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「webサイト構築で情報伝達」は幻想と認識し、ターゲットにあった伝達経路を考えるべき―厚労省・上手な医療のかかり方広める懇談会

2018.11.20.(火)

 現代では情報が溢れており、「正しい医療情報を集約したサイト」もその中に埋もれてしまう。サイトを構築するだけでなく、正しい情報を的確に「伝える」ために、ターゲットを絞り、そこに「伝わる経路」を考えなければならない―。

11月12日に開催された「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」(以下、懇談会)では、佐藤尚之構成員(ツナグ代表取締役)からこういった指摘がなされました。

佐藤構成員は、例えば「母親(ママ)」に焦点を合わせ、「医療のかかり方検定」「医療情報士」などの資格を設けて意識の高い「ママ友」から情報発信してもらうことなどを提案しています。

11月12日に開催された「第3回 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」

11月12日に開催された「第3回 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」

 

webサイト構築は重要だが、「一部の人しか見ていない」ことを認識せよ

 「医師の働き方改革」に向けた検討が進められていますが、そこでは「患者側にも医療のかかり方について、しっかり考えてもらう必要がある」との議論もなされています。どれほど医師の時間外労働規制を行おうとも、医師の業務を他職種に移管しようとも、患者・国民側が「医療機関が空いている夜間や休日に受診しよう」などと考えていたのでは、医師は永遠に過重労働から解放されないからです(関連記事はこちら)。

 懇談会ではこれまでに、「医療に関する正しい情報」を集約したwebサイトなどを構築し、例えば「子どもが熱を出したときにどうすればよいか」などを参照できる環境を作れば、不要不急の夜間受診や救急車利用などが減少し、勤務医の負担軽減につながるのではないか、という方向が見出されています。

 そのwebサイトに掲載するコンテンツについては、自治体が学会、医師会、病院団体などがすでに優れたものを構築しており、例えば、ここにリンクを張ったり、引用したりすることが考えられます。

 ただし「そのwebサイトを国民が利用するのか?」という大きな疑問があります。

 コミュニケーション・ディレクターの佐藤構成員は、この点に関連してエビデンスも交えて「webサイトの構築」だけでは問題は解決しないと訴えました。極めて重要な指摘です(懇談会の資料はこちら(厚労省のサイト))。

▼現代は「情報洪水」時代であり(2020年には「世界中の砂浜の砂の数」の35倍にも及ぶ情報が流れているとの予測)、テレビやネットにたくさん露出するだけでは、伝えたい内容は、まず伝わらない

▼ネット上に「正しい情報を集約したサイト」を作ることは必須だが、皆が検索して見に来てくれるわけではない(まずwebサイトは「検索」等してもらわなければ光が当たらないが、とくに地方では「検索」者は東京の半数程度にとどまっているのが実際である)

▼SNSの利用者は、実はごくごく少数派である(最も利用者の多いtwitterでも、その82%は990万人が活用しているに過ぎず、残りの日本国民1億2000万人弱には伝わらない)

▼動画やテキストなどで「良いコンテンツ」を作ったとしても、多くのコンテンツの中に紛れてしまうことを意識しなければならない(動画サイトYouTubeだけでも毎分400時間分の動画がアップされ、「1日にアップロードされる動画」だけでも、すべてを見るには65年かかる)

 
 こうした点を加味し、例えば「検索」の上位に出るような対策(SEO対策)が重要なことは確かなのですが、皆がこうした対策をとるため、いずれ「情報の波に埋もれてしまう」ことに変わりはないのです。

 佐藤構成員は、このような、いわば「webサイトへの幻想」を払拭する必要があることを強調した上で、「伝えたい相手を絞り、それにマッチした伝達経路を考える必要がある」と指摘。今回のテーマである「上手な医療のかかり方」では、子どもを抱えた「母親」(ママ)を最優先ターゲットに据え、例えば、次のような「伝え方」を検討してはどうかと提案しました。

▽「母親ネットワークの中で、意識の高い人、信頼度の高い人」を対象として、▼「上手な医療のかかり方検討」の創設▼「医療情報士」などの資格創設▼医療関係職種(ネットワークの中に、医療従事者がいるケースが多い)への啓蒙―などを行う

 
 もちろん、webサイトの構築やテレビコマーシャルなども重要ですが、こと医療に関しては「身近な信頼できる人への相談」が重要な位置を占めています。厚生労働省が3年に一度実施している受療行動調査でも、医療に関する最大の情報収集源は「家族・知人・友人の口コミ」(入院・外来ともに7割超)であり、ネット等を凌駕している(2割程度)ことからも佐藤構成員の指摘は裏付けられていると言えます。

 阿真京子構成員(「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」代表理事)や豊田郁子構成員(患者・家族と医療をつなぐ特定非営利活動法人架け橋理事長)も、この提案に強く賛同。あわせて「母親学級や母子健診などの機会を活用して、専門知識をもった医療従事者が『上手な医療のかかり方』を伝達してはどうか。母親は『子どもが発熱した場合にどうすればよいのか』などの情報を切望している。最後は、人と人が直接、情報交換することが重要である」とも提案しています。

 
 なお、ジャーナリストである岩永直子構成員(BuzzFeed Japan News Editor(Medical担当))は、「いわゆる『意識の高い』方たちの中には、怪しげな情報に飛びついてしまう方がいるかもしれない。情報の内容については公的機関の関与が重要である」旨を強調しました。例えば「がん」医療をめぐっては、専門病院であっても「エビデンスのない免疫細胞療法」などを実施し、その旨を自院のwebサイト等で謳っているところもあります。医療の専門知識のない国民には、こうした情報の真贋を見極めることは困難(画期的な抗がん剤オプジーボに絡めて、エビデンスのない『免疫療法』が跋扈することを危惧する声も少なくない)です。「信頼の高いママ友」の声の影響力の高さに鑑みても、少なくとも「不確かな情報を発しない」ような仕掛けや工夫が必要でしょう。

 
 
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