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看護必要度、電子的保健医療情報活用加算、報告書管理体制加算などの詳細明らかに―疑義解釈12【2022年度診療報酬改定】

2022.6.8.(水)

厚生労働省は6月7日に、2022年度の診療報酬改定の疑義解釈(その12)を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

今回は、▼報告書管理体制加算▼早期栄養介入管理加算▼一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)▼特定集中治療室用の看護必要度▼肝エラストグラフィ加算▼自家脂肪注入▼腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術▼電子的保健医療情報活用加算—に関する医療現場の疑問に答えています。

【これまでの疑義解釈に関する記事】
▽その1に関する記事はこちら(看護必要度)こちら(感染対策向上加算)こちら(急性期充実体制加算)
▽その3に関する記事はこちら(地域包括診療料・加算、感染対策向上加算、術後疼痛管理チーム加算、高度難聴指導管理料、外来腫瘍化学療法診療料、バイオ後続品導入初期加算
▽その4に関する記事はこちら(感染対策向上加算)
▽その6に関する記事はこちら(感染対策向上加算、ICU、早期離床・リハビリ加算、成育連携支援加算など)
▽その7に関する記事はこちら(電子的保健医療情報活用加算、術後疼痛管理チーム加算、地域包括ケア病棟入院料、看護補助体制充実加算、平均在院日数、看護必要度など))
▽その8に関する記事はこちら(サーベイランス強化加算、術後疼痛管理チーム加算、特定集中治療室管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料、看護補助体制充実加算、早期栄養介入管理加算、二次性骨折予防継続管理料、透析時運動指導等加算、周術期栄養管理実施加算)
▽その10に関する記事はこちら(感染対策向上の加算(入院・外来)、急性期充実体制加算、データ提出加算、摂食嚥下機能回復体制加算、ネブライザ、受診時定額負担(紹介状なしの患者に対する定額負担))

画像診断報告書の適切管理を評価する報告書管理体制加算、院内研修要件の考え方明確化

A234-5【報告書管理体制加算】(退院時1回、7点)は、「画像診断報告書や病理診断報告書の「確認漏れ」防止対策を部門横断的に講じ、診断・治療開始の遅延を防止する取り組みを行っている医療機関を評価するものです(関連記事はこちらこちら)。例えば2018年5月に日本医療機能評価機構が公表した「医療安全情報No.138」では、2015年1月から2018年3月までの間に「医師がCTやMRIなどの『画像診断報告書』を確認しなかったため、オーダーした検査目的以外の悪性腫瘍などの所見に気づかず治療が遅れてしまった」といった事例が37件も報告されています。こうした事故を防止するための取り組みを評価するために、2022年度診療報酬改定で【報告書管理体制加算】が新設されたのです。

画像検査において、「画像検査報告書を確認し、患者に必要な追加説明を行う」という工程を失念し、悪性腫瘍等を見逃す事例が多数発生している



この加算を取得するためには、次のような施設基準をクリアすることが求められます。
(1)放射線科または病理診断科を標榜する
(2)A234【医療安全対策加算1・2】の施設基準を届け出ている
(3)【画像診断管理加算2・3】またはN006【病理診断管理加算1・2】の施設基準を届け出ている
(4)院内に「医療安全対策に係る適切な研修を修了した専任の常勤臨床検査技師、または専任の常勤診療放射線技師、その他の常勤医療有資格者」を報告書確認管理者として配置 している(適切な研修は【医療安全対策加算1】のアをいう)
(5)院内に、▼(4)の報告書確認管理者▼専ら画像診断を行う医師もしくは専ら病理診断を行う医師▼医療安全管理部門の医師その他医療有資格者—からなる報告書確認対策チームを設置する
(6)報告書確認管理者は、▼報告書管理に係る企画立案を行う▼報告書管理体制確保のための各部門との調整を行う▼各部門における報告書管理の支援を実施し、その結果を記録する▼報告書作成から概ね2週間後に、主治医等による当該報告書の確認状況について確認し、未確認となっている報告書を把握する▼未確認報告書のうち、医学的な対応が必要とされるものについて、その対応状況を診療録等により確認する。医学的な対応が行われていない場合には主治医等に電話連絡等の方法で対応を促す—などの業務を担当する
(7)報告書確認対策チームは、▼各部門における報告書管理の実施状況の評価を行い、実施状況及び評価結果を記録し、報告書管理の実施状況の評価を踏まえた報告書管理のための業務改善計画書を作成する▼報告書管理を目的とした院内研修を少なくとも年1回程度実施する▼医療安全管理対策委員会との連携状況、院内研修の実績を記録する▼報告書管理の評価に係るカンファレンス(対面でなくとも良い)が月1回程度開催され、報告書確認対策 チームの構成員および必要に応じて「患者の診療を担う医師」「画像診断を担当する医師」「病理診断を担当する医師」「看護師」などが参加する等が参加している—などの業務を担う
(8)医療事故が発生した際に適切に報告する体制を整備していることが望ましい

