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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

【2022年度診療報酬改定答申3】大規模病院の地域包括ケア病棟にも在宅患者受入れ促すため、飴(加算)と鞭(減算)

2022.2.9.(水)

2月9日の中央社会保険医療協議会・総会で、2022年度次期診療報酬改定の新点数・新施設基準などの大枠が示されました(急性期入院医療に関する記事はこちら、高度急性期入院医療に関する記事はこちら)。

●2022年度診療報酬関係の資料(告示内容等)はこちら(中医協資料)

本稿では、非常に厳しい内容が盛り込まれた「地域包括ケア病棟入院料・地域包括ケア入院医療管理料」(以下、地域包括ケア病棟等)に焦点を合わせます。2022年度の今回改定では、「急性期一般病棟」「回復期リハビリテーション病棟」や「療養病棟」「障害者施設」「特殊疾患病棟」なども含めて、「それぞれの病棟で期待される機能」を十分に果たしていくことを強いメッセージとして打ち出しています。

このため、地域包括ケア病棟等の創設時(2014年度改定)から求められている(A)急性期後患者(post acute患者)の受け入れ(B)在宅療養患者等の急性増悪時(sub acute患者)の受け入れC)入棟患者の在宅復帰促進—の3機能を一定のバランスを確保して果たしていれば、2022年度改定は恐れるに足りません。しかし機能が偏っている場合には、厳しい措置(減算)の対象となります。単に「急性期一般1(従前の7対1)を維持するために地域包括ケア病棟等に転換する」という時代はすでに終わりを告げており、「自院において、さらに地域において、自院の地域包括ケア病棟等がどういった機能を果たしていくべきか」を考える時期に来ていると言えます。

post acute受け入れに偏った大規模病院の地域包括ケア病棟等に非常に厳しい改定内容

前述したように、機能に偏りのある地域包括ケア病棟等にとって「非常に厳しい内容」となっています。

(1)地域包括ケア1・2の在宅復帰率要件を、現在の「70%以上」から「72.5%以上」に厳格化する

(2)地域包括ケア3・4にも、新たに在宅復帰率要件を新設(70%以上)し、クリアできないで場合には入院料を「マイナス10%」に減算する

(3)地域包括ケア2・4における「自院の一般病棟から転棟した患者割合」要件について、▼現在の「60%%未満」は維持する▼対象を現在の「許可病床数400床以上病院」から「許可病床数200床以上」に拡大する▼クリアできない場合の減算幅「マイナス10%」を「マイナス15%」に厳格化する

(4)地域包括ケア1・3において、実績要件を次のように厳格化する
▼自宅等から入院した患者割合:「15%以上」→「20%以上」(10床未満の管理料:「3か月で6人以上」→「3か月で8人以上」)
▼自宅等からの緊急患者受け入れ数:「3か月で6人以上」→「3か月で9人以上」
▼在宅医療等の実績:「退院時共同指導料2の算定回数が直近3か月で6回以上」→「退院時共同指導料2および外来在宅共同指導料1の算定回数が直近3か月で6回以上」(ほかの項目、6項目中2項目以上の要件では見直しなし)

(5)地域包括ケア2・4において、新たに次のような実績要件を設け「いずれか1つ以上のクリア」を求める。クリアできない場合は入院料を「マイナス10%」に減算する
▼自宅等から入院した患者割合:「20%以上」
▼自宅等からの緊急患者受け入れ数:「3か月で9人以上」
▼在宅医療等の実績をいずれか1つ
・在宅患者訪問診療料(I)および(II)を直近3か月間で30回以上算定
・在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料または精神科訪問看護・指導料Iを直近3か月間で60回以上算定
・同一・隣接敷地内の訪問看護ステーションで、訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費を直近3か月間で300回以上算定
・在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料を直近3か月間で30回以上算定
・同一・隣接敷地内の事業所が、訪問介護、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーションの提供実績あり
・退院時共同指導料2および外来在宅共同指導料1を直近3か月間で6回以上算定

(6)許可病床数100床以上の病院における地域包括ケア1・2では、【入退院支援加算1】の取得を義務化し、クリアできない場合には入院料を「マイナス10%」に減算する

(7)「一般病床の地域包括ケア病棟等」について▼2次救急医療機関▼救急告示病院―のいずれかであること、ただし、許可病床数200床未満病院の場合には▼救急外来の保有▼24時間救急医療提供―のいずれかを要件化する

(8)急性期病棟からの患者受け入れを評価する【急性期患者支援病床初期加算】(14日まで1日につき150点)、増悪した在宅患者の受け入れを評価する【在宅患者支援病床初期加算】(同じく300点)を次のように組み替え・細分化する
●許可病床数400床以上病院の地域包括ケア病棟等で「急性期病棟」からの患者を受け入れた場合
▽「自院等の一般病棟」からの患者を受け入れた場合の初期加算:50点(現在からマイナス100点)
▽「他院の一般病棟」からの患者を受け入れた場合の初期加算:150点(現在と同じ)
●許可病床数400床未満病院の地域包括ケア病棟等で「急性期病棟」からの患者を受け入れた場合
▽「自院等の一般病棟」からの患者を受け入れた場合の初期加算:125点(現在からマイナス25点)
▽「他院の一般病棟」からの患者を受け入れた場合の初期加算:250点(現在からプラス100点)
●老人保健施設からの患者を受け入れた場合の初期加算:500点(現在からプラス200点)
●自宅・その他施設からの患者を受け入れた場合の初期加算:400点(現在からプラス100点)

