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産科医が最少の医療圏は北海道の北空知(深川市等)と留萌、小児科では埼玉県の児玉(本庄市等)―医師需給分科会(1)

2019.2.28.(木)

 2020年度からの新たな「医師確保計画」稼働に向けて、厚生労働省の「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)が2月27日に意見とりまとめを行いました(第4次中間とりまとめ)。

近く、親組織(医療従事者の需給に関する検討会)との合同会議で正式とりまとめを行い、これをもとに厚労省で「医師確保計画」作成のための指針等を策定します。各都道府県は指針等に基づいて2019年度中に「医師確保計画」を作成し、2020年度から各種の医師確保策を進めることになります。

2月27日に開催された、「第29回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

2月27日に開催された、「第29回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

 

産科・小児科医の確保が喫緊の課題であり、産科・小児科は特別の医師確保を進める

 詳細は別稿で述べますが、医師確保計画には、▼医師確保に向けた方針▼医師確保の目標値▼具体的な医師確保策―を盛り込むことになります。新たな医師偏在指標に基づいて客観的に「全国的に見て医師が少数」と確認された地域(新医師偏在指標が下位3分の1)では、「3年後に新医師偏在指標が下位3分の1ラインに届く」ように、例えば医師派遣の要請などの医師確保を進めていきます(関連記事はこちらこちら)。

 ところで、「産科」「小児科」については医師確保が喫緊の課題とされており、全体の医師確保とは、いわば別枠で、特別の「産科・小児科に特化した医師偏在対策」をとることになります。本稿では、この点について少し詳しく見ていきましょう(関連記事はこちらこちら)。

 「産科・小児科に特化した医師偏在対策」も、全体の医師確保と同様に、次のような流れで進められます。ただし、医師偏在の考え方や医師確保の進め方は、後述するように、全体の医師確保とは相当異なるものとなります。

(1)各都道府県・医療圏(周産期医療圏・小児医療圏)が、相対的に「医師多数」なのか「医師少数」なのかを、「産科医師偏在指標」および「小児科医師偏在指標」を用いて、客観的に確認する

(2)「医師確保計画」(2019年度中に策定)の中に、産科・小児科に特化した▼医師確保の方針▼目標医師数(偏在対策基準医師数)▼医師確保の施策―を盛り込み、2020年度から実行する

(3)医師確保計画の成果を検証し、順次改善していく

最も産科医が少数なのは北海道の留萌と北空知、小児科医が最少なのは埼玉県の児玉

 まず(1)の産科と小児科の「医師偏在指標」は、全体の「新たな医師偏在指標」とは別に、都道府県別・医療圏別の「分娩件数1000件当たりの産科・産婦人科医師数」「15歳未満の年少人口10万人当たりの小児科医師数」をベースに設定されます。各地域の産科医師・小児科医師の配置状況を、客観的に把握するものです。
医師需給分科会(3)の4 190218
医師需給分科会(3)の3 190218
 
 この指標によって、「下位3分の1」(33.3%)となった地域を「相対的医師少数区域」と呼び、産科・小児科に特化した医確保対策を、全体の医師確保とあわせて進めていくことになります。
医師需給分科会(3)の5 190218
 
2月27日の医師需給分科会では、「相対的医師少数区域」の候補が明示されました。各都道府県で「患者の流出入」を調整し、最終的な「相対的医師少数区域」が決定されます。現在の候補は、次のようになっています。

【産科】

○相対的医師少数都道府県(候補)
▼新潟県▼熊本県▼福島県▼佐賀県▼青森県▼埼玉県▼高知県▼宮崎県▼茨城県▼長野県▼群馬県▼愛媛県▼鹿児島県▼岐阜県▼広島県▼大分県