画像診断報告書の適切な管理を行い「未確認による治療遅れ」などが生じないような体制を敷いている医療機関を評価する【報告書管理体制加算】



今般の疑義解釈では、このうち(7)の「報告書管理を目的とした院内研修」(少なくとも年1回程度字実施)について、▼報告書確認対策チームの構成員▼患者を診療する医師▼画像診断部門、病理診断部門または医療安全管理部門の職員—など「報告書管理に関する業務に従事する職員」を対象とするものであることが明確にされました。

上述のとおり「画像診断報告書の確認遅れ」→「画像診断担当者の指摘事項の見落とし」→「治療の遅れ」→「病状の進行」という取り返しのつかない医療事故(がん病変などの指摘がなされているにもかかわらず、治療が遅れてしまう)が散発しています。多くの医療機関で本加算を参考に「適切な画像診断報告書の確認」が進むことが期待されます。

早期栄養介入管理加算、経腸→経口栄養移行後も400点算定可能だが、モニタリング継続を

【早期栄養介入管理加算】は、ICUなどへの入室から48時間以内に栄養投与を開始した場合に、そうでない患者と比べて有意に「死亡率の低下」「ICU在室日数の短縮」「平均在院日数の短縮」が見られるというエビデンスを踏まえ、2020年度の前回改定で導入されました(関連記事はこちら)。今回の2022年度改定では、▼「入室後早期から経腸栄養を開始した場合:400点」と「それ以外の場合:250点」とで評価の切り分けを行う(従前は一律に400点)▼特定集中治療室管理料以外にも、救命救急入院料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料に算定対象を広げる—という見直しが行われています(関連記事はこちら)。

2022年度診療報酬改定ではICU等における早期栄養介入、早期リハビリの評価を拡大している



今般の疑義解釈では、次のような点が明示されています。

▽入室後早期から経腸栄養を開始した場合には「400点を加算できる」が、経腸栄養を開始した後、経口摂取に移行した場合でも「継続して400点を算定」できる

▽「経腸栄養開始後は、1日3回以上のモニタリングを行い、その結果を踏まえ必要に応じて計画を見直すとともに栄養管理を実施する」ことが求められている、上記のように「入室早期から経腸栄養開始→患者が回復したために経口摂取に移行」した場合、経口摂取移行後も当該患者に対するモニタリングを1日3回以上実施する必要がある

看護必要度の「注射薬剤3種類」の考え方、看護必要度IIでも同様

一般病棟用の看護必要度は、急性期一般入院料などにおける極めて重要な評価指標となっています。ただし必ずしも完璧ではなく、2022年度改定では次のような見直しが行われました。

【内容の見直し】
(1)A項目の「心電図モニター管理」を削除する
(2)A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類」に定義変更する
(3)A項目の「輸血や血液製剤の管理」について1点から2点に引き上げる

【重症患者割合の基準値の見直し】(下表参照)

入院料・加算の重症患者割合の基準値見直し概要(2022年度診療報酬改定)



