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病院ごとに「看護配置と患者数」などの関係を見て、看護職員処遇改善の診療報酬対応検討―入院外来医療分科会

2022.5.20.(金)

この10月(2022年10月)から「看護職員処遇改善を診療報酬で行う」こととなっており、中央社会保険医療協議会や診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院外来医療分科会)で制度設計論議が本格化しています。

これまでに「議論の前提となる最新データ(延べ患者数や看護職員数など)を収集する」「診療報酬対応では必ず『必要額とのズレ』が生じるが、それを最小限にする方向で検討を進める」などの方針が固められています。

5月19日の入院外来医療分科会では、最新データの前に「既存データを用いた分析」結果が厚生労働省から示され、これをもとに議論を行いました。病院によって看護師配置や患者数には大きなバラつきがあり、入院料別に見ても相当のバラつきがあります。今後、▼病院ごとの「看護師配置(例えば病床1床当たり看護師数など)と患者数(入院料算定回数)」との相関分析▼同じ入院料ごとに対応した場合の試算▼個別病院ごとに対応することの是非—などを検討していく方向を確認しています。

病院ごとに「看護配置状況」と「延べ患者数」との相関関係などを精査

この10月(2022年10月)から「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%(月額1万2000円)程度引き上げる診療報酬上の対応を行う」こととなっています。「病院が看護職員の処遇改善を行うために必要な額」(看護職員数×1万2000円)を、個々の病院に診療報酬で過不足なく行きわたるよう「どのような点数を設定すればよいか」を、データをもとに考えていくことになります。

現在、対象病院(救急医療管理加算を算定する、救急搬送件数が年200台以上の医療機関および三次救急を担う医療機関)について「直近の患者数(延べ入院患者数、新規入院患者数)や看護師数など」の調査が行われています(関連記事はこちらこちら)が、「既存データによる分析」も同時並行で行うこととなっています。

5月19日の入院外来医療分科会には、対象病院(同上)における▼入院料や初再診料の算定回数(2020年9月-2021年9月)▼病床数(2020年7月1日時点)▼病床稼働率(同)▼看護職員数(同)—についての分析結果が報告されました。入院料等の算定回数はNDB(National Data Base)やDPCのデータ、看護職員数などは2020年度病床報告のデータを用いています。そこからは次のように「病院ごとに、患者数(診療報酬の算定回数)や看護職員配置数などに極めて大きなバラつきがある」ことが再確認されました。入院料種別の差をなくすために「急性期一般1を届け出ている病院」を見てみましょう。

▽「病院全体の入院料算定」回数をみると、最大21万件超、最少2700件強、中央値8万2000件弱

急性期一般1病院(上段)における「全入院料算定回数」分布(入院外来医療分科会1 220519)



▽急性期一般1病棟の「病床稼働率」を見ると、最大114.8%、最小45.8%、中央値81.9%

急性期一般1病棟(上段)における「病床稼働率」分布(入院外来医療分科会2 220519)



▽急性期一般1病棟の「看護職員数」を見ると、最大43.5人、最小15.7人、中央値29.3人

急性期一般1病棟(上段)における「病棟看護職員数」分布(入院外来医療分科会3 220519)



▽急性期一般1病棟の「1床当たり看護職員数」(看護職員数÷ベッド数)を見ると、最大0.97人、最小0.36人、中央値0.66人

急性期一般1病棟(上段)における「1床当たり看護職員数」分布(入院外来医療分科会4 220519)



また、より差が少ないと思われる「7対1特定機能を届け出ている病院」の状況を見ると次のようになっています。

▽「病院全体の入院料算定」回数をみると、最大37万件超、最少11万件弱、中央値21万件強

特定機能7対1病院における「全入院料算定回数」分布(入院外来医療分科会5 220519)



▽特定機能7対1病棟の「病床稼働率」を見ると、最大109.5%、最小57.9%、中央値84.9%

特定機能7対1病棟における「病床稼働率」分布(入院外来医療分科会6 220519)



▽特定機能7対1病棟の「看護職員数」を見ると、最大42.0人、最小18.0人、中央値30.0人

特定機能7対1病棟における「病棟看護職員数」分布(入院外来医療分科会7 220519)



▽急性期一般1病棟の「1床当たり看護職員数」(看護職員数÷ベッド数)を見ると、最大0.98人、最小0.41人、中央値0.69人

特定機能7対1病棟における「1床当たり看護職員数」分布(入院外来医療分科会8 220519)



同じ入院料で見ても非常に大きなバラつきがあることが再確認されました。

ただし、病院や1病棟当たりの規模や病床利用率などを勘案した「看護師1人あたりの患者数」などを見た場合には「何らかの相関」が確認できる可能性があります。例えばA病院のa病棟では「50床、稼働率100%(延べ患者数は1500名)、看護師30名配置」、B病院のb病棟では「40床、稼働率70%(延べ患者数は840名)、看護師17名配置」、C病院のc病棟では「40床、稼働率80%(960名)、看護師19名配置」である場合、abcは一見、「看護師数も患者数もバラバラ」に見えますが、看護師1人当・1か月当たりの患者数は「50名」で同一になるのです。

仮に、例えば「全国で看護師1人・1か月あたりの患者数が50名である」との関係が明らかになれば、この場合には、「看護師1人につき1万2000円」が病院にわたるようにするには、「患者1人当たり240円」=「入院1日当たり24点」の加算を設定すればよいことになります。これは「診療報酬で過不足のない対応を行える」ことを意味します。

