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公立病院等、診療実績踏まえ「再編統合」「一部機能の他病院への移管」を2019年夏から再検証―地域医療構想ワーキング

2019.3.20.(水)

 今年(2019年)3月までに、全国の地域医療構想調整会議において、まず「公立病院および公的等病院の機能改革」に関する合意を行うこととなっている。ただし、その合意内容について妥当性等を疑問視する声もあることから、厚生労働省で「地域で公立・公的病院等が担っている機能について、近隣の民間病院等で代替できないか」などを今夏(2019年夏)までに分析し、その結果を踏まえて、必要があれば「公立病院および公的等病院の機能改革」内容について厚生労働省から再検証・検討を要請する―。

3月20日に開催された「地域医療構想ワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった方向が概ね固められました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。厚労省は早速、分析に入る考えです。

3月20日に開催された、「第20回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

3月20日に開催された、「第20回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

 

がん手術や心筋梗塞治療などの診療実績を見て、公立・公的病院等の機能を分析

地域医療構想の実現に向けて、各地域医療構想調整会議(以下、調整会議)では、まず今年度中(2019年3月まで)に「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」に関する合意を得ることになっています。昨年(2018年)12月末時点の合意状況を見ると、ベッド数ベースで、▼公立病院は48%(2018年9月末から9ポイント向上)▼公的病院等60%(同8ポイント向上)―となっており、現在、最終的な調整論議が行われている最中です。

ただし、「合意を急ぐ」あまり、「形だけの機能改革」「現状追認」にとどまっているケースもあると指摘され、ワーキングでは「合意内容の検証が必要」と判断しています。

この点、厚労省は(1)地域の医療提供体制の詳細な分析を行う(2)分析結果を踏まえて、各調整会議で「「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」を再検証・検討する―という2段階で検証する枠組みを示しました。

まず(1)の分析については、以下の17項目について、地域の公立病院・公的病院等と民間病院等が、どのような診療実績を有しているのかを調べます。詳細な分析内容については、今後、ワーキング構成員とさらに詰めていくことになります。

【分析項目】
▽がん手術の実績(▼肺・呼吸器▼消化器(消化管/肝胆膵)▼乳腺▼泌尿器/生殖器―)
▽がん化学療法の実績
▽がん放射線治療の実績
▽心筋梗塞等の心血管疾患の診療実績(▼心筋梗塞▼外科手術が必要な心疾患―)
▽脳卒中の診療実績(▼脳梗塞▼脳出血(くも膜下出血を含む)―)
▽救急医療の実績(▼救急搬送等の医療▼大腿骨骨折等―)
▽小児医療の実績
▽周産期医療の実績
▽災害医療の実績
▽へき地医療の実績
▽研修・派遣機能の実績

 これら17項目それぞれについて、病床機能報告データなどをもとに今夏(2019年夏)までに厚労省で分析。その結果は各地域医療構想調整会議等に提示されるとともに、分かりやすく整理した形で公表もされます。

例えば、胃がん手術について、A公立病院が地域の大多数の症例に対応していれば、その公立病院・公的病院等は「地域において、他の民間病院ではできない機能を担っている」と考えることができます。

また、乳がん手術について、A公立病院とB民間病院とが、それぞれ半数程度の症例を診ている場合、「競合している」「すみ分けている」などと考えることができるでしょう。

一方、救急医療について、多くの公立病院・公的病院等で対応している場合、「分担をしている」ケースもあれば、「症例や医師等の医療資源が分散し、非効率になっている」ケースもあると考えられます。
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診療実績の分析から、公立病院等の機能を「他の民間病院で代替できないか」を再検証

厚労省はこうした分析結果を踏まえて、地域の公立病院・公的病院等のうち、次のようなケースでは「調整会議で、機能改革内容(合意内容)を再検証する必要がある」と見ています。

(I)上記17項目のうち1つ以上の項目で、▼構想区域内に「一定数以上の診療実績を持つ医療機関」が複数あり、近接している▼診療実績が特に少ない―場合には、当該項目(機能)について、他の医療機関への代替可能性がある

(II)上記17項目のうち大半の項目で、▼構想区域内に「一定数以上の診療実績を持つ医療機関」が複数あり、近接している▼診療実績が特に少ない―場合には、当該公立病院・公的病院等は、再編統合を検討する必要がある

 前者(I)の「ある機能(例えば、胃がん手術)について他医療機関での代替可能性あり」との分析結果が示された公立病院・公的病院等については、調整会議において、当該機能を他医療機関に統合するべきか否かを、ベッド数も含めて改めて議論することになります。例えば、A県立病院の消化器外科(40床)とB民間病院の消化器外科(40床)とで、胃がん症例を同程度診ている場合、「A県立病院の胃がん手術機能を、B民間病院の消化器外科に集約できないか」「集約できるとして、スタッフ・設備等・患者などもB民間病院の消化器外科にどう移管していくか」「合計80床であるが、地域の人口減少動向を踏まえて60床に削減してはどうか」などといった点を調整会議で、改めて検討することになります。

また後者(II)の「多くの機能について他医療機関での代替可能性あり、または診療実績が特に少ない」との分析結果が示された公立病院・公的病院等については、調整会議において、当該病院を他医療機関と再編・統合すべきか否かを検討することになります。例えば、診療実績の低いC市立病院を、近隣のD県立病院に統合するなどのイメージです。