ところで、上記(2)の「注射薬剤3種類」について、評価の手引き(施設基準解釈通知の一部として掲載)には、▼厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」において示している「成分名」が同一である場合には1種類として数える▼健康保険法第85条第1項・高齢者医療確保法第74条第1項に規定する入院時食事療養費に係る食事療養、健保法第85条の2第1項・高齢者医療確保法第75条第1項に規定する入院時生活療養費に係る生活療養の食事の提供たる療養を受けている患者に投与されたビタミン剤は、当該患者の疾患・症状の原因がビタミン欠乏・代謝異常であることが明らかで、かつ、必要なビタミンを食事摂取することが困難な場合、その他これに準ずる場合で、医師が当該ビタミン剤の注射が有効であると判断した場合を除き、薬剤種類数の対象としない—こととされています。

今般の疑義解釈では、「一般病棟用の看護必要度IIでも同様の取り扱いである」ことが明示されました。評価に当たっては留意が必要です。

ICUの看護必要度IIでも「歯科の入院」が評価対象外

特定集中治療室用の看護必要度については、2022年度改定で次のような大きな見直しが行われました。

(1)内容の見直し
▽A項目から「心電図モニター管理」を削除する
▽B項目を削除する

(2)重症患者(看護必要度を満たす患者)の定義見直し
▽「A3点以上」とする

(3)看護必要度IIの導入
▽看護必要度IIの重症患者割合の基準値は、▼救命救急2・4、ICU1・2では70%以上(必要度Iでは80%以上)▼ICU3・4では60%以上(同じく70%)—に設定する

ICU用の看護必要度見直し概要(2022年度診療報酬改定)



今般の疑義解釈では、(3)の看護必要度IIについて「一般病棟用の看護必要度Ⅱと同じく『歯科の入院患者(同一入院中に医科の診療も行う期間については除く)は評価対象から除外する』と取り扱う」ことが明確にされました。

肝硬変の程度把握のために行う肝エラストグラフィ加算、施設基準の解釈示す

【肝エラストグラフィ加算】は、下記の施設基準を満たす医療機関においてMRI撮影について肝エラストグラフィ(肝硬変の程度を把握するための肝線維化診断の補助として、MRIで肝臓の硬度測定を行う)を行った場合に、E202【磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)(一連につき)】の所定点数に6000点が加算されるものです。

【肝臓エラストグラフィ加算】の施設基準
(1)1.5 テスラ以上のMRI装置を有している
(2)【画像診断管理加算2・3】の施設基準を満たす
(3)画像診断を専ら担当する常勤医師(専ら画像診断を担当経験10年以上、または当該療養について関係学会から示されている2年以上の所定の研修(専ら放射線診断に関するものとし、画像診断、Interventional Radiology(IVR)および核医学に関する事項を全て含むもの)を修了し、その旨が登録されている医師に限る)を3名以上配置。「画像診断を専ら担当する医師」とは、勤務時間の大部分、画像情報の撮影・読影に携わっている者をいう
(4)院内で夜間・休日の読影体制が整備されている
(5)院内で実施される全核医学診断、CT撮影、MRI撮影について夜間・休日を除いて、検査前の画像診断管理を行っている
(6)関係学会の定める指針に基づいて肝エラストグラフィ撮影を適切に実施している



今般の疑義解釈では、(6)の「関係学会の定める指針に基づいて肝エラストグラフィ撮影を適切に実施している」点について、「現時点では、日本医学放射線学会および日本磁気共鳴医学会が作成した『肝MRエラストグラフィ撮像・管理指針』を指す」ことが明示されました。

鼻咽頭閉鎖不全の鼻漏改善のための自家脂肪注入、施設基準の解釈を示す

K019-2【自家脂肪注入】は、「鼻咽頭閉鎖不全の鼻漏改善」を目的として行った場合に、原則として1患者の同一部位の同一疾患に対して1回のみ、注入する脂肪量に応じて▼50mL未満:2万2900点▼50mL以上100mL未満:3万530点▼100mL以上:3万8160点—を算定できるものです。

ただし、以下の施設基準をクリアしていることが点数取得の前提条件となっています。
(1)形成外科を標榜している病院である
(2)形成外科経験5年以上の常勤医師を2名以上配置し、うち1名以上が形成外科経験10年以上である
(3)関係学会から示されている指針に基づいた所定の研修を修了し、その旨が登録されている医師を1名以上配置している
(4)耳鼻咽喉科の専門的な研修経験10年以上の常勤医師が1名以上配置され、当該医師と連携して手術を行う
(5)緊急手術体制が整備されている
(6)関係学会から示されている指針に基づき、自家脂肪注入が適切に実施されている



