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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2022年度薬価改革に向け、新薬創出等加算の拡大、原価開示促進方策など検討―中医協・薬価専門部会

2021.8.12.(木)

2022年度の次期薬価制度改革においては、▼効能追加においても、一定の要件の下で【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】の対象とする▼原価計算方式における原価開示率向上を目指した仕組みを設ける▼「特定用途医薬品」「先駆的医薬品」に係る薬価改定などの在り方を検討する―こととしてはどうか―。

8月4日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会では、薬価算定組織の前田愼委員長(横浜市立大学医学部消化器内科主任教授)から、こういった意見が提示されました。

この意見をベースに、業界団体からの意見も踏まえながら、2022年度の次期薬価制度改革に向けた議論が中医協で詰められていきます。

「高額かつ患者数の多い新薬」の適正使用を確保するルール策定を求める声も

薬価算定組織は、中医協の下部組織であり、薬価算定ルール(中医協で決定する)に沿って、個別新薬の薬価を検討します。その過程で「薬価算定ルールの問題点」が浮上するため、2年に一度の改定の都度に「改善に向けた提案」が行われます。今回は、次の3つの提案が行われました。

(1)臨床上有用な新規の作用機序を有し、類似薬と比べて安全性・有効性の高い医薬品については、新規収載時には【画期性加算】【有用性加算】として評価されるが、既収載医薬品の効能効果追加時には「新規作用機序により既存治療で効果不十分な疾患に有効である」などと認められた場合にのみ【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】として評価される

この新規収載時と効能効果追加時との評価のズレを是正し、有用な効能効果追加を促進する観点から、「【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】の対象外である既収載品について、新規作用機序医薬品に相当するものに限らず、『新規収載時であれば有用性加算等に相当する』効能・効果等が追加された場合には、 対象領域、市場規模等の一定の要件を付した上で、【新薬創出・適応外約解消等促進加算】の対象とする」ことを検討してはどうか

有用性の評価について、新規収載時と効能効果追加時とでズレがある(薬価専門部会1 210804)



(2)原価計算方式における開示度を向上し薬価の透明性を高める観点から、現在の「開示度に応じた補正加算の設定」などに加え、▼移転価格(企業グループ内の取引価格、A製薬メーカーの海外法人や日本法人に輸出・販売する際の価格)の妥当性確認方法▼移転価格であることを考慮した算定方法―などをルール化してはどうか



(3)改正薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、▼特定用途医薬品▼先駆的医薬品―が法令上に位置付けられており、現在の同様の観点でのルール(先駆け審査指定制度加算など)の整理と合わせ、薬価改定の在り方を検討してはどうか

【特定用途医薬品】
「対象とする用途の需要が著しく充足していない」「医療上特にその必要性が高い」などの要件に合致する医薬品。例えば、「小児に対する用法・用量が設定されていない」など、医療上のニーズが著しく充足されていない医薬品の研究開発の促進に寄与する

【先駆的医薬品】
治療薬の画期性、対象疾患の重篤性、対象疾患に係る極めて高い有効性などの条件に合致する医薬品。世界で最先端の治療薬を最も早く我が国の患者に提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬等について、薬事承認に係る相談・審査における優先的な取扱いの対象とするなど、迅速な実用化を図る

特定用途医薬品・先駆医薬品の概要(薬価専門部会2 210804)



中医協では、この3項目を中心に時期薬価制度改革案を詰めていくことを確認するとともに、今後の議論に向けていくつかの注文がついています。

例えば、(1)の【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】については「対象の拡大」が検討されることになりますが、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「どういった医薬品の新たな対象になるのか、そのイメージが共有できる資料(いわば対象拡大候補のリスト)を示してほしい」と要望。一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「非常に大きな話であり(加算対象が増えれば、医療費も増加し、医療保険財政にも影響が出る)、慎重に検討する必要がある。どういったイメージなのかを具体的に示してほしい」と城守委員と同旨の要望を行いました。もちろん「拡大が決定した」わけではなく、これから「拡大すべきか否か、拡大するとして要件をどう設定するか」などを議論していくことになります。



また(2)の原価開示度の向上(透明性確保)は従前から幸野委員が強く求めている事項で、診療側・支払側ともに方向性を歓迎。今後、具体的なルール作りの議論に入ります。



一方、(3)は改正薬機法に合わせた薬価算定ルール設定を求めるものですが、幸野委員は「評価向上(=加算の創設)を単純に考えるのではなく、現行加算も含めてメリハリをつけることが重要である」と指摘しています。



また診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、上記3項目とは別に「今後、『高額かつ患者数の多い新薬』の登場が予想される。現在は『高額だが患者数の少ない医薬品』について薬価や最適使用推進ガイドラインで使用状況をコントロールできているが、『高額かつ患者数の多い医薬品』は現在の仕組みではコントロールしにくくなる。何らかの適正使用に向けたルール作りを検討する必要がある」と提案しました。医療保険財政を考える際には、極めて重要な視点で、今後の議論の行方に注目が集まります。



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