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医師・看護師等の宿日直、通常業務から解放され、軽度・短時間業務のみの場合に限り許可―厚労省

2019.7.5.(金)

 医師・看護師等の宿日直は、「通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のもの」で、「特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務」実施のみを行う場合に限って認められる。例えば、夜間の救急搬送患者が常に多く、それに少ない宿直医等で対応しなければならないなど、「通常の業務と同態様の業務」が稀でないような場合には、宿日直は認めらない(夜勤である)―。

 厚生労働省は7月1日に通知「医師、看護師等の宿日直許可基準について」を示し、こうした考えを明らかにしました(関連記事はこちら)。

少数の要注意患者の状態変動に対応した問診や看護師への指示等は、宿日直業務の範囲内

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(検討会)が3月末(2019年3月末)に報告書をとりまとめ、次のような方針を明確にしました(関連記事はこちら)。

▽2024年4月から「医師の時間外労働上限」を適用し、原則として年間960時間以下とする(すべての医療機関で960時間以下を目指す)。ただし地域医療確保に欠かせないケースや、症例経験を積む必要があるケースでは、特例的に年間1860時間以下までの時間外労働を可能とする

▽2024年4月までの5年間、全医療機関で「労務管理の徹底」(いわゆる36協定の適切な締結など)、「労働時間の短縮」(タスク・シフティングなど)を進める

 
 ところで、労働時間をカウントするにあたり「宿日直の時間をどう考えるのか」という問題があります。

 「宿日直」は、労働基準法において「労働密度がまばらで、労働時間規制を適用しなくとも、必ずしも労働者保護に欠けることのない一定の断続的労働」として、労働基準監督署長の「許可」を受けた場合には労働時間規制の適用から除外されます。逆に、労働密度がまばらでないなどの場合には、宿日直としては許可されず、時間外労働と扱わなければなりません。宿日直を許可する基準が緩すぎれば「実際に労働に近い勤務を行っているにもかかわらず、労働時間にカウントされない」という問題が、逆に基準が厳しすぎれば「休息しているにすぎないにもかかわらず、労働時間にカウントされてしまう」という問題が生じます。

この点、医療(医師、看護師等)においては、▼病室の定時巡回▼異常患者の医師への報告▼少数の要注意患者の定時検脈、検温—など、「特殊の措置を必要としない軽度の、または短時間の業務に限る」といった基準(宿日直許可基準)が1949年に設けられていました。しかし、医療が高度化した現代社会には、この基準は医療現場の実態に合っておらず、検討会では「宿日直として許可されるケースが少なく、いわゆる寝当直も労働時間にカウントされてしまう」との指摘が相次ぎ、「現代の医療に合った内容に見直す」方針を決定(関連記事はこちら)。厚労省がこの方針に沿い、今般、具体的な考え方を示したものです。

まず、医師・看護師については、一般的な宿日直の要件(常態としてほとんど労働する必要がないなど)を満たし、「次の条件のすべてを満たす」かつ「夜間に十分な睡眠がとり得る(宿直の場合)」場合に許可される(宿日直手当の支給が必要だが、労働時間にはカウントされない)ことが明確にされました。

▽通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものである

→通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとは言えず、その間の勤務は宿日直の許可の対象とならない(労働時間である)

▽宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務に限る

【医療における特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務の例】
▼医師が、少数の要注意患者の状態変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む、以下同)や看護師等に対する指示、確認を行う
▼医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(非輪番日など)に、少数の軽症外来患者や、かかりつけ患者の状態変動に対応するため、問診等による診察等や看護師等に対する指示、確認を行う
▼看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(非輪番日など)に、少数の軽症外来患者や、かかりつけ患者の状態変動に対応するため、問診等や医師への報告を行う
▼看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行う

 
なお、医師が▼突発的な事故による応急患者の診療▼入院患者の死亡、出産等への対応―を行ったり、看護師等が医師にあらかじめ指示された処置を行うことなどの「通常の勤務時間と同態様の業務」は、「医療における特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務」には該当しません。

宿日直担当医と患者数のバランス見て、通常業務が稀でないケースは宿日直不許可

上述の基準を満たし「宿日直の許可」が得られ、宿日直を行っている場合に、医師が▼突発的な事故による応急患者の診療▼入院患者の死亡、出産等への対応―を行ったり、看護師等が医師にあらかじめ指示された処置を行うことなどの「通常の勤務時間と同態様の業務」に従事することが生じます。この点について厚労省は、「稀で、一般的にみて、常態としてほとんど労働することがない勤務である」かつ「宿直の場合には、夜間に十分な睡眠がとり得る」場合には、「宿日直の許可を取り消す必要はない」ことを示しました。ただし、こうした「通常の勤務時間と同態様の業務に従事する時間」については、労働基準法に基づく割増賃金が支払われなければいけません。

厚労省では、こうした点に鑑み、▼宿日直に対応する医師等数▼宿日直で担当する患者数▼当該病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率―との関係等から「通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態」と判断される場合には、宿日直の許可は得られないことも示しています。

 
 さらに、厚労省は▼宿日直は、1つの医療機関等でも「所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って許可する」ことができる(例えば、「医師以外のみ許可する」「医師について深夜帯のみ許可する」「外来対応業務は許可基準に該当しないが、病棟宿日直業務は許可基準に該当する場合に、病棟宿日直業務のみ許可する」など)▼小規模医療機関では医師等が医療機関等に居住している場合があるが、これを宿日直として取り扱う必要はない(ただし、通常の勤務時間と同態様の業務に従事するときには割増賃金が必要)―ことなども示しています。

 

 

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