このため、まずNDB・DPCデータと病床機能報告データの突合(病院ごとのデータ紐付け)を行い、上記のような相関が見られるのかを今後検証していくことになりました。

「入院料を踏まえたグループ化・細分化」など行い、グループ内のバラつきを見ていく

しかし、このような相関が見られるかは不確かです。

例えばX病院のx病棟では「50床、稼働率100%(延べ患者数は1500名)、看護師20名配置」、Y病院のy病棟では「40床、稼働率70%(延べ患者数は840名)、看護師20名配置」、Z病院のz病棟では「40床、稼働率80%(960名)、看護師20名配置」である場合、看護師1人当・1か月当たりの患者数はx病棟では75名、y病棟では42名、z病棟では48名とバラつきが見られます。この場合に「看護師1人につき1万2000円」がわたるようにするには、xでは1日あたり「16点」、yでは同じく「29点」、zでは同じく「25点」が必要となり、「一律の点数設定」は不可能となります。

逆に、間をとって「25点」に一律点数を設定した場合、zには「看護師1人につき1万2000円」が渡りますが、xには過剰な点数支払い(「1人につき1万8750円」が渡ってしまう)となり、yでは不足(「1人につき1万500円」しか渡らない)することとなり、不公平・過不足が生じてしまいます。

この点については、▼「病院を入院料などでグループ化・細分化し過不足を最小化する」ことの検討を求める意見(牧野憲一委員:旭川赤十字病院院長・日本病院会常任理事、井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会常任理事)▼「個別病院対応」の検討を求める意見(猪口雄二委員:日本医師会副会長、中野惠委員:健康保険組合連合会参与、山本修一委員:地域医療機能推進機構理事長、小池創一委員:自治医科大学地域医療学センター地域医療政策部門教授)—が出ています。

前者は、上述xyzの例で言えば、例えば「差の小さいyとzを同じ群とし、xを別の群とする」といったイメージです。実際の病院データをもとに「差」が「許容できる範囲」まで小さくなるようにグルーピングを行うことで不公平感を最小限にする考えです。牧野委員は「まず入院料ごとの試算」を求めています。

また、後者は「グループ化・細分化でもバラつきは解消できない」としてx・y・zの各々に対応することを求めるものです。猪口委員は「バラつきというよりも『病院の特性』と考えられるのではないか。その観点からはDPCの機能評価係数IIのように『総報酬に個別病院ごとに設定された係数を乗じる』仕組みも考えられる」という具体案も提示しました。例えば、上述したような「看護職員1人・1か月当たりの患者数」などに応じた「病院ごとの係数」を設定し、総入院料収入に乗じる仕組みなどが考えられそうです。山本委員はこの係数案に対し「新型コロナウイルス感染症が収束し、仮に『今般の看護職員処遇改善対応をやめる』となった場合には係数の廃止のみで対応可能であり、優れた考えである」として、賛意を示しています。

ただし、看護職位処遇改善の対象病院はおよそ2800病院と推計されますが、DPC病院は、この4月1日(2022年4月1日)時点で1764病院にとどまります。つまり、少なくとも1000病院以上が「非DPC」であり、上記の「係数案」採用は困難になってきそうです。

このようにさまざまな考え方がありますが、委員間で共通しているのは厚労省に「試算」を求めている点です。例えば「入院料ごとにグループ化・細分化」を行った場合にグループ内でどの程度のバラつきが生じるのかを「プラン1」「プラン2」などグループ構成・切り口を変えて見ていくイメージです。細分化するほどバラつきを小さくすることが可能でしょう(その究極が猪口委員らの提唱する個別病院対応)。しかし細分化を進めれば制度が複雑になっていきます。飯島勝矢委員(東京大学未来ビジョン研究センター/高齢社会総合研究機構教授)は「細分化によるきめ細やかさと、シンプルさとのバランスを、試算結果を見ながら検討していくべき」と提案しています。

次回以降、こうした見解を踏まえた「試算」結果等が順次示されていく見込みです。

「患者数と看護師配置」との相関関係と、診療報酬設定しやすさとのイメージ(Gem Med編集部作成)



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かかりつけ医機能・外来機能分化を進めるための診療報酬、初診からのオンライン診療の評価などを検討―中医協総会(2)
感染症対応とる医療機関を広範に支援する【感染対策実施加算】を恒久化すべきか―中医協総会(1)
2020年度改定で設けた看護必要度IとIIの基準値の差は妥当、「心電図モニター管理」を含め患者像を明確に―入院医療分科会(2)
急性期入院の評価指標、看護必要度に加え「救急搬送や手術の件数」「ICU設置」等を組み合わせてはどうか―入院医療分科会(1)
2022年度診療報酬改定に向け「入院医療改革」で早くも舌戦、「看護必要度」などどう考えるか―中医協総会
大病院の地ケアでpost acute受入特化は是正されているか、回リハ病棟で効果的リハ提供進む―入院医療分科会(3)
適切なDPC制度に向け、著しく「医療資源投入量が少ない」「自院の他病棟への転棟が多い」病院からヒアリング―入院医療分科会(2)
看護必要度II病院で重症患者割合が増、コロナ対応病院よりも「未対応」病院で重症患者割合増が顕著―入院医療分科会(1)
不妊治療の方法・費用に大きなバラつき、学会ガイドライン踏まえ「保険適用すべき不妊治療技術」議論へ―中医協総会(3)
2022年度診療報酬改定論議、コロナ感染症の影響など見据え7・8月に論点整理―中医協総会(1)

医療部会も2022年度改定基本方針案を了承、12月10日の中医協に報告されるが正式諮問は年明けに—社保審・医療部会(1)
2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)