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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

「医療機器の流通コスト」を契機に、「症例集約を進めるべきか」で舌戦―中医協・材料専門部会(1)

2019.8.7.(水)

 我が国においては「症例が分散」し、それが弊害も招いているため「症例集約」を進めるべきか。あるいは「患者の医療へのアクセス」などを考慮し、安易に「症例集約」は進めるべきではないのか―。

 8月7日に開催された中央社会保険医療協議会・保険医療材料専門部会(以下、材料専門部会)では、材料価格制度改革論議から派生して、こういった議論が行われました。

8月7日に開催された、「第101回 中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会」

8月7日に開催された、「第101回 中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会」

 

「症例集約」により医療機器の流通コストは削減、さらに「医療の質」向上も

 材料専門部会では、2020年度の次期材料改革制度改革に向けて関係団体からヒアリングを行いました(関係団体からの要望・意見については別稿でお伝えします)。その中で、日本医療機器販売業協会(医器販協)からは「医療機器の流通」改革に関し、「医療機器の流通では、医薬品と異なり、いわゆる『適正使用支援業務』に関するコストが生じ、これを勘案した価格設定を考えてほしい」旨の意見が出されました。

医薬品の流通経費率は原価全体の7.5%程度ですが、医療機器では9.6%程度と高めに設定されています。しかし、医療機器の流通経費の中には、▼預託在庫管理▼短期貸し出し持ち込み▼立ち合い▼保守管理―といった、いわゆる「適正使用支援業務」コストが38%程度含まれていると医器販協は指摘します。
中医協・材料専門部会(1) 190807の図表

 
例えば、医療機関が「新たな技術を用いた医療機器」を導入する場合、医師が技術習得をするために、メーカーや卸の技術スタッフが機器使用の現場(例えば手術場など)で立ち会い、技術支援を行うことなどがどうしても必要となります。こうした支援は、かつて「過剰な部分があり、公正な取引に反する」(無償のサービスを医療機関に提供することで、販売を促進している)と指摘されたこともあって、現在は「業界の自主基準に則って適正に行われている」と厚労省医政局経済課医療機器政策室の前田彰久室長はコメントしています。

適正使用支援業務は、本来は「メーカーが行うべき」ものとも思われますが、医療機器メーカーは医薬品メーカーに比べて小規模であり、全国に拠点(営業所等)がないメーカーもあることから、「卸が担っている」部分も少なからずあります。医器販協は「卸による適正使用支援業務負担」をも考慮した制度設計をしてほしいと要望しているのです。

 
この点について中医協支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「我が国では症例が分散しているために、個々の医療機関に『少量の多製品』を販売等しなければならず、これが卸の負担になっており、最終的に患者負担増につながっているのではないか」と指摘しました。例えば、「地域の拠点病院などに手術症例を集約すれば、卸の負担も減少し、結果として患者の負担(保険者の負担も)が減少するのではないか」との指摘です。

これに対し診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)やメーカーサイドは、「『症例を集約せよ』などと述べるつもりはない。患者のアクセス等を考慮した現在の医療提供体制を、コストを考えて見直すべきとは考えていない」と反論しました。

「医療機器の流通」を契機として、「医療提供体制の在り方」に議論が拡大した格好と言えそうです。

 
医療機器の流通コストが大きくなる背景には、幸野委員の指摘するように「症例の分散」があるとかねてから指摘されています。医療機器には様々な製品があり、また同じ製品であっても、患者の年齢・体形等を考慮した様々なサイズがあります。一方で、患者は多くの医療機関に「分散」しているため、極端に言えば「手術のたびに、患者にフィットする医療機器を卸が医療機関に運ぶ」といった事態も生じかねません。当然、流通コストは高くなります。

「コスト」を重視すれば支払側の幸野委員側に、「患者の医療へのアクセス」を重視すれば、診療側の城守委員側に意見が傾きそうです。

しかし、医療提供体制の在り方を考えるとき、その要素は「コスト」と「アクセス」だけではありません。ここに「医療の質」を考慮するとどうなるでしょう。

米国メイヨ―クリニック、スタンフォード大学とグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(メディ・ウォッチ運営社)との共同研究では、「症例数と医療の質は相関する」、つまり「症例数の分散は、医療の質を下げてしまう」ことが分かっています。

膝関節置換術において、症例数と合併症発生率との間には逆相関がある

膝関節置換術において、症例数と合併症発生率との間には逆相関がある

 
逆に考えれば、支払側の幸野委員が指摘する「症例の集約」は、コストの削減だけでなく、「医療の質を向上させる」可能性もあるのです。

もちろん「症例の集約」には、「医療提供体制の偏在をもたらし、患者の医療へのアクセスを阻害してしまう」などのデメリットもあり、単純に進めることはできません。アクセス等に配慮し、トータルで医療の質を向上させるような「症例の集約」について検討していく必要があるのかもしれません。

中医協で、このテーマを正面から議論することは困難です(かつて診療報酬には「手術症例が少ない場合に、手術点数を減算する」仕組みがあったが、弊害が大きく廃止)。ただし、地域においては人口減少が進み、また医師の働き方改革等が求められる中では、「病院の再編・統合」が重要なテーマとなっています。こうした点も考慮すると、将来は、例えば「医療の質を高めるために症例の集約も一定程度、検討すべきではないか、これを診療報酬でどう進めていくべきか」という切り口での議論も一考に値するでしょう。幸野委員の指摘は、将来に向けて極めて重要であると考えられます。

 
 
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