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一般病棟・ICUの看護必要度、2022年度診療報酬改定踏まえて詳細を明示―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(3)

2022.4.4.(月)

お伝えしているとおり、厚生労働省は3月31日に、2022年度の診療報酬改定の疑義解釈(その1)を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

膨大な量のQ&Aが示されているおり、Gem Medでは項目ごとにQ&Aを見ていきます。本稿では、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)に焦点を合わせます(感染対策向上加算等に関する記事はこちら、急性期充実体制加算に関する記事はこちら)。

一般病棟用の看護必要度、入院料継続のためには2022年7月からのクリアが必要

看護必要度は急性期入院医療における重要な評価指標の1つです。ただし「完璧なもの」ではないため、診療報酬改定の都度に「改善」が図られています。

一般病棟用の看護必要度に関しては、2022年度診療報酬改定で次のような見直しが行われました。

【内容の見直し】
(1)A項目の「心電図モニター管理」を削除する
(2)A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類」に定義変更する
(3)A項目の「輸血や血液製剤の管理」について1点から2点に引き上げる

【重症患者割合の基準値の見直し】(下表参照)

入院料・加算の重症患者割合の基準値見直し概要(2022年度診療報酬改定)



このうち(2)の新定義「注射薬剤3種類」に関しては、▼注射で投与した薬剤種類数が3種類以上で、当該注射にかかる管理を行った場合に「1点」を得られる▼施行回数、時間、注射方法、注射針の刺入個所の数は問わない▼EF統合ファイルにおけるデータ区分コードが30番台(注射)の薬剤に限り評価対象となる(除外あり)▼「成分名」同一の場合は1種類とカウントする▼ビタミン剤については、当該患者の疾患・症状の原因がビタミン欠乏・代謝異常であることが明らかで、かつ、必要なビタミンの投与が注射による場合のみ薬剤種類数にカウントする―旨がすでに示されています(基本診療料の施設基準に関する解釈通知、厚労省のサイトはこちら)。

今般、この「ビタミン剤」をカウントできる具体例として次のようなケースが例示されました。
▼患者の疾患・症状の原因がビタミンの欠乏・代謝障害であることが明らかで、かつ、必要なビタミンを食事により摂取することが困難な場合(例えば、悪性貧血のビタミンB12の欠乏等、診察および検査の結果から当該疾患・症状が明らかな場合)
▼患者が妊産婦、乳幼児等(手術後の患者および高カロリー輸液療法実施中の患者を含む)で、診察・検査の結果から食事からのビタミン摂取が不十分と診断された場合
▼患者の疾患・症状の原因がビタミンの欠乏・代謝障害であると推定され、かつ、必要なビタミンを食事により摂取することが困難な場合
▼重湯などの流動食および軟食のうち、一分がゆ、三分がゆまたは五分がゆを食している場合
▼無菌食、フェニールケトン尿症食、楓糖尿症食、ホモシスチン尿症食またはガラクトース血症食を食している場合



また重症患者割合の基準値に関しては「今年(2022年)3月31日時点で施設基準の届け出がなされていれば、今年(2022年)9月20日までは基準値を満たすものと見做す」との経過措置が設けられています。

この点、疑義解釈では「今年(2022年)10月1日に届け出を行うためには、遅くとも『今年(2022年)7月1日』から新たな評価票によって評価を行う」必要があることを明示しています(直近3か月の重症患者割合が基準値をクリアしていることが求められ、10月届け出であれば7・8・9月の3か月が対象になるため)

なお、2020年8月31日の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)」では、コロナ患者受け入れ医療機関等では「看護必要度の基準値を満たさずとも、直ちに施設基準変更の届け出をしなくともよい」旨の臨時特例が設けられています(関連記事はこちら)。

この臨時特例と上記経過措置との関係について疑義解釈では「当該事務連絡に該当するか否かにかかわらず、2022年3月31日時点で届け出を行っている病棟・病室は、2022年9月30日まで経過措置の対象となる」ことが明示されました。



