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【2022年度診療報酬改定答申11】訪問看護でも『量の拡大』と「質の向上」目指す、専門性の高い看護師への期待高まる

2022.2.15.(火)

Gem Medでは、2月9日の中央社会保険医療協議会・総会でなされた2022年度次期診療報酬改定に関する答申内容を順次お伝えしています(急性期入院医療に関する記事はこちら、高度急性期入院医療に関する記事はこちら、地域包括ケア病棟に関する記事はこちら、回復期リハビリ病棟に関する記事はこちら、医療従事者の働き方改革に関する記事はこちら、受診時定額負担等に関する記事はこちら、かかりつけ医機能に関する記事はこちら、感染症対策に関する記事はこちら、慢性期入院医療に関する記事はこちら、在宅医療に関する記事はこちら)。

●2022年度診療報酬関係の資料(告示内容等)はこちら(中医協資料)

本稿では「訪問看護」に焦点を合わせます。

訪問看護は、医療保険と介護保険の双方から給付される数少ないサービスで、今後の高齢化が進む中では、「地域包括ケアシステム」の要になると期待されています((要介護度が高くなっても可能な限り住み慣れた地域で生活できるよう、地域において▼医療▼介護▼予防▼住まい▼生活支援―の各サービスを整備し、それを有機的に結合する体制)。あわせて、現下の新型コロナウイルス感染症が蔓延する中で、軽症者・無症状者が自宅・宿泊療養する際の「健康観察」の担い手として、多くの注目を集めています。

在宅医療の充実とあわせて、「訪問看護」についても質と量の拡大が極めて重要です。

2つの訪問看護ステーションが連携して24時間対応を行う体制の評価を拡大

訪問看護に関しては、次のように大きな見直し項目が数多く並んでいます。在宅医療と同様に「量の拡充」と「質の向上」の両立を目指すとともに「不合理の是正」にも力を入れた改定内容となっています。

(1)「業務継続計画(BCP)を策定し、自治体や医療関係団体等が整備する地域連携体制に参画している場合」も、複数の訪問看護ステーションによる連携で【24時間対応体制加算】の算定を可能とする

(2)訪問看護事業者に対して「業務継続・早期の業務再開に向けた計画」の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務付ける

(3)機能強化型訪問看護療養費について次のような見直しを行う
▽機能強化1・2について「他の訪問看護ステーションや地域住民等に対する研修や相談の対応実績がある」ことを必須要件とし、評価を引き上げる(機能強化1を1万2530点から1万2830円に、機能強化2を9500円から9800円に引き上げ)
▽機能強化1-3において「在宅看護等に係る専門の研修を受けた看護師の配置」を望ましい要件に据える

(4)訪問看護情報提供療養費について次のような見直しを行う
▽療養費1における情報提供先に「指定特定相談支援事業者」「指定障害児相談支援事業者」を追加し、対象利用者の年齢を現在の「15歳未満」から「18歳未満」に引き上げる(対象者を拡大する)
▽療養費2について、情報提供先に「高等学校等」を追加し、対象となる利用者の年齢を引き上げる(現在の「15歳未満」→「18歳未満」に引き上げ)とともに、「当該利用者に対する医療的ケアの実施方法等を変更した月」でも算定可能とする

(5)訪問看護指示書に「理学療法士等が訪問看護の一環として実施するリハビリテーションの時間・実施頻度等」を記載することを求める

(6)専門性の高い看護師による同行訪問について「褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師」として「特定行為研修修了者(創傷管理関連)」を追加する

(7)専門の研修を受けた看護師(▼緩和ケア、褥瘡ケアまた人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師▼特定行為研修を修了した看護師―)が、専門的な管理を含む訪問看護を実施する場合に、【訪問看護療養費】【在宅患者訪問看護・指導料】【同一建物居住者訪問看護・指導料】において、【専門管理加算】(1か月に1回、2500円)として新たな評価を行う

(8)訪問看護ステーション等の看護師に対し、医師が特定行為の実施に係る手順書を交付することを【手順書加算】(【訪問看護指示料】の加算、6か月に1回、150点)として新たな評価を行う

(9)【訪問看護ターミナルケア療養費】は、現在「死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護提供を行う」こととされているが、「退院日の退院支援指導」を「訪問看護提供」と見做して要件の充足を判断可能とする