今般の疑義解釈では、このうち(3)と(6)の「関係学会から示されている指針」が次のようなものであることが明らかにされました。

▽(3)の「関係学会から示されている指針に基づいた所定の研修を修了」とは、現時点では関係学会から示されている指針」は、現時点では「日本形成外科学会 E-learning 自家脂肪注入術特別セミナー」が該当する

▽(6)の「関係学会から示されている指針」(自家脂肪注入を実施するに当たっての指針)は、現時点では、日本形成外科学会・日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が作成した「再建を目的とした自家脂肪注入に対する適正施行基準(2017年版)」を指す

腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術、「婦人科標榜」「婦人科経験5年以上常勤医師配置」でも取得可

K882-2【腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術】(3万2290点)は、以下の施設基準を満たす医療機関において、帝王切開創子宮瘢痕部を原因とする▼続発性不妊症▼過長月経▼器質性月経困難症—に実施した場合に算定可能です。

【腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術】の施設基準
(1)産科・産婦人科を標榜している保険医療機関である
(2)産科・産婦人科経験5年以上の常勤医師を1名以上配置
(3)自院で腹腔鏡手術を年間20例以上実施している
(4)腹腔鏡を用いる手術について十分な経験を有する医師を配置
(5)実施診療科において常勤医師を2名以上配置
(6)麻酔科標榜医を配置

2022年度改定で【腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術】が保険適用された



このうち(1)(2)では「産科または産婦人科」とされていますが、今般の疑義解釈では「婦人科」であってもよい((1)では婦人科標榜、(2)では婦人科経験5年以上の常勤医師配置)ことが明確にされました。

電子的保健医療情報活用加算、オンライン資格確認等システムの準備完了で算定可

今般の2022年度診療報酬改定では、オンライン資格確認等システムを通じて患者の薬剤情報・特定健診情報を取得し、それを診療に活かすことを評価する【電子的保健医療情報活用加算】(初診料に7点、再診料に4点、外来診療料に4点を、それぞれ月1回に限り上乗せ可)が新設されています(関連記事はこちら)。過去の診療情報参照を許可することで「質の高い医療」を受けられる点に着目した加算です(現時点では薬剤、特定健診だが、この9月(2022年9月)には医学管理や画像診断などにも拡大され、来年(2023年)5月には手術情報にも拡大、関連記事はこちら)。

なお、情報取得困難な場合、他医療機関から情報提供を受けた場合には、2024年3月末までに限り「3点」を取得できる経過措置も設けられ、4月28日に示された疑義解釈その7では、「電子資格確認を行った結果、患者の診療情報等が存在しない」ケースは、前者の「当該患者に係る診療情報等の取得が困難な場合」に該当することが明確にされています(関連記事はこちら)。

電子的保健医療情報活用加算



とこころで、この【電子的保健医療情報活用加算】については「施設基準(▼電子情報処理組織を使用した診療報酬請求を行っている▼健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認を行う体制を有している▼「オンライン資格確認等システムを通じて患者の薬剤情報・特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施できる体制を有している」ことを、院内に見やすい場所に掲示している—)を満たしていればよく、地方厚生(支)局への届け出は不要である」とされています。

この点に関連して疑義解釈では、「医療機関においてオンライン資格確認の導入が完了した場合、その他の算定要件を満たせば、導入日から当該加算を算定可能である」旨が明示されています(歯科、調剤も同様)。

なお「オンライン資格確認の導入完了」とは、▼顔認証付きカードリーダーシステムの導入▼オンライン資格確認等システムの運用準備—を整えたうえで、「オンライン資格確認の運用開始日入力」ページにアクセスし「運用開始日を入力する」ことを意味する点に留意が必要です(開始日入力の前提として社会保険診療報酬支払基金ポータルサイトへの登録が必須)。

オンライン資格確認等システムの導入完了には「運用開始日の登録」が必要(1)

オンライン資格確認等システムの導入完了には「運用開始日の登録」が必要(2)



Gem Medではオンラインによる改定セミナーも開催しております。是非、あわせてご活用ください。

【これまでの2022年度改定関連記事】
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