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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

日病が「特定行為研修を修了した看護師」の育成拡大をサポート―日病・相澤会長(2)

2019.3.27.(水)

 医師の働き方改革においてタスク・シフティングが重要テーマとなっている。業務移管先として「特定行為研修を修了した看護師」に期待が集まり、今後、養成数・養成施設数を拡大していく必要があるが、養成施設(指定研修施設)になるために一定のハードルがある。日本病院会では、加盟病院が指定研修施設となろうとする場合、その支援を行っていく―。

 日本病院会の相澤孝夫会長は、3月26日の定例記者会見で、こういった考えも示しました(3月23日の社員総会で了承済)。

3月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)

3月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)

3月23日に開催された、日本病院会の2018年度社員総会

3月23日に開催された、日本病院会の2018年度社員総会

 

会員病院が指定研修施設になろうとする場合、日病が諸手続きなどをサポート

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」では、医師(勤務医)の時間外労働上限の設定とともに、さまざまな労働時間短縮策に関する議論を行っています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 労働時間短縮策の中でとくに期待されているのが、医師でなくとも可能な業務を他職種へ移管する「タスク・シフティング」で、中でも既に制度化されている「特定行為研修を修了した看護師」への注目度が高まっています。

一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を修了した看護師(特定行為研修を修了した看護師)は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38行為(21分野)の診療の補助(特定行為)を実施することが可能となります。2020年4月からは、研修科目を精査し「研修の質を担保しながら、研修時間の短縮を行う」とともに、▼在宅・慢性期領域▼外科術後病棟管理領域▼術中麻酔管理領域—の3領域において特定行為研修をパッケージ化するなどの見直しが行われます(関連記事はこちらこちらこちら)。

パッケージ化研修を修了すれば複数の特定行為を実施することが認められ(従前は1つの研修修了で1つの特定行為実施のみ可能)、急性期病院では、「外科術後病棟管理領域」や「術中麻酔管理領域」のパッケージ研修を修了した看護師が、医師の担っている業務の一部を担当することが期待されています。

厚労省は「2025年度までに研修修了者を10万人とする」との目標を掲げていますが、2018年3月時点で研修修了者は1006名にとどまっています。

また、研修を実施する指定研修機関については「少なくとも全都道府県に1か所の指定研修機関を設置する」との目標が掲げられていますが、2019年2月時点で39都道府県113機関にとどまっています(関連記事はこちら)。
看護師特定行為研修指定研修機関の状況(2019年2月)
 
こうした状況を踏まえ、相澤会長は「特定行為研修を修了した看護師」の養成を拡大し、そのためには指定研修機関の拡大が必要である」と考えていますが、一方で、指定研修機関として指定されるにあたり、▼申請等の事務手続きが非常に煩雑である▼座学の研修についてe-ラーニングシステムを活用する(遠方の研修施設まで通わずに受講可能)ことも可能だが使い勝手の悪いシステムもある―という課題もあります。相澤会長が理事長を務める慈泉会相澤病院(長野県)は、この2月(2019年2月)に新規に指定研修機関に指定されましたが、その際に相当の苦労をされたようです(▼創傷管理関連▼創部ドレーン管理関連▼栄養・水分管理に係る薬剤投与関連▼血糖コントロールに係る薬剤投与関連―の4行為の研修実施が可能、関連記事はこちら)。

このため相澤会長は、2019年度から、日病の会員病院が特定行為研修の指定研修施設への申請を考える場合、上記の課題に対応するために「日病として支援する」考えを明らかにしました。会員病院において「タスク・シフティング」が進むとともに、看護師自身の知識・技術がランクアップすることから、医療・看護の質がより向上していくと期待されます。さらに、日病会員病院のみならず、近隣の医療機関に勤務する看護師にとっても「より身近に研修を受講できる」機会が増えることとなります。

 
外科系の100医学会で構成される外科系学会社会保険委員会連合(外保連)でも、特定機能病院に対し、積極的に「指定研修機関」申請を行うよう求めており、「特定行為研修を修了した看護師」の育成環境整備が急速に進むと期待されます(関連記事はこちら)。

生活習慣病の予防や重症化防止、「診療報酬(医療保険)の外」での対応も検討

このほか相澤会長は、2019年度には▼適正な医療提供体制の構築に向けたデータの整備と提供(会員病院がデータをもとに地域における自院の立ち位置を確認する)▼望ましい医師の働き方に関するデータ収集と分析▼2019年10月に予定される消費税対応改定の早期の影響調査と分析▼生活習慣病の予防や重症化防止対策(別稿でもお伝えします)▼単回使用医療機器の活用拡大によるコスト削減▼日病認定【病院総合医】の拡充(こちらこちらこちら)▼新専門医制度の在り方に関する研究と提言―などを重点事項として進めていく考えも示しています。

このうち「生活習慣病の予防や重症化防止」については、診療報酬(つまり医療保険)の外での対応について研究を進め、会員に周知していくことになります。この点、3月23日の社員総会では、経済産業省の商務情報政策局商務・サービスグループの江崎禎英商務・サービス政策統括調整官が、極めて示唆に富んだ特別講演を行っており、メディ・ウォッチでも別途お伝えします。

また「単回使用医療機器」(SUD)について、厚労省は「医療安全のため、院内で洗浄・滅菌しての再利用は認められない」としていますが、相澤会長は「医療現場からすれば、再利用可能なものもあると考えられる」とし、今後、厚労省や関連企業と調整・検討を進めていく考えを示しています(関連記事はこちらこちら)。

 
 
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