「必要な医師数確保」の目標値達成に向け、地域ごとに3年サイクルでPDCAを回す―医師需給分科会(2)
2018.10.30.(火)
新たな医師偏在指標に基づいて「真に医師が不足している地域」をあぶり出し、比較的医師が充足している地域からの医師派遣などを進める「短期的方策」と併せて、地域枠・地元出身者枠で必要な医師数を確保する「長期的方策」を実施し、2036年の医師偏在解消を目指す―。
10月24日に開催された「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)では、こういった方針も了承されました。
短期的方策と長期的方策を併せて実施し、2036年の偏在解消を目指す
医師の地域偏在・診療科偏在が大きな課題となる中で、その是正・解消に向けた方策が医師需給分科会で検討されています。本稿では、この偏在対策の全体像を眺めてみましょう。
具体的には、「短期」「長期」の両面の方策で医師偏在の是正に向けてアプローチしていくことになります。
(1)「医師確保計画」(改正医療法・医師法)に基づく、医師多数区域から医師少数区域への医師派遣などによる短期的な方策
(2)地域枠・地元出身者枠などによる長期的な方策
前者(1)の短期的方策については、9月28日の前回会合で、新たな「医師偏在指標」に基づいて、各地域(都道府県、2次医療圏)の「医師確保状況」を見える化し、その上で医師派遣などを進めていく方向が確認されました。
▽「人口10万対医師数」(従前の医師偏在指標)に、▼地域人口の年齢・性別構成▼地域の医師の年齢・性別構成―などを加味した、新たな「医師偏在指標」を策定する(計算式は決定済)(関連記事はこちら)
↓
▽各地域の医師配置・確保状況を、「医師偏在指標」を用いて数値化・見える化する
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▽各地域の医師偏在指標の下位●%等を「医師少数地域」、上位◆%等を「医師多数地域」と定義する
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▽地域ごとに「医師確保計画」(3年計画)を策定し、そこに▼医師確保の目標数▼目標達成のための取り組み内容(例えば、「医師多数地域」から「医師少数地域」への医師派遣など)—を記載し、実行に移す
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▽「医師確保計画」の進捗状況を確認し、目標未達の場合には、その理由を明らかにするとともに改善方策を打ち立て、後の「医師確保計画」をブラッシュアップしていく
この短期的方策を進めることによって、地域の「相対的な偏在」は相当程度、是正されることになります。
もっとも、(1)の短期的方策には、「地域の偏在」を是正する効果はあるものの、全体としての医師数を増やす(必要な医師数を確保する)効果は期待できません(極論すれば、「医師が少し不足している地域」と「医師がものすごく不足している地域」があったとして、短期的方策によって、いずれも「医師が中程度に不足している地域」になる)。
そこで、(2)の長期的方策として、「地域枠」「地元出身者枠」を大学医学部に設置・拡充し、「全体として必要となる医師」を確保するのです。この地域枠・地元出身者枠については、別途、メディ・ウォッチでお伝えしています(関連記事はこちら)。
このように、(1)と(2)で「医師数を確保しながら(ただし、(2)の地域枠などの効果が現れるまでには、少なくとも6年が必要)、医師偏在対策を進めていく」ことによって、全国の「医師不足」「医師偏在」を解消していくものです。医師需給分科会では、「2036年」に医師偏在の解消を目指す方針を確認しています。
ただし、2036年は、今から18年後であるため、(1)の短期的方策の中では「少なくとも3年ごとに医師偏在対策の進捗状況を確認していく」ことも確認されています。
医師少数区域では、「3年後に医師少数区域を脱する」ような目標値を設定する
ところで、(1)で紹介した「医師確保計画」には、3年後(医師確保計画は3年計画)の目標医師数を設定し、目標達成に向けた方策を定めることが求められます。
この「目標医師数」の定め方について、10月24日の医師需給分科会では、次のような考え方とすることが固められました。いずれも、端的に述べれば「新たな医師偏在指標を用いて『医師少数区域ではない』と判断されるような数の医師確保を目指す」となるでしょう。
▽都道府県(3次医療圏)における目標医師数
→医療計画(医師確保計画はその一部)終了時点(第8次計画であれば2029年)において「当該都道府県における医師偏在指標の値が、計画開始時点(第8次計画であれば2024年度)の医師少数都道府県の基準値(下位●%)に達する」こととなる医師数とする
→翌次の計画、翌々次計画等でも、これを繰り返していき、段階的に基準値クリアを目指す(基準値を下回れば医師少数都道府県となり「さらなる医師確保が必要」とされるが、基準値をクリアすれば、その必要性は短期的方策の中では解消する)
▽2次医療圏における目標医師数
→医療計画終了時点において「医師偏在指標の値が、計画開始時点の医師少数区域の基準値(下位○%)に達する」こととなる医師数とする
→同様にこれを繰り返し、段階的に基準値クリアを目指す
→その他の区域(医師少数区域でない区域)については「都道府県が独自に目標を設定する」こととし、国が、参考値として「医師偏在指標が全国平均値と等しい値になる医師数」を提示する
また、目標医師数をクリアするための方策としては、例えば▼地域医療対策協議会(都道府県、大学、医師会、主要医療機関、民間医療機関等が参画する、新専門医制度の研修プログラム改善に向けた意見なども述べることができる)や地域医療支援センターを通じた都道府県内の医師派遣調整▼魅力的なキャリア形成プログラムの策定▼医師の勤務環境改善(たとえば僻地に派遣される医師の穴を埋めるための代替医師確保を拡充するなど)▼医師少数地域での勤務実績を踏まえた、厚生労働大臣に認定制度(詳細は今後検討)—などがあり、さまざまに組み合わせることや、誰が医師確保の責任主体となるかを明確化(今村聡委員:日本医師会副会長はこの点を強調)することなどの工夫が重要となってきます。
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