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勤務医の働き方、連続28時間以内、インターバル9時間以上は現実的か―医師働き方改革検討会

2018.12.18.(火)

 勤務医についての「時間外労働の上限」設定論議が進んでいるが、「一般の労働者よりも長い上限」となる見込みであり、その分、勤務医の健康確保を十分に行う必要がある。その点で、例えば「連続勤務時間は28時間以内とする」「勤務間のインターバルは9時間以上とする」ことなどを明確化してはどうか―。

12月17日に開催された「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)方向で、こういった点について議論が行われました(関連記事はこちら)。

これらに「反対」する意見こそ出ていませんが、「現時点で導入されれば、病院運営が立ち行かなくなる」との指摘は多数出ており、調整にはまだ時間がかかりそうです。

12月17日に開催された、「第14回 医師の働き方改革に関する検討会」

12月17日に開催された、「第14回 医師の働き方改革に関する検討会」

 

連続勤務時間28時間、インターバル9時間以上、「目標」化に反対意見はないが・・・

我が国の良質・高水準の医療提供体制は、勤務医の過重な労働(勤務医の4割は「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」である年間960時間を超えて、2%はその3倍となる年間2880時間を超えて、労働を行っている)によって支えられています。

勤務医の4割は年間960時間超の、10.5%は1920時間超の、1.8%は2880時間超の過重労働をしている

勤務医の4割は年間960時間超の、10.5%は1920時間超の、1.8%は2880時間超の過重労働をしている

 
こうした過重労働は、医師の健康を害するとともに、医療安全にも支障を来すため、12月5日の前回会合では、厚生労働省から、次のような勤務医の「時間外労働の上限」設定に関する骨格案が提示されました。後述するように、検討会では、この骨格案そのものに賛否両論が出ています(関連記事はこちら)。
2024年度から、まず「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」を勘案した時間外労働上限の「目指すべき水準」を定め、そこに過重労働者がシフトしていくように進める

2024年度から、まず「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」を勘案した時間外労働上限の「目指すべき水準」を定め、そこに過重労働者がシフトしていくように進める

 
(1)医療の▼不確実性(患者は個別性が高く予見不可能な状態変化も少なくない)▼公共性▼高度の専門性▼技術革新と水準の向上―という特殊性に鑑み、まず2024年度から「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」をも考慮した「年間の時間外労働上限」(上限を超過した労働を課した場合、事業主には罰則が科される)と「月間の時間外労働上限」を設定する

(2)地域医療確保のため、対象医療機関を限定・特定した上で、(1)の水準を超える時間外労働(年間・月間)を可能とする

(3)我が国の医療水準の維持・向上のため、特に若手医師が短期間に集中的に多くの症例を経験することを可能とするために、「医療機関を限定・特定する」「本人の申し出に基づく」場合には、(1)を超える時間外労働を認める

 もっとも、一般労働者よりも長時間の労働となる可能性が高い((1)から(3)は上限であり、すべての医師がこうした時間外労働に従事するわけではない)ことから、厚労省は次のような追加的健康確保措置を講ずることも求めてはどうか、と提案しています。

【追加的健康確保措置(その1)】
「連続勤務時間制限」「勤務間インターバル確保」などを、(1)の医療機関では「努力義務」化、(2)(3)の医療機関では「義務」化する

【追加的健康確保措置(その2)】
(1)から(3)のすべての医療機関において、「月間の時間外労働上限」を超過した労働が生じる場合には、▼医師による面接指導▼面接結果を踏まえた就業上の措置(ドクターストップ)—などを行う

 
 12月17日の検討会では、この【追加的健康確保措置】について厚労省から具体案が提示されました。やはり、賛否両論が出ています。

 まず前者の【追加的健康確保措置(その1)】については、次のような考え方が提案されました。健康確保ために必要とされる「6時間以上の連続した睡眠時間」確保を目指すものです。

▽連続勤務時間は28時間(24時間+4時間、米国卒後医学教育認定協議会(ACGME)の例を参考に設定)までとしてはどうか

▽勤務間インターバル(通常の9時間程度超の日勤を終えた後、次の勤務までの休息時間)を9時間以上としてはどうか

▽当直明けの日については、28時間連続勤務時間を導入した上で、この後の勤務間インターバルは18時間(9時間×2日分)としてはどうか
医師働き方改革検討会 181217の図表
 
こうした数字そのものについて、構成員から明確な反対意見は出されませんでした。ただし、「目標としては理解できるものの、この仕組みを直ちに導入した場合、医療機関の運営が立ち行かなくなる」との指摘が、山本修一構成員(千葉大学医学部附属病院院長)や馬場武彦構成員(社会医療法人ペガサス理事長)ら、医療提供サイドから相次ぎました。