(10)【複数名訪問看護加算】(複数名訪問看護・指導加算)における「看護補助者が同行する場合の加算」について、「看護師等が同行する場合」も算定可能とする

(11)退院日に看護師等が長時間の退院支援指導を行うことを、【訪問看護管理療養】の【退院支援指導加算】の1類型(8400円)として新たに評価する

(12)訪問看護において「同一建物内の利用者の人数に応じた評価区分を設けている加算」(難病等複数回訪問加算など)について、同じ金額の評価区分を統合する

(13)「ICTを活用した在宅での看取り」に関する研修を受けた看護師が、医師の遠隔死亡診断を補助した場合、訪問看護ターミナル療養費に新加算【遠隔死亡診断補助加算】(1500点)を設けて評価する



まず(1)では訪問看護管理療養費の【24時間対応体制加算】(2つの訪問看護ステーションが連携し、24時間対応体制加算を算定することを認める)について、次のような要件見直しを行うものです。「2つのステーションの連携による24時間対応体制」が地域で敷かれ、訪問看護提供体制が充実(量の拡大)していくことが期待されます。

(現在)
次のいずれかの場合
▼特別地域(離島など)に所在する訪問看護ステーション
▼医療を提供しているが、医療資源の少ない地域に所在する訪問看護ステーション

(見直し後)
次の場合
▼特別地域(離島など)に所在する訪問看護ステーション
▼医療を提供しているが、医療資源の少ない地域に所在する訪問看護ステーション
▼(新)BCPを策定したうえで、「自然災害等の発生に備えた地域の相互支援ネットワーク」に参画する訪問看護ステーション
「自然災害等の発生に備えた地域の相互支援ネットワーク」の要件(すべて満たす)
・都道府県、市町村または医療関係団体等が主催する事業である
・自然災害や感染症等の発生により業務継続が困難な事態を想定して整備された事業である
・都道府県、市町村または医療関係団体等が当該事業の調整等を行う事務局を設置し、当該事業に参画する訪問看護ステーション等の連絡先を管理している



また(2)は介護報酬と同様に「BCP策定」などを義務付け、災害や災害級の感染症等発生時にも「訪問看護サービスの提供」継続が可能な体制の構築を目指すものです。

機能強化型訪問看護ステーション、さらなる機能強化を期待

(3)は、24時間対応・重症者対応など、まさに「地域包括ケアシステムの要」と期待される機能強化型訪問看護ステーションについて、さらなる体制の充実(質の向上)を求めるものです。1事業所の充実にとどまらず、「地域の訪問看護提供のリーダー、牽引者」となることが期待されます。

また、(4)では、医学・医療の進歩により「医療的ケア児の予後が改善している」点を踏まえ、より高年齢(18歳まで)の対象者について「訪問看護ステーションから、地域関係者への情報提供」を評価するものです。医療的ケア児の日常生活や学校生活などで留意すべき点の情報提供が充実することで、生活の質そのものの向上が期待されます。

他方、(5)では、かねてより問題となっている「リハビリ専門職による訪問看護」の実態をさらに明確にすることを目指します。訪問看護ステーションでは「24時間対応、重度者への対応」を強化することが強く求められていますが、一部の事業所では「日中に、軽度者を対象にリハビリサービスを行っており、中には『訪問リハビリテーション』を名乗る」ように本来の趣旨から外れた動きをとっています。診療報酬・介護報酬による是正対応が続いており、今後の動向に注目していく必要があります。

専門性の高い看護師の評価を充実し、訪問看護のさらなる質向上を目指す

また(6)から(8)も、訪問看護の「さらなる質向上」を目指す見直しです。

(6)では「特定行為研修(総省管理関連)を修了した看護師」を、「褥瘡ケアにかかる専門研修を修了した看護師」に含め、同行訪問の対象に追加します。特定行為研修修了者が、質の高い訪問看護提供の一翼を担うとともに、一般の訪問看護担当看護師に知識・技術を伝授することにも期待が集まります。

また(7)は「専門の研修を受けた看護師」の単独訪問を新加算【専門管理加算】(1か月に1回2500円)で評価するものです。加算の算定対象は、次のように整理されました。
▽緩和ケアにかかる専門研修を受けた看護師が「悪性腫瘍の鎮痛療法、化学療法を行っている患者」に計画的な管理を行った場合
▽褥瘡ケアにかかる専門研修を受けた看護師が「真皮を越える褥瘡の状態にある利用者」に計画的な管理を行った場合
▽人工肛門ケア、人工膀胱ケアにかかる専門研修を受けた看護師が「人工肛門もしくは人工膀胱を造設し、管理が困難な利用者」に計画的な管理を行った場合
▽特定行為研修を終了した看護師が「手順書加算(後述)を算定する利用者」に計画的な管理を行った場合