○相対的医師少数区域(周産期医療圏の候補、下位20医療圏を抜粋)
▼北海道留萌(留萌市、増毛市など)
▼北海道北空知(深川市、妹背牛町など)
▼福岡県京築(行橋市、豊前市など)
▼北海道宗谷(稚内市、浜頓別町など)
▼北海道後志(小樽市、蘭越町など)
▼福岡県朝倉(朝倉市、筑前町など)
▼新潟県県央(三条市、燕市ほか)
▼大分県西部(日田市、九重町など)
▼福岡県直方・鞍手(直方市、宮若市など)
▼長崎県壱岐(壱岐市)
▼北海道南空知(岩見沢市、夕張市など)
▼北海道富良野(富良野市、占冠村など)
▼埼玉県秩父(秩父市、長瀞町ほか)
▼大分県豊肥(竹田市、豊後大野市)
▼愛媛県今治(今治市、上島町)
▼埼玉県利根(行田市、蓮田市ほか)
▼福島県会津・南会津(会津若松市、喜多方市など)
▼福岡県筑紫(筑紫野市、太宰府市など)
▼鹿児島県姶良・伊佐(霧島市、姶良市など)
▼岡山県津山・英田(津山市、美作市など)

 最も偏在指標の小さい「北海道留萌」と「北海道北空知」は偏在指標が0.0で、産科医がゼロ人であることを示しています(最多は「東京都島しょ」(大島町など)の64.7)。なお、北海道南檜山医療圏などは、産科医市数がゼロ人ですが、年間分娩件数もゼロ人であるため(高齢化が進行しているためと推測される)指標は設定できません(相対的医師少数地域とはならない)。

◎産科の状況はこちら(医師偏在指標)こちら(医療圏と市町村の対応表)

 
【小児科】

○相対的医師少数都道府県(候補)
▼茨城県▼埼玉県▼鹿児島県▼千葉県▼宮崎県▼静岡県▼愛知県▼三重県▼青森県▼沖縄県▼岩手県▼福島県▼栃木県▼広島県▼岐阜県▼神奈川県

○相対的医師少数区域(小児医療圏候補、下位20医療圏を抜粋)
▼埼玉県児玉(本庄市、美里市ほか)
▼岡山県真庭(真庭市、新庄村)
▼静岡県御殿場(御殿場市、小山町)
▼大分県西部(日田市、九重町など)
▼福岡県京築(行橋市、豊前市など)
▼埼玉県中央(鴻巣市、上尾市など)
▼長崎県県南(島原市、雲仙市など)
▼宮城県大崎・栗原(大崎市、色麻町など)
▼北海道北空知(深川市、妹背牛町など)
▼和歌山県有田(有田市、湯浅町など)
▼茨城県鹿行南部地域(鹿嶋市、潮来市など)
▼静岡県北遠(天竜区)
▼千葉県山武長生夷隅(茂原市、勝浦市など)
▼福島県相双(相馬町、南相馬市ほか)
▼愛知県東三河北部(新城市、設楽町ほか)
▼鹿児島県奄美(奄美市、瀬戸内町ほか)
▼岩手県胆江(奥州市、金ヶ崎町)
▼熊本県有明・鹿本圏域 (荒尾市、玉名市ほか)
▼鹿児島県熊毛(西之表市、屋久島町ほか)
▼神奈川県平塚・中郡(平塚市、大磯町ほか)

◎小児科の状況はこちら(医師偏在指標)こちら(医療圏と市町村の対応表、小児医療圏は後方に記載)

 
 最も偏在指標が高いのは「熊本県芦北圏域」(水俣市など)で350.8。最少の「埼玉県児玉」(16.5)と比べて、21.3倍の格差があります。

 
 相対的医師少数の都道府県・医療圏では、下位3分の1ラインを目指して(医師確保計画における産科医・小児科医の確保目標値となる)、医師確保に取り組んでいきます。

 周産期医療圏では、下位3分の1ラインは「8.6」程度で、最下位の「北海道留萌」「北海道北空知」との差は「8.6」程度。小児医療圏では、下位3分の1ラインは「74.0」程度で、最下位の「埼玉県児玉」との差は「57.5」程度。この差を埋めるべく、産科医・小児科医の確保を進めていくことが求められます。

産科等は労働環境厳しく、まず「医療圏見直し・連携」を進め、医師派遣はその後

 ところで、「全体で医師が少数」の地域では、医師多数の地域への「医師派遣」要請などを行いますが、産科・小児科に関しては労働環境が厳しく、今回、「産科医・小児科医が少なくない」と判断された地域でも、「産科医・小児科医」が不足している可能性があります(このため、全体の医師と異なり「相対的医師多数」の地域は設定されていない)。

