室長は「今後、基準値を超える製品が現れる可能性があり、内外価格差の是正に向けた取り組みは継続していくべき」との考えの下、基準値を引き下げる(厳格化する)考えを示しました。

診療側委員・支払側委員ともに賛意を示しており、今後、具体的な基準値を探っていくことになります。ただし、我が国における流通の特殊性(少数の製品を多くの医療機関に流通させなければならない)に鑑みれば「外国価格と比べ、一定程度割高にならざるを得ない面もある」との声もあり、「優れた医療材料の開発」という点への配慮も現時点では必要でしょう。なお、この点に関連して、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「医療機関の集約化の必要性」という非常に重要な考えを指摘しています。



医療材料は「機能区分別の保険収載」となるため、同じ機能区分の医療材料はすべて同一の価格となります。既収載品については、この「同じ機能区分」の製品について市場実勢価格を調べ(材料価格調査)、それを「外国での販売課価格」と比べ、基準値より高額な場合には保険償還価格を引き下げることになります。この基準は、新規収載品と同様に段階的に引き下げられ(厳格化)、現在は「1.3倍」(直近2回の改定で価格下落率が15%以上の場合には1.5倍)に設定されています(2016年度改定から据え置き)。この仕組みにより内外価格差は是正されてきていますが、岡田医療技術評価推進室長は「依然として内外価格差(1-2倍程度)は存在している」と指摘。

既収載品の外国価格調整ルール(中医協・材料専門部会2 191023)



また、価格引き下げ率は「25%まで」という下限が設けられており、内外価格差の大きな機能区分では「価格の下げ止まり」が生じます。このため「内外価格差の是正は限定的になってしまっている」と岡田医療技術評価推進室長は見ています。

既収載品では外国価格調整において引き下げの下限があるため、価格調整が十分に行われない(中医協・材料専門部会3 191023)



こうした点を踏まえ、既収載品については▼基準値の引き下げ(厳格化)▼下限の引き上げ(厳格化)―を行う方針が示され、診療側・支払側ともに賛同しています。

なお、外国価格の計算方法については、従前の考え(2018年度改定で厳格化)を維持する見込みです。

2018年度改定では外国価格の算出ルールを厳格化した(中医協・材料専門部会4 191023)

遺伝子変異を解析する医療機器の迅速な保険適用で、医薬品とのタイムラグを解消

遺伝子解析の技術が進み「ある医薬品は、特定の遺伝子変異がある病変に効果的である」という知見が分かってきています。この遺伝子変異検出のために、「遺伝子変異解析プログラム」などとして承認された医療機器が用いられるケースがあります。

こうした医療機器が、区分C2(新機能・新技術)と決定された場合には、原則として1年に4回(3月・6月・9月・12月を基準)を標準に保険適用されるため、対象医薬品の保険適用(薬価収載)や効能効果追加よりも遅れてしまうことがあります。このタイムラグは患者の優れた医薬品へのアクセスを阻害してしまうため、岡田医療技術評価推進室長は「迅速な保険適用を可能とする」仕組みの導入を提案。中医協委員もこれに賛同しています。

具体的には、「遺伝子変異解析プログラム」などについて、C2(新機能・新技術)として保険適用が決定された場合であっても、対象医薬品の保険適用状況を踏まえて「当該医療機器の保険適用決定を行った月の翌月に保険適用する」との特例を設けることになります。

B3(期限付き改良加算)を、言わば「1つの機能区分」と見做す新ルール

上述したように、医療材料は「機能区分別の保険収載」となるため、C1(新機能)・C2(新機能・新技術)として認められない限り、既存の機能区分に組み込まれ、同じ機能区分の他製品と同一の保険償還価格が設定されます。

この点、2018年度の前回材料価格制度改革において、C1(新機能)・C2(新機能・新技術)とは認められないものの、「既存機能区分の既収載品と置き換わり得る製品」については、同一の機能区分としたままで「加算を認める」(保険適用から2回の改定を経るまで)仕組みが導入されました(B3・期限付き改良加算、関連記事はこちら)。

これまでにB3(期限付き改良加算)として保険適用された製品は1品目(インスピリスRESILIA 大動脈弁、医療従事者の安全性を高めている点で加算が認められている)のみですが、今後、「後続品」が出てくると想定されます。

この「後続品」も「一定程度の優れた価値」を持っているため、やはり加算設定が望ましいと考えられますが、その場合、現行ルールでは、新たにB3(期限付き改良加算)として保険適用する必要があります。この場合、最初のB3製品と加算額や加算算定可能期間がずれてしまうケースが出てきます。

現行ルールでは、B3(期限付き改良加算)製品とその後続品との間に齟齬が生じる(中医協・材料専門部会5 191023)



そこで岡田医療技術評価推進室長は、「B3(期限付き改良加算)を、言わば『1つの機能区分』とみなし、後続品についてはその機能区分についてB1(既存機能区分)として保険適用してはどうか」と提案しました。

B3(期限付き改良加算)の見直し案(中医協・材料専門部会6 191023)

医療材料の機能区分(中医協・材料専門部会7 191023)



機能区分を複雑にせずに、後続品の有用性を高く評価することが可能となるもので、診療側・支払側とも提案に賛意を示しています。



なお、医療機器の安定供給については、「従前より、メーカーから事前の報告・相談等なく医療機器の供給に支障が生じ、医療現場に混乱が起きる」ケースが散発していることを踏まえ、当該メーカーの製造販売等する製品に対し「医療保険上の一定のペナルティ」を課してはどうかという論点です。この点、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「まず供給に支障が出た理由や背景を十分に把握し、必要な指導を行うべきで、それでも改善されない場合に、初めてペナルティを課すべきかを考える必要があるのではないか」と述べ、即座のペナルティ導入には慎重姿勢を見せました。今後、ペナルティ導入の是非をさらに探っていくことになるでしょう。

安定供給に支障が出る恐れがある場合、厚労省への早めの報告により、医療現場の混乱を抑える措置が可能となる(中医協・材料専門部会8 191023)

 
 
 
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