「将来においても医師少数の都道府県」、臨時定員も活用した地域枠等の設置要請が可能―医師需給分科会(3)
2019.2.4.(月)
2022年度以降、医学部の臨時定員増などを改めて議論することとなるが、その際には「医師が少数の都道府県では、知事が臨時定員も活用した地域枠・地元枠の設置を要請できる」が、「医師が多数の都道府県で、医師が少数の2次医療圏がある場合には、知事は恒久定員を活用した地域枠・地元枠の設置のみ要請できる」こととする―。
1月30日に開催された「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)では、こういった点が議論されました(関連記事はこちらとこちら)。
将来の医師の多寡については、必要医師数と供給数で判断する
地域の医師偏在を解消する最も有効な手段の1つとして、大学医学部の地域枠・地元枠(以下、地域枠等)があげられます。一定期間、当該都道府県での勤務を条件に、奨学金等が支給される仕組みで、2018年の改正医療法・医師法では、都道府県知事に地域枠等の設置要請権限を付与しています。
ただし、医師養成には10年程度かかる(医学部6年、初期医師臨床研修2年など)ことから、その効果が現れるまでには一定の時間が必要です。このため、新たな「医師確保計画」に基づく医師偏在対策の中では、「長期的な偏在対策」に位置付けられています(短期的な偏在対策として医師派遣や医師少数地域等での勤務認定などがある)。
現在、地域枠等は、医学部入学定員のうち「臨時定員増」(下図の赤色部分)の中で設けられていますが、この臨時定員増は2021年度の入学者で一旦終了し、2022年度以降の定員をどう考えていくかは、新たな需給推計に基づいて別途議論していくこととなっています(関連記事はこちら)。
ただし、その議論のベースとなる考え方、つまり「どの都道府県知事に、地域枠等の設置要請権限を認めるか」については、医師需給分科会で、これまでに次のような方針が固められています(関連記事はこちら)。
【後述する考えに基づいて「医師が少数である」と判断された都道府県】
▽うち、「医師が少数の2次医療圏」がある都道府県
→都道府県知事が大学医学部に対して、▼地域枠(恒久定員:上記青色部分)の設置・増員▼地元出身者枠の設置・増員▼地域枠(臨時定員:上記赤色部分、詳細は今後議論))の設置・増員―を要請できる
▽うち、「医師が少数の2次医療圏」のない都道府県
→該当なし
【後述する考えに基づいて「医師が多数である」と判断された都道府県】
▽うち、「医師が少数の2次医療圏」がある都道府県
→都道府県知事が大学医学部に対して、▼地域枠の設置・増員(恒久定員:上記青色部分)―のみ要請できる
▽うち、「医師が少数の2次医療圏」のない都道府県
→地域枠等の設置・増員要請はできない
ここで、医師の「少数、多数」を判断する際には、「現時点で少数なのか、多数なのか」それとも、「将来において少数なのか、多数なのか」によって、異なる考え方をする点に留意が必要です。
前者の「現時点で少数なのか、多数なのか」は、すでにメディ・ウォッチでお伝えしたように、新たな医師偏在指標(人口10万対医師数に地域住民・医師の高齢化などを勘案)を用いて判断します(下位33.3%が医師少数地域と判断される、関連記事はこちら)。一方、後者の「将来において少数なのか、多数なのか」を判断する際には、新たな偏在指標を「2036年時点」に置き換えることが必要です。地域枠等を考える際には、この考え方で「医師が少数・多数の地域」を判断していきます。
このような考えに基づいて、「都道府県全体が医師少数か多数か」「当該都道府県の中に医師少数2次医療圏はあるか、ないか」を組み合わせ、上記の4分類となるのです。
「医師が少数である」と判断され、「医師が少数の2次医療圏」がある都道府県では、前述のように、都道府県知事が大学医学部に対して地域枠等の設置を要請できます。その際に、「地域枠等を何名程度にするのか」については、2次医療圏ごとの「必要数と供給数との差」の累計で考えることになります。
医師の必要数は、▼高度急性期・急性期・回復期・慢性期の機能ごとの推計患者数▼医師の働き方改革(時間外労働上限が厳しくなれば、必要な医師数は増加する)―などを勘案して地域ごとに推計します。一方、医師の供給数は、「医学部入学定員」をベースに推計します。
例えばX県にA・B2つの医療圏があり、A医療圏では「必要数が供給数を10名上回っている」(将来、10名の医師不足となる)、B医療圏では「必要数が供給数よりも5名下回っている」(将来、5名の過剰となる)といった場合には、X県知事は大学医学部に対し「5名(10-5)の地域枠等を設定してほしい」と要望することが可能です。
恒久定員(上記青色部分)はもちろん、臨時定員(上記赤色部分、具体的な数等は今後検討)も活用して、地域枠等を設置することが可能です。恒久定員100名の大学であれば、例えば、恒久定員の中で3名分の、臨時定員2名分の地域枠を設けるようなイメージで、この場合、当該大学の定員は102名に増員されます(通常枠97名(100-3)、恒久定員の地域枠3名、臨時定員の地域枠2名)。
一方、「医師が多数である」都道府県のうち、「医師が少数の2次医療圏」がある都道府県では、当該2次医療圏について地域枠等設置が可能ですが、この場合には、当該県全体で見れば多数の医師が配置されているため、臨時定員を活用することはできません。恒久定員(上記青色部分)を活用してのみ、「医師が少数の2次医療圏」対応を行うことが可能となります(恒久定員が100名の大学に対し、10名の地域枠等設置を要請した場合、当該大学では通常枠90名、地域枠等10名となる)。
地域枠等と医学部入学定員をクロスされた議論は、少々複雑なため、1月30日の医師需給分科会では「完全了承」とまではいかず、次回以降、改めて整理して議論することになっています。もっとも、既に医師需給分科会(2018年10月24日の会合等)で議論済の内容であり、この方向で了承されることになるでしょう。
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