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【2022年度診療報酬改定答申16】安全性・有効性を確認した不妊治療技術を保険適用、生殖補助医療では年齢・回数制限

2022.2.24.(木)

Gem Medでは、2月9日の中央社会保険医療協議会・総会でなされた2022年度次期診療報酬改定に関する答申内容を順次お伝えしています(急性期入院医療に関する記事はこちら、高度急性期入院医療に関する記事はこちら、地域包括ケア病棟に関する記事はこちら、回復期リハビリ病棟に関する記事はこちら、医療従事者の働き方改革に関する記事はこちら、受診時定額負担等に関する記事はこちら、かかりつけ医機能に関する記事はこちら、感染症対策に関する記事はこちら、慢性期入院医療に関する記事はこちら、在宅医療に関する記事はこちら、訪問看護に関する記事はこちら、がん対策サポートに関する記事はこちら、適正化・効率化に関する記事はこちら、オンライン診療等に関する記事はこちら、小児医療・周産期医療に関する記事はこちら)。

●2022年度診療報酬関係の資料(告示内容等)はこちら(中医協資料)

本稿では「不妊治療の保険適用」に焦点を合わせます。

不妊治療技術は、大きく▼男性の精管閉塞や女性の卵管癒着やホルモン異常などの治療技術は保険適用が従前より進められてきている▼体外受精、顕微授精、顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)などの夫婦間の治療については「公費での助成」(特定治療支援事業)が行われている―などの区分けがなされています。

この点、菅義偉前内閣総理大臣、安倍晋三元首相は「少子化対策の一環として不妊治療の保険適用を強力に進める」方針を打ち出し、中医協において「どういった技術を保険適用とするのか」「保険診療で不妊治療を実施する場合の留意点をどう考えるのか」などの具体的な議論を進めてきました。

ベースとなるのは「不妊症という疾病の治療について保険適用する」という考え方です。健康保険法等で「療養の給付」対象となるのは「傷病」に限定される点を踏まえたものです。

【日本産科婦人科学会による「不妊症」の定義】
▼生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある期間(一般的に1年)避妊すること無く性交渉を行っているにもかかわらず、妊娠の成立を見ない場合を不妊と言い、妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合
▼明らかな不妊原因が存在する場合は不妊の期間にかかわらず不妊症として差し支えない

不妊症の定義(中医協総会(2)1 211117)



この基本的な考え方を踏まえ、関係学会による「個別治療技術の推奨度」に沿って保険適用すべきか否かを考えていくこととなりました。

▼推奨度A(強く推奨される)・B(推奨される)の医療技術(男性不妊治療を含む)は原則として保険適用する(PGT(着床前診断、「流産しやすい胚」を避け「流産しにくい胚」を選び妊娠率の成功率アップを目指すための診断)については、学会での審議状況(2022年1月に新たな見解が示される見込み)などを踏まえて別途検討する)

▼推奨度C(考慮される)の医療技術に原則として保険適用外とする。ただし、医療機関からの申請があった技術は、順次、先進医療として実施することについて審議を進める。が進められています



不妊治療の保険適用には「安全性・有効性を確認した技術が保険適用され、医療の水準が向上する」という大きなメリットがありますが、患者や現場からは「公費助成の対象となっていた技術が保険適用されず、患者負担が増加するケースも少なくない」などのデメリットを指摘する声もあります(この点を踏まえた一定の公費補助がなされている、関連記事はこちら)。今後の運用状況、患者・医療現場の声などを勘案しながら制度の改善を模索していくことが重要でしょう。

タイミング法や人工授精などの一般不妊治療を保険適用

2022年度改定では、大きく(1)一般不妊治療(2)生殖補助医療(3)男性不妊治療―の3項目について保険適用が行われました。今回、保険適用されなかった技術を用いる場合、原則は「一連の治療がすべて保険外となり全額自己負担する」ことになりますが、学会等からの要望を踏まえて「先進医療(保険診療と保険外診療との併用を可能とする)としての検討を行う」こととなっています。



まず(1)の一般不妊治療とは、例えば▼タイミング法(排卵日に合わせた性交の指導など)▼人工授精(排卵タイミングにわせた精製精子注入など)―をさします。卵子・精子の処理等を体外で行う技術である「生殖補助医療」は(2)で見ます。

不妊治療の内容(医療保険部会(2)2 201014)



不妊症と診断されたカップル(婚姻関係までは問わない)に対し、一般不妊治療に課する計画的な指導を行うことを3か月に1回、【一般不妊治療管理料】(250点)として評価します。