さらに(8)は、医師が、患者の同意を得て、訪問看護ステーション等の特定行為研修修了看護師に対し「特定行為の実施」にかかる手順書を交付することを評価するものです(【手順書加算】、6か月に1回150点)。

具体的には、▼気管カニューレの交換▼胃瘻カテーテルもしくは腸瘻カテーテル、または胃瘻ボタンの交換▼膀胱瘻カテーテルの交換▼褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去▼創傷に対する陰圧閉鎖療法▼持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整▼脱水症状に対する輸液による補正—の各特定行為が対象となります。

退院当日の訪問看護を「訪問看護ターミナルケア療養費」でもカウントし、不合理を是正

(9)から(13)は、訪問看護を提供する現場で「不合理ではないか」と思われる点の課題を目指すものです。

まず(9)の【訪問看護ターミナルケア療養費】については、「死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護提供を行う」ことが算定要件となっています。しかし、例えば▼退院日の訪問(退院支援指導加算のみ算定可、訪問看護基本療養費を算定できず)▼退院翌日の訪問(訪問看護基本療養費を算定可)—という2回の訪問では、「2回の訪問看護基本療養費算定がなされていない」ために【訪問看護ターミナルケア療養費】の算定ができません。

この点、改定後には「退院日に退院指導加算のみを算定した場合でも『訪問看護を提供した』と見做す」ことを認め、上記の例でも訪問看護ターミナル療養費の算定が可能となります。



また(11)は、上述した退院日の訪問看護を評価する【訪問看護管理療養】(翌日以降の初回の訪問看護に6000円を上乗せする)に関して、「長時間の訪問看護を要する利用者」に対し、実際に長時間にわたる療養上必要な指導を行う場合の評価(通常は6000円上乗せのところ「8400点」を上乗せする)を行うものです。

「長時間の訪問看護を要する利用者」
▼15歳未満の超重症児または準超重症児
▼特掲診療料の施設基準「別表8」に掲げる者(例えば、在宅悪性腫瘍患者指導管理・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態など)
▼特別訪問看護指示書または精神科特別訪問看護指示書にかかる指定訪問看護を受けている者



他方、(13)は、いわゆる「D to P with N」の一形態と言える「医師がオンラインで死亡診断を行う際、患者の傍らには訪問看護師がおり、医師の指示を受けて死亡診断を行う」ケースについて評価を新設するものです(【遠隔死亡診断補助加算】(1500点))。



なおGem Medではオンラインによる改定セミナーも開催しております。是非、あわせてご活用ください。



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入院料減額されても、なお「自院の急性期後患者」受け入れ機能に偏る地域包括ケア病棟が少なくない―入院医療分科会(1)
かかりつけ医機能・外来機能分化を進めるための診療報酬、初診からのオンライン診療の評価などを検討―中医協総会(2)
感染症対応とる医療機関を広範に支援する【感染対策実施加算】を恒久化すべきか―中医協総会(1)
2020年度改定で設けた看護必要度IとIIの基準値の差は妥当、「心電図モニター管理」を含め患者像を明確に―入院医療分科会(2)
急性期入院の評価指標、看護必要度に加え「救急搬送や手術の件数」「ICU設置」等を組み合わせてはどうか―入院医療分科会(1)
2022年度診療報酬改定に向け「入院医療改革」で早くも舌戦、「看護必要度」などどう考えるか―中医協総会
大病院の地ケアでpost acute受入特化は是正されているか、回リハ病棟で効果的リハ提供進む―入院医療分科会(3)
適切なDPC制度に向け、著しく「医療資源投入量が少ない」「自院の他病棟への転棟が多い」病院からヒアリング―入院医療分科会(2)
看護必要度II病院で重症患者割合が増、コロナ対応病院よりも「未対応」病院で重症患者割合増が顕著―入院医療分科会(1)
不妊治療の方法・費用に大きなバラつき、学会ガイドライン踏まえ「保険適用すべき不妊治療技術」議論へ―中医協総会(3)
2022年度診療報酬改定論議、コロナ感染症の影響など見据え7・8月に論点整理―中医協総会(1)

医療部会も2022年度改定基本方針案を了承、12月10日の中医協に報告されるが正式諮問は年明けに—社保審・医療部会(1)
2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)

中小規模医療機関の標準準拠電子カルテ導入、基金や診療報酬活用して支援へ―医療情報ネットワーク基盤WG