急性期入院医療の評価指標は「看護必要度」でよいのか、再検討が必要―日病・相澤会長
2018.3.1.(木)
2018年度の診療報酬改定では急性期一般入院料(現行7対1・10対1一般病棟入院基本料を再編・統合するもの)等が創設されるなど、将来の方向性が明確になった。ただし、急性期入院医療の実態を適正に示す指標について、しっかり立ち止まり、日本病院会として考える必要がある―。
日本病院会の相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)は2月27日の定例記者会見で、このような考えを示しました。
DPCデータ活用する看護必要度IIの結果も踏まえ、適切な指標を日病内で検討
2018年度の診療報酬改定では、急性期から長期療養に至る入院基本料・特定入院料の再編・統合が行われました。入院医療の核となる入院基本料(7対1-15対1、療養)は、▼急性期一般入院料(現行7対1・10対1を再編・統合)▼地域一般入院料(現行13対1・15対1を再編・統合)▼療養病棟入院基本料(現行の療養病棟入院基本料を整理)―に設定され、各入院料の中で「診療実績に応じた段階的な評価」がなされる格好です(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
また地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟の特定入院料も再編・統合され、地域包括ケア病棟については、▼200床未満の病院に設置されている▼自宅等からの患者を積極的に受け入れている—病棟を高く評価(入院料の引き上げ+加算の引き上げ)しています(関連記事はこちらとこちら)。
こうした見直し内容について、日病内では「入院医療の機能分化に向けた厚生労働省の明確な方向が示されたと考えられる」「段階的評価により、病院側には選択肢が増えた。病院経営を維持した上で、『地域にみあった医療』を提供しやすくなる」と高く評価されていることが相澤会長から紹介されました。
ただし、急性期一般入院料の実績を評価する指標については、日病内で「見直しを検討すべきではないか」との声が多く上がっているようです。
相澤会長は、現在の「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)が、急性期の病態を示しているかには疑問があるとし、新設される看護必要度II(DPCのEF統合ファイルのデータを活用する)による評価結果なども踏まえ、▼そもそもの「急性期の病態」というものはどういうものか▼重症さ、医療・看護の大変さをどう評価するべきか—という点について、しっかり立ち止まって、日病として検討する考えを示しています。
診療報酬改定論議を行う中央社会保険医療協議会・総会でも、厚労省保険局医療課の迫井正深課長から「将来的に、(看護必要度に代わる)より適切な指標や評価手法の開発に向けた検討」を行う考えも示されており(関連記事はこちら)、今後の動きが注目されます。
2次医療圏は「医療の実態」とミスマッチ、あるべき医療圏を日病内で検討
また日病内部では、「入院医療の機能分化」を考えるベースとなる「2次医療圏」の在り方についても検討すべきではないか、との意見が出ているようです。
現在、2次医療圏をベースとして、地域医療構想の実現(機能分化、連携の強化)をはじめとする医療提供体制の整備が進められています(圏域ごとに、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の必要病床数を設定し、ここに実態を併せていくことや、がん診療連携拠点病院等の整備を行う)。
しかし相澤会長は、▼人口構造が非常に速い速度で変化している▼患者移動もかつてより大きい(圏域をまたぐ受診も多い)▼圏域を超えた「事実上の医療圏」も形成されてきている—といった実態があり、これと現在の2次医療圏とが齟齬を来している可能性が高いと指摘。「患者や地域住民が安心して、安全生活でき、かつ、医療機関がどのように医療提供体制を整えればよいかを考えやすい」圏域を考え直す必要があると考え、日病内の「医療政策委員会」に検討を指示したことを明らかにしています。
2018年度からは新たな医療計画がスタートしますが、3年後の2021年度には「医療計画の中間見直し」が行われます。日病の動き如何によっては、この「中間見直し」が大きなものになる可能性もあります(関連記事はこちらとこちら)。
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