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2020年度以降の医学部定員、仮に暫定増が全廃となれば「800人弱」定員減―医師需給分科会

2018.3.27.(火)

 医学部の定員は、2019年度までは「暫定増」措置によって9400人程度となっている。この暫定増が仮にすべて廃止されれば8629人となり、800人弱の減となるが、2020年度以降の医学部定員をどのように考えるべきか―。

 厚生労働省の医師需給分科会(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)が3月23日に開催され、こういった検討を開始しました。2020年度には、現在の高等学校2年生が大学を受験するため、今夏には具体的な医学部定員を示す必要があり、検討会では5月までに結論を出すことになります。

3月23日に開催された、「第18回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

3月23日に開催された、「第18回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

この5月までに「2020年度からの当面の医学部定員」方針を決定

 我が国は人口減少社会に入っており、この点だけを考慮すれば「人口に対する医師数が過剰にならないように、養成数を抑制していく」必要があります。一方、我が国の医療提供体制においては、地域間・診療科間の「医師偏在」という大きな課題があり、これを解消するためには「一定程度、医師数を増やしていく」方向で検討する必要もあります。

 そこで安倍内閣が昨年(2015年)6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2015」では、「人口構造の変化や地域の実情に応じた医療提供体制の構築に資するよう、地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正などの観点を踏まえた医師・看護職員等の需給について検討する」よう厚労省に指示。

厚労省は「医療従事者の受給に関する検討会」「医師需給分科会」で検討を行い、一昨年(2016年)5月に、▼医師不足が特に深刻な青森県など10県における増員は「当面延長」する▼医師確保が必要な地域や診療科に医師を確保・配置するための都道府県ごとの増員は「当面延長」する▼地域医療に従事する明確な意思をもった学生などに配慮した増員は「慎重に精査」する―方針を固めました(第1次中間取りまとめ、関連記事はこちらこちらこちら)。

当面の医学部入学定員

当面の医学部入学定員

将来の医師需給の試算結果、早晩、供給量が需要量を上回ることが明確に(上位推計でも2033年以降は医師供給過剰になる見込み)

将来の医師需給の試算結果、早晩、供給量が需要量を上回ることが明確に(上位推計でも2033年以降は医師供給過剰になる見込み)

 
その後、検討会・分科会では「医師偏在対策」について議論を行い、昨年末(2017年12月)に第2次中間とりまとめを行っています。

検討会・分科会では、さらに「2020年度以降の医学部定員」についてどう考えるかというテーマを議論することになっています。2020年度には、現在の高等学校2年生が大学医学部に入学することとなるため、志望校選定等のために、遅くとも今夏には医学部定員を明確に定める必要があり、検討会・分科会では「5月中」に結論を出します。

 2017年度の医学部定員は9420名、18年度の医学部定員は9419名(仮定)ですが、ここには上記の「暫定増」が含まれており、仮にすべての暫定増が廃止されれば、2020年度の医学部定員は8269名となります。高等学校3年生になってから「現在より医学部定員は800名近く減る」ことが分かったのでは、大きな混乱を招いてしまいます(定員が減れば難易度も上がる)。このため、遅くとも今夏に定員を固め、高等学校2年生の夏に「進路選択」を行えるような配慮を行う必要があるのです。

医師偏在対策・働き方改革については、仮定・幅を置いて定員検討の要素とする

医学部定員を定めるに当たっては、例えば次のようなさまざまな要素を考えなければいけません。
▽今後の医療需要(高度急性期から慢性期までの入院医療、外来、介護老人保健施設、行政機関、研究機関等)
▽今後の医師供給
▽医師偏在対策の効果
▽医師の働き方改革の効果

 しかし、「偏在対策」については現在、医療法・医師法等の改正法案が準備されている段階で(関連記事はこちら)、また「働き方改革」については議論中(2019年3月に結論、関連記事はこちらこちらこちら)であり、この5月時点では、これらの効果は全くの未知数です。このため、検討会では、偏在対策や働き方改革については、一定の仮定・幅を置くこととし、さらに「2020年度から短期間」の医学部定員のみをターゲットに議論する方針が固まっています。

偏在対策・働き方改革における仮定・幅としては、例えば次のような考え方が示されました。
▽医師の労働時間上限について、▼一般労働者と同様に「週55時間」とする▼脳・心臓疾患の労災認定基準に照らし「週80時間」とする▼米国のレジデントに適用される「週88時間」とする―との3パターンを置く
▽医師の労働時間について、タスクシフト(特定行為研修を受けた看護師等への業務移管)などを考慮して、3パターンを置く

偏在対策や働き方改革については、一定の仮定・幅を置いて試算に盛り込むこととする

偏在対策や働き方改革については、一定の仮定・幅を置いて試算に盛り込むこととする

 
厚労省では、こうした仮定・幅を置いた上で、第1次中間とりまとめと同様に「医療需要」「医師供給数」を試算し、検討会・分科会の「医学部定員」論議に供する考えです。

なお、今村構成員は「新たな裁量労働制などを組み込んだ仮定・幅も置くべき」と要望しています。

将来の医学部定員を考えるに当たり、例えば「医師充足度合いの指標」などを検討

構成員からは、より将来を睨み「偏在対策・働き方改革の効果を踏まえた医学部定員」の議論を求める声も出ていますが、これは「2020年度以降の当面の医学部定員」について結論を出したのちに議論することになるでしょう。この点に関連して構成員からは「2020年度の医学部定員を5月までに固め、毎年度、偏在対策や働き方改革の効果を見て定員を議論していってはどうか」(今村聡構成員:日本医師会副会長)という意見も出ていますが、データの精査時間などを考慮すれば「2年度ごとに医学部定員を検討する」と一定の幅を置いた議論が現実的かもしれません(この場合、まず2020年度・21年度の医学部定員を議論する)。

 
なお、3月23日の検討会では「より将来の医学部定員」を議論する際の視点についても議論が行われ、「医師の充足度合いを評価する指標について、現在は『人口10万人当たり医師数』だが、これでよいのか検討する必要がある」(山内英子構成員:聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)、「安易に医師の労働時間上限設定がなされないよう、分科会と『医師の働き方改革に関する検討会』の意見交換会などをすべきである」(小川彰構成員:岩手医科大学理事長)、「現状で『医師不足』という認識が多くの病院である。この前提に立って、つまり医師不足のままで将来需給を考えてよいものか、検討する必要がある」(神野正博構成員:全日本病院協会副会長)といった意見も出ています。これらは、早くとも「5月以降」の検討テーマとなるでしょう。

 
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