こうしたことから、「産科医・小児科医が少なくない」とされた地域(X地域)から、「産科医・小児科医が少数」の地域(相対的医師少数地域)への産科医・小児科医派遣を進めれば、X地域の産科・小児科医療提供体制の維持が困難になってくることも考えられます。

そこで産科・小児科については、「全体の医師確保」とは異なる産科医・小児科医の確保を立て、進めていくことになります((2)の医師確保計画の中に盛り込む)。具体的には、「医師派遣のみで医師偏在を解消することは、適当ではない」とされ、まず▼医療圏の見直し▼医療圏を超えた連携―による対応を実施することが求められます。それでもなお相対的少数である場合、はじめて医師の派遣調整等(短期的施策)を実施することになります。あわせて、産科医・小児科医の養成数増加などの長期的施策(地域枠・地元枠の設置を大学医学部に要請する)による対応を適宜組み合わせることも求められます。

また、「相対的医師少数」とされていない地域においても、産科医・小児科医不足の可能性を踏まえて「医師を増やす方針」を立てることも認められます(ただし、将来の人口動態や医療提供体制を十分に検討することが必要)。

産科・小児科機能を持つ医療機関の重点化や集約化を進めよ

こうした方針に沿って、各都道府県では、具体的な産科医・小児科医の確保に向けた「施策」を立てます。施策例として、厚労省は次のような提案を行っています。

(1)医療提供体制等の見直し
▼医療機関の集約化・重点化等(統合・再編や機能分化など)により、「施設・設備の整備、改修、解体等を要する医療機関」への配慮を行う(産科・小児科の重点化医療機関における設備拡充への費用負担の軽減、分娩対応をやめ妊婦健診や産後ケアに特化するための改修費・ダウンサイジング支援など)
▼医療機関の集約化・重点化等に伴って「医療機関へのアクセス」に課題が生じた場合の移動手段確保などへの支援を行う
▼医療機関へのアクセスに時間がかかる地域への配慮を行う(小児への巡回診療実施や、ICT、遠隔診療の活用など)
▼小児科「以外」の医師の、小児の休日・夜間診療への参画に対する支援を行う(地域の救急科・内科・総合診療科の医師などを対象に、家族への配慮を含む小児診療に関する研修を行うなど)
▼小児在宅医療に係る病診連携体制の運営を支援する(医師に対する研修、患者の退院前調整・急変時の入院調整等などを含む医療機関間の連携体制の運営支援、小児対象の訪問看護ステーションと医療機関との連携構築の支援など)

(2)医師の派遣調整
▼相対的医師少数区域へ勤務することへのインセンティブ等を付与する(派遣元医療機関へ復帰後の職位等の保証、待遇改善なども含む)
▼地域での短期間勤務(例えば1年程度)に伴う頻繁な移動・転居などへの配慮を行う(宿舎整備、移動に対する支援など)
▼寄付講座を設置する
▼医師を派遣する側の医療機関への支援を行う
▼新専門医資格の取得を目指す専攻医が、相対的医師少数区域をローテーションすることへの支援を行う

(3)産科医・小児科医の勤務環境改善
▼「余裕のあるシフト」などを確保するため、個々の医療機関で「複数医師の配置」「チーム医療の推進」「交代勤務制(日夜勤制)の導入」「連続勤務の制限」などを実施する
▼産科・小児科で比較的多い女性医師を中心した支援を行う(時短勤務等の柔軟な勤務体制の整備、院内保育・病児保育施設・学童施設やベビーシッターの充実など)
▼院内助産を推進する(助産師へのタスクシフトを推進する)
▼医師業務のタスクシフトを進めるために必要な、「看護師」「助産師」「臨床心理士」「事務補助」などの人員確保に対する支援を行う

(4)産科医・小児科医の養成数増加
▼医学生への積極的な情報提供、関係構築を実施し、診療科選択への動機付けを実施する
▼新生児医療については、「小児科専攻医を養成する医療機関」において、新生児科(NICU)研修の必修化などを検討する
▼研修実施に対するインセンティブ、診療科枠制限をかけた医学生への修学資金貸与、指導医への支援、勤務環境改善などを実施する

 
 
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