一方、赤星昂己構成員(東京女子医科大学東医療センター救急医)ら、勤務医サイドは「医療現場を眺めたとき『●年までに、何をする』といった工程表を定め、着実に後押ししなければ実現できないと思う」と述べ、画餅に帰さないような行政のプッシュが必要との見解を示しています。厚労省案の実現に期待を寄せた意見と捉えることが可能でしょう。

また、村上陽子構成員(日本労働組合総連合会総合労働局長)や森本正宏構成員(全日本自治団体労働組合総合労働局長)ら、労働組合サイドからは、前述の骨格案そのものへの反対意見が再び提示されました。森本構成員は、少なくとも上記(1)の医療機関(多くの医療機関)においても、この連続勤務時間などの【追加的健康確保措置(その1)】を、努力義務でなく、「義務」とすることが必要と指摘しています。

ところで、例えば手術を行った外科医には、休息期間中にも「術後の状態変化の報告や、指示の確認・要請などに関する問い合わせ」等が頻繁に来ることでしょう。これが「休息、勤務間インターバルと呼べるのか」という問題があります。厚労省は、こうした状況がある場合には「インターバルに含めず、後に代償休暇(代休)として取得してもらう」との考えを示していますが、「代休も現実的ではなく、結果として勤務医の負担は減らない可能性がある」(黒澤一構成員:東北大学環境・安全推進センター教授)との指摘もあります。

「反対意見はない」と述べましたが、「事実上の賛否両論がある」とも言える状況です。骨格と併せ、さらに細部も含めて、今後も、調整が続けられます。

産業医等による「勤務医の健康チェック」(面接)、地方等でどう運用していくべきか

後者の【追加的健康確保措置(その2)】については、次のような考え方が提案されました。医師が個別労働者の状況を面接等でチェックし、必要に応じて「労働へのドクターストップをかける」仕組みです。

▽「産業医の養成研修・講習を修了した医師」が、「長時間労働をする医師の面接指導に際して特に留意すべきこと」などの講習を受けたうえで、医師を面接指導する

▽面接が客観的に実施(勤務先からの独立性確保など)されるよう、面接者は「院外の医師とする」ことや、「院内の産業医の養成研修・講習を修了した医師」であっても独立性を確認できる仕組み(外部への結果報告など)を設けるなどの工夫を行う

▽面接指導の結果が、就業上の措置(労働時間の短縮や当直回数減など)に結びつくよう、措置されない場合の医療機関名公表などの枠組みを検討する

 こうした提案については、【追加的健康確保措置(その1)】と異なり事実上の反対意見も出ていません。

 もっとも、「面接指導の結果を踏まえた措置が講じられない場合の医療機関名公表」案に対しては、裵英洙構成員(ハイズ株式会社代表取締役社長)から「医療機関側の怠慢で措置を講じない場合は公表等もやむを得ないかもしれないが、地域によっては医療機関の努力だけでは勤務時間短縮措置が講じられない場合もある。そうした場合に、医療機関名が公表されれば、さらに医師確保が困難となり、かえって勤務医の負担が増していく。慎重に検討すべき」との注文も付いています。

 また、そもそもの問題点として「面接を行う医師」(産業医に限らないが)の確保が地域では難しいとの指摘も出ています。

 こうした場合、地域の医師会や病院団体などによる重層的なサポートが必要となるでしょう。運用の確保も含めた、具体的な制度設計論議が待たれます。

ナース・プラクティショナーの創設を求める意見も出たが、議論には時間が必要

 なお、12月17日の検討会では、タスク・シフティングの一環として「特定行為研修制度の見直し」方針が報告されました。

 一定の研修(特定行為研修)を修了した看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で特定の医療行為(38の特定行為)を実施することが可能です。医師・歯科医師の負担を一定程度軽減することが期待されており、さらにこの特定行為研修制度を推進するために、今後、▼在宅・慢性期領域▼外科術後病棟管理領域▼術中麻酔管理領域—の3領域について、特定行為研修を「パッケージ」化し、併せて研修内容を精錬して研修時間等を短縮することで、より特定行為研修を受けやすくするものです(関連記事はこちら)。

この見直し方向について、構成員からは「画期的である」との評価がなされた一方、「よりタスク・シフティングにドライブをかけるため、例えば、アメリカで導入されている『ナース・プラクティショナー』制度の創設などを検討してはどうか」(渋谷健司座長:東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授ら)といった提案もなされました。

この点について厚労省医政局総務課の北波孝課長は、「さまざまな可能性を視野に入れて議論してほしい」としたうえで、まず「現行制度の改善」(特定行為研修制度の見直し)を進めていく考えを示しました。

またナース・プラクティショナー制度については、「米国と我が国とでは状況が異なる。法令の整備(例えば保健師助産師看護師法では「医師の指示の下」で診療行為の補助を行うこととされており、この規定をどう考えるかという議論からしなければならない)も必要となる。また看護師だけでなく、他の医療職種も含めた教育課程を見直す必要性も出てくる」とし、議論には一定の時間がかかるとの見解を示しています。

 
 
 
 

 

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