また不妊症患者に対し人工授精を行った場合には、【人工授精】(1820点)の算定が可能です。

いずれの点数についても、産科、産婦人科、婦人科、泌尿器科のいずれかを標榜し、「産科、婦人科、産婦人科の経験が合計で5年以上、または泌尿器科経験5年以上の常勤医師を1名以上配置する」「不妊症患者の診療を年間20例以上実施する」「(後述する)生殖補助医療管理料の届け出、または届け出医療機関との連携」などの施設基準を満たす医療機関でのみ取得が可能です。

採卵→体外受精→胚培養→母体への移植―という一連の生殖補助医療技術を保険適用

(2)の生殖補助医療は、「卵子と精子」「胚(受精済)」について体外で処置を行い、母体に戻すなどの治療技術全般を指し、このうち上術のように「学会が推奨する」技術について保険適用が行われ、例えば次のような新点数が創設されました。「採卵→体外受精→胚の培養→移植」という技術を個別に評価するとともに、一連の生殖補助医療を総合的に管理する点数を設けています。

【一連の生殖補助医療の管理】
▽生殖補助医療管理料(生殖補助医療の実施に当たり、必要な医学的管理・療養上の指導を行うことを評価、言わば後述していく各生殖補助医療を実施するにあたって、総合的な管理を行うことを評価するもの)

【採卵】
▽抗ミュラー管ホルモン(AMH)(不妊症患者に対し卵巣刺激のための薬剤投与量を判断するための検査を評価する)
▽採卵術(不妊症患者から卵子を採取する技術を評価する)

【受精】
▽体外受精・顕微授精管理料(母体から採取した卵子について、体外で受精させる技術を評価する)

【胚の培養】
▽受精卵・胚培養管理料(体外受精した卵子等を培養する魏獣を評価する)

【凍結保存】
▽胚凍結保存管理料(体外受精した初期胚などを、凍結保存・融解する技術を評価する)

【移植】
▽胚移植術(体外受精した胚や、融解した胚を母体に移植する技術を評価する)

不妊治療技術と生殖医療ガイドラインにおける推奨度の全体像(中医協総会(2)2 211117)



各点数の概要を眺めてみましょう。

まず総合的な治療管理を評価する【生殖補助医療管理料】は、治療計画を作成し、不妊症カップルの同意を得て計画的に生殖補助医療を実施する場合に、総合的な管理を評価するものです。

上述した一般不妊治療管理料の基準を満たすとともに、▼配偶子・胚を管理する責任者を1名以上配置する▼配偶子・胚の取り違え防止体制を敷く▼日本産科婦人科学会の「体外受精・胚移植に関する登録施設」であり、同学会の症例登録システムにデータ入力を行う▼時間外・夜間救急体制を整備する(連携対応可)▼出産にかかる経過を把握する体制を敷く▼不妊症医療機関の情報提供事業に協力する▼前年度の治療実績などを届け出る―などの施設基準を満たす医療機関では【生殖補助医療管理料2】(月に1回250点)を算定できます。

さらに、これら基準を満たしたうえで、▼患者からの相談に対応する専任担当者(看護師や公認心理師など)を配置する▼保健医療・福祉サービスと連携調整担当者を配置する―などの上乗せ基準を満たす医療機関では【生殖補助医療管理料1】(月に1回300点)の算定が可能です。



生殖補助医療のスタートとなる「採卵」(母体の卵巣を刺激し、卵子を採取する)については、「3200点」のベース点数が設定されたほか、採取卵子の数に応じ▼1個:2400点▼2―5個:3600点▼6-9個:5500点▼10個以上:7200点―という加算が設けられました。排卵誘発剤を用いた場合には、当該薬剤料は別に算定が可能です。



採取された卵子を、カップルの精子を受精させる体外受精・顕微授精については、体外受精では「4200点」のベース点数が、顕微授精では個数に応じて▼1個:4800点▼2―5個:6800点▼6-9個:1万点▼10個以上:1万2800点―のベース点数が設定されました。両者を同時に実施した場合には、「体外受精」の2分の1点数(2100点)と「顕微授精」の点数(1個であれば4800点)の合算点数(1個であれば6900点)を算定することになります。

また、精巣内精子採卵術(後述)で採取された精子を用いる場合には【採卵精子調整加算】(5000点)、卵子活性処理(受精卵作成の成功率を高める)を行う場合には【卵子調整加算】(1000点)が上乗せされます。



体外受精・顕微授精で作成された受精卵を培養する場合には、【受精卵・胚培養管理料】として▼1個:4500点▼2―5個:6000点▼6-9個:8400点▼10個以上:1万500点―が算定できます。

その際、胚盤胞(胎盤と胎児になる部分が確認できる状態になるまで成長した胚、妊娠の確立が高くなる)の作成を目的に管理を行う場合には、▼1個:1500点▼2―5個:2000点▼6-9個:2500点▼10個以上:3000点―が上乗せされます。