(9)「療養病床の地域包括ケア病棟等」では入院料を「マイナス5%」に減算するが、▼自宅等からの入院患者受け入れ割合が6割以上▼自宅からの緊急入院患者の受け入れ数が前3か月で30人以上▼救急医療体制を整備―のいずれかに該当する場合には減算を行わない

在宅復帰機能の強化を求め、脆弱な場合には入院料減算のペナルティ

まず、(1)(2)は(C)の在宅復帰支援機能を高めることを求めるものです。主に大規模病院で取得する地域包括ケア2・4では、クリアできない場合に入院料が減算(マイナス10%)される点に留意が必要です。

また(6)も「(C)の在宅復帰機能強化」を目指すものと言えます。ここでもクリアできない地域包括1・2には入院料の減算(マイナス10%)が行われる点に気を付けなければなりません。

post acute受け入れに偏る病棟へのペナルティ、対象を拡大し、減産幅も厳しく設定

また(3)は、従前より問題視されてる「(A)のpost acute受け入れ機能に偏った地域包括ケア病棟等」へのペナルティを強化するものです。対象を「200床以上病院」に拡大、つまり地域包括ケア2・4すべてがターゲットとなるとともに、減算幅が厳しくなっています。一部の病院では「急性期一般1を維持するために減算覚悟で『急性期一般1→地域包括ケア病棟等への転棟』を進めている」と思われます(急性期一般1病棟で看護必要度の基準を満たさなくなった患者を地域包括ケア病棟等に転棟させている)。この取り組み事態は否定されるものではありませんが、あまりに、この取り組みに偏りすぎる病棟が一部にあることが問題視されています。

ペナルティ規定が厳しくなったことで「急性期一般1の維持」と「地域包括ケア病棟等での減算受け入れ」とのバランスを十分に見極めて、地域包括ケア病棟等の運用を考えていく必要があります。

大規模病院の地域包括ケア病棟等でも「在宅患者の急変時受け入れ」機能を持て

他方、(4)(5)は「(B)の在宅患者受け入れ機能を高める」ことを狙うものです。ここで留意すべきは、「(A)機能に偏り、(B)機能を十分に果たしていない200床以上病院の地域包括ケア病棟等」では、(3)のペナルティ(減算)と(5)のペナルティ(減算)との両方に該当してしまいかねないという点です。減算が併用されるのか否か、今後の告示・通知等に十分に留意する必要があります。

また(7)(9)も「(B)の在宅患者受け入れ機能を高める」ことを狙うものと言えるでしょう(在宅患者等が急変し、救急搬送した場合に受け入れる)。

さらに(8)は、(A)のpost acute患者受け入れの評価を下げ、(B)の在宅患者受け入れの評価を上げるというメリハリをつけ、地域包括ケア病棟等に「できるだけ多くの在宅患者を受け入れてほしい」というメッセージを与えるものと言えるでしょう。



加算という「飴」と減算という「鞭」を巧みに織り込んだ改定内容です。上述した「大規模の急性期病院に設置された地域包括ケア病棟等」にとっては、非常に厳しい改定内容と言え、今後、各病院がどのように地域包括ケア病棟等を運営していくのか(減算覚悟でpost acute受け入れを継続するのか、違う方向を目指すのか、など)注目していく必要があります。

【更新履歴】初期加算の記述の中で「許可病床数400床以上・未満」の記述に誤りがありました(以上・未満で切り分けて書くべきとこと、いずれも以上となっておりました)。お詫びして訂正いたします。本文は修正済です。



なおGem Medでは改定セミナー動画も準備しております。是非、あわせてご活用ください。



【これまでの2022年度改定関連記事】
◆議論の整理(改定項目一覧)に関する記事はこちら
◆入院医療の全体に関する記事はこちら(入院医療分科会の最終とりまとめ)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
◆急性期入院医療に関する記事はこちら(答申)こちら(新指標5ほか)こちら(看護必要度8)こちら(看護必要度7)こちら(看護必要度6)こちら(新指標4)こちら(新指標3、重症患者対応)こちら(看護必要度5)こちら(看護必要度4)こちら(看護必要度3)こちら(新入院指標2)こちら(看護必要度2)こちら(看護必要度1)こちら(新入院指標1)
◆DPCに関する記事はこちらこちらこちら
◆ICU等に関する記事はこちら<(答申)/a>とこちらこちらこちらこちらこちらこちら
◆地域包括ケア病棟に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちら
◆回復期リハビリテーション病棟に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちら
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◆入退院支援の促進などに関する記事はこちらこちら
◆救急医療管理加算に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆短期滞在手術等基本料に関する記事はこちらこちら
◆外来医療に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちら
◆在宅医療・訪問看護に関する記事はこちらこちら(訪問看護)こちら(小児在宅等)こちら(訪問看護)こちらこちら
◆オンライン診療に関する記事はこちらこちら
◆新型コロナウイルス感染症を含めた感染症対策に関する記事はこちらこちらこちら
◆医療従事者の働き方改革サポートに関する記事はこちらこちらこちら
◆がん対策サポートに関する記事はこちらこちらこちら
◆難病・アレルギー疾患対策サポートに関する記事はこちらこちら
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◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちら
◆医療経済実態調査(第23回調査)結果に関する記事はこちら
◆消費税対応の是非に関する記事はこちら
◆薬価・材料価格調査に関する記事はこちら
◆改定率に関する記事はこちら
◆答申附帯意見に関する記事はこちら
◆基本方針策定論議に関する記事はこちら(医療部会5)こちら(医療保険部会5)こちら(医療保険部会4)こちら(医療部会4)こちら(医療部会3)こちら(医療保険部会3)こちら(医療部会2)こちら(医療保険部会2)こちら(医療部会1)こちら(医療保険部会1)
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