ところで17項目の分析結果で、例えば「胃がん手術についてA公立病院とB民間病院とが地域患者の半数程度ずつを診ている」ことが分かったとして、機械的に「胃がん手術はB病院に集約する」との結論が導かれるものではありません。例えば「ベッド数の関係でA・B病院で患者を分け合っている」ケースもあれば、「A病院が合併症などのある重症患者を診ており、B病院では比較的軽症の患者を診ている」ケースもあるでしょう。調整会議での再検証では、こうした点も十分に考慮することが求められます。

さらに、「医師の働き方改革が進められる中で、機能集約などによってかえって医師の負担が重くならないか」、「機能集約をすることで医師偏在が助長されないか」、「公立病院では補助金が投入され、公的病院等では税制上の優遇があり、民間病院と必ずしも同じ競争条件ではない」などの点も調整会議で勘案することが必要です。

  
調整会議での再検証・検討期限は今後検討していくことになります。厚労省は「新公立病院改革プランの対象期間が、2020年度を終期とすることが標準である」点を考慮する必要があると指摘しており、ここからは「2020年度央までに調整会議で再検証・検討する」ことなどが考えられますが、中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「再検証とは、これまで2年間、調整会議で行ってきた議論を1からやり直すことを意味する。拙速な議論(例えば、従前の合意内容を安易に追認してしまうなど)を調整会議で行っても意味がない」と指摘しており、今後、具体的な再検証方法などについてワーキングで詰めていくことになります。

公立病院・公的病院等の機能改革に関するスケジュールは、次のように整理できるでしょう。

▽厚労省が今夏(2019年夏)までに地域の各医療機関の診療実績等を分析する

▽分析結果に基づいて、厚労省が「機能集約」「病院の再編統合」などを検討する必要性がある公立病院・公的病院等をピックアップし、調整会議に「機能改革の再検証・検討」を要請する(今夏目途)

▽調整会議で機能分化・再編統合の必要性について、地域の詳しい事情を踏まえながら再検証・検討する(検討期限については、今後、さらに検討)

▽再検証・検討結果に基づいて、機能集約や再編統合を各地域で進める(順次)

病院の再編統合が進み寡占状態になった際、医療サービスの質が低下していないか検証を

 ところで、一口に「機能集約や再編統合を進めよ」と言っても、地域の特性や病院の設立母体などによって、さまざまな課題があります。こうした課題について十分に検討し、打開策を準備しなければ、機能集約・再編統合は画餅に帰してしまいます。

3月20日のワーキングでは、田渕典之参考人(日本赤十字社医療事業推進本部技監)から、公的病院等において機能集約や再編統合を進めるにあたっての課題がいくつか整理されました。

まず、統合等を行う場合、多大なコストが発生します。例えば、A病院とB病院を統合し、新C病院を建築する場合には、莫大な費用がかかります。新病院建築には至らずとも、機能集約等を行えば、「増床」「設備整備」などに相当のコストがかかります。また、統合を良しとせず職場を去るスタッフも一定程度、出てくると考えられ、想定外の退職金が発生することも考えられます。さらにスタッフを引き留めるために「給与水準を高いほうに合わせる」ことなどが行われますが、その際には人件費が高騰します。

自治体病院が関係する統合再編では、こうしたコストについて公費による補填が行われることがあり(後述するようにこの点での課題もある)、また一般企業では、統合後の収益増(収益増を見込んで統合するケースが大半)によりコスト回収できます。しかし、公立病院等(例えば日赤)では補填の原資もなく、現行の診療報酬の下では「大幅な収益増」を見込むことも難しいでしょう。田渕参考人は「コスト回収」の視点が極めて重要であると指摘しています。

また、再編統合などが進めば、当然、地域において「寡占」状態が発生します。その際、「透明性やガバナンスの確保」が極めて重要となります。もちろん、医療者には高潔な方が多いのですが、一般的に「寡占状態が生じれば、経営管理が緩くなり、サービスの質が低下しがちである」という点を無視することも危険です(正しい競争こそがサービスの質を向上させる)。「診療の質が低下していないか」「患者の満足度が低下していないか」「コスト管理が適正になされているか」などを十分に把握していくことも、今後の重要な検討課題となるでしょう。

 
なお、青森県弘前市(津軽医療圏)において、2019年度には弘前市立病院と国立病院機構が統合した新たな急性期の中核病院が発足します。▼病床を削減する(従前の弘前市立病院250床+国立病院機構弘前病院342床(合計592床)→新中核病院では400-450床)▼病院運営を国立病院機構が担う(多くのケースでは自治体が運営権を希望するが、このケースでは首長が英断し、市民もこれを受け入れた)―などの特徴をもつ画期的な統合再編事例で、中川構成員は「全国の統合再編のモデルケースになる」と高く評価しています。

ただし、新中核病院への移行期間中である現在、▼スタッフのモチベーションが下がり、退職も少なくない(自治体立病院勤務を望むスタッフも少なくない)▼新病院建設等の営繕費用(コスト)などが嵩む―という大きな課題もあります。上述の田渕参考人は「自治体病院に関しては、統合コストを自治体が補填する」ことを指摘しており、事実、弘前市でも補填が行われるのですが、「原資の工面」「コストの平準化」などに大きな苦労をする実態もあるようです。

 
今後、厚労省の分析結果を踏まえ、調整会議で「機能集約や再編統合すべき」との再検証・検討が出てきますが、実際の再編統合等に向けた課題の整理や対応策も幅広く検討していくことが各所で求められるでしょう。

 
 

 

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