作成された胚は、「すぐに母体に移植する」ケースと「凍結保存し、別の機会に融解して母体に移植する」ケースとがあります。この胚凍結・融解などを行う技術について次のように点数設定がなされました。

(新)胚凍結保存管理料
1 胚凍結保存管理料
(導入時、胚凍結保存の開始時に算定)
イ 1個:5000点
ロ 2―5個:7000点
ハ 6-9個:1万200点
ニ 10個以上:1万3000点
2 胚凍結保存維持管理利用:1年に1回3500点(凍結保存をしてから1年を経過するごとに、3年度を限度として算定)



胚を母体に移植する技術については、「新鮮胚」を用いる場合には7500点、「凍結胚・融解胚」を用いる場合には1万2000点の算定が認められます。

さらに、▼アシステッドハッチング(胚の着床を補助するため、胚を包んでいる透明帯の一部を薄くしたり切開したりする技術)を行った場合の加算:1000点▼高濃度ヒアルロン酸含有培養液を用いた前処理(着床率が高まる)を行った場合の加算:1000点―が設けられています。

なお、限られた保険診療財源を有効に配分するため、肺移植術などでは年齢・回数の制限が設けられています。現在の助成事業(特定治療支援事業)に倣い、次のような制限となっています。

▼治療開始日の年齢が40歳未満:患者1人につき6回まで
▼同じく40歳以上43歳未満:同じく3回まで

精巣内精子採取術などを保険適用

(3)の男性不妊治療としては、上述の生殖補助医療をサポートする次の技術が保険適用されます。

精巣内精子採取術 1 単純なもの 1万2400点、2 顕微鏡を用いたもの 2万4600点

Y染色体微小欠失検査 3770点(精巣内精子採取術の適否を判断するための検査)



なおGem Medではオンラインによる改定セミナーも開催しております。是非、あわせてご活用ください。



【これまでの2022年度改定関連記事】
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コロナ禍の医療現場負担考え小幅改定とすべきか、2025年度の地域医療構想実現に向け大胆な改定とすべきか―中医協総会(1)
1泊2日手術等の「短手2」、4泊5日手術等の「短手3」、診療実態にマッチした報酬へ―入院医療分科会(3)
【経過措置】の療養病棟、あたかも「ミニ回リハ」のような使われ方だが、それは好ましいのか―入院医療分科会(2)
入退院支援加算等の最大のハードルは「専従の看護師等確保」、人材確保が進まない背景・理由も勘案を―入院医療分科会(1)

後発品の信頼性が低下する中でどう使用促進を図るべきか、不妊治療技術ごとに保険適用を検討―中医協総会(2)
医療従事者の働き方改革、地域医療体制確保加算の効果など検証しながら、診療報酬でのサポートを推進―中医協総会(1)
かかりつけ薬剤師機能、ポリファーマシー対策などを調剤報酬でどうサポートすべきか―中医協総会
回リハ病棟でのADL評価が不適切に行われていないか、心臓リハの実施推進策を検討してはどうか―入院医療分科会(2)
入院料減額されても、なお「自院の急性期後患者」受け入れ機能に偏る地域包括ケア病棟が少なくない―入院医療分科会(1)
かかりつけ医機能・外来機能分化を進めるための診療報酬、初診からのオンライン診療の評価などを検討―中医協総会(2)
感染症対応とる医療機関を広範に支援する【感染対策実施加算】を恒久化すべきか―中医協総会(1)
2020年度改定で設けた看護必要度IとIIの基準値の差は妥当、「心電図モニター管理」を含め患者像を明確に―入院医療分科会(2)
急性期入院の評価指標、看護必要度に加え「救急搬送や手術の件数」「ICU設置」等を組み合わせてはどうか―入院医療分科会(1)
2022年度診療報酬改定に向け「入院医療改革」で早くも舌戦、「看護必要度」などどう考えるか―中医協総会
大病院の地ケアでpost acute受入特化は是正されているか、回リハ病棟で効果的リハ提供進む―入院医療分科会(3)
適切なDPC制度に向け、著しく「医療資源投入量が少ない」「自院の他病棟への転棟が多い」病院からヒアリング―入院医療分科会(2)
看護必要度II病院で重症患者割合が増、コロナ対応病院よりも「未対応」病院で重症患者割合増が顕著―入院医療分科会(1)
不妊治療の方法・費用に大きなバラつき、学会ガイドライン踏まえ「保険適用すべき不妊治療技術」議論へ―中医協総会(3)
2022年度診療報酬改定論議、コロナ感染症の影響など見据え7・8月に論点整理―中医協総会(1)

医療部会も2022年度改定基本方針案を了承、12月10日の中医協に報告されるが正式諮問は年明けに—社保審・医療部会(1)
2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)

中小規模医療機関の標準準拠電子カルテ導入、基金や診療報酬活用して支援へ―医療情報ネットワーク基盤WG