ところで、2022年度改定では、次のように「看護必要度II」(レセプト電算処理コードシステムを用いた評価)導入義務の拡大も行われています。

(従前)
許可病床数400床以上の急性期一般1-6

(2022年度改定後)
許可病床数200床以上の急性期一般1
許可病床数400床以上の急性期2-5

ただし、看護必要度II導入の準備期間を考慮し、新規に導入義務が課せられる「許可病床数200-399床の急性期一般1」については、今年(2022年)12月31日までは義務を猶予する経過措置が設けられています。

今般の疑義解釈では、来年(2023年)1月の義務化(経過措置解除)に向けて「遅くとも今年(2022年)10月1日から看護必要度IIでの評価を行う必要がある」旨を明示しました(上述の3か月ルールにより、10・11・12の3か月で基準クリアができていなければ、2023年1月の経過措置解除時点で急性期一般1を取得できなくなってしまう)。



さらに、看護必要度において、滞在手術等基本料3の対象手術を行った患者について▼「短期滞在手術等基本料3の要件を満たす場合」には当該患者を除外する▼「滞在手術等基本料3の要件を満たさない場合」には当該患者は除外しない―点を明確にしました。例えば「短期滞在手術等基本料3の対象手術を実施してから4日目に退院したが、当該期間中に短期滞在手術等基本料3の対象手術を複数実施した」ようなケースは、後者に該当し「看護必要度」の測定対象に含まれます。

ICU用の看護必要度のB項目、基準値等には含まれないが、測定継続が求められる・・・

2022年度改定では、特定集中治療室用の看護必要度(ICU用の看護必要度)についても、次のような見直しが行われました。

(1)A項目から「心電図モニター管理」を削除する
(2)B項目を廃止する
(3)重症患者(看護必要度を満たす患者)の定義を「A3点以上」と見直す
(4)レセプト電算処理システムコードを用いる看護必要度IIを導入し、この場合の重症患者割合の基準値を、救命救急2・4、ICU1・2では70%以上(必要度Iでは80%以上)、ICU3・4では60%以上(同じく70%)とする

ICU用の看護必要度見直し概要(2022年度診療報酬改定)



今般の疑義解釈では、次のような点を明確にしています。

▽(2)のB項目について「評価の基準からは除外」しているが、ICU用の看護必要度評価票を用いた評価は継続する必要がある

これは、中央社会保険医療協議会などで一部専門委員等から「B項目の評価を継続するにより、高度急性期→急性期と患者が回復する一連の流れの中でのB項目変遷を把握できる」との強い意向を受けたものと言えそうです。▼「A3点以上を満たす患者では、ほぼすべてB3点以上を満たしている」とのデータ▼看護職員の負担軽減―を考慮した場合、「B項目の測定義務継続」には疑問を呈する識者も少なくありません。B項目測定を「任意」とすれば、A項目の看護必要度II導入によって、ICU担当看護師を「看護必要度測定業務から完全開放できる」ため、2024年度以降の改定で早急に見直しを検討することが期待されます。



▽(4)について、看護必要度Iを維持するか、看護必要度IIを導入するか、は医療機関の実情に応じて決してよい

▽(4)について、看護必要度Iから看護必要度IIへの着替えを行う場合、「届け出の前月に看護必要度IIの基準値(ICU1・2では70%以上、ICU3・4では60%以上)をクリアしていればよい(その際、看護必要度Iの基準値(ICU1・2では80%以上、ICU3・4では70%以上)を満たすことは不要)

この点も、ICU担当看護師の負担軽減等を考慮し、早期に「看護必要度IIへの移行」を推進していく必要があるでしょう。



Gem Medではオンラインによる改定セミナーも開催しております。是非、あわせてご活用ください。



【これまでの2022年度改定関連記事】
◆議論の整理(改定項目一覧)に関する記事はこちら
◆入院医療の全体に関する記事はこちら(入院医療分科会の最終とりまとめ)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
◆急性期入院医療に関する記事はこちら(疑義解釈1)こちら(告示関連)こちら(答申)こちら(新指標5ほか)こちら(看護必要度8)こちら(看護必要度7)こちら(看護必要度6)こちら(新指標4)こちら(新指標3、重症患者対応)こちら(看護必要度5)こちら(看護必要度4)こちら(看護必要度3)こちら(新入院指標2)こちら(看護必要度2)こちら(看護必要度1)こちら(新入院指標1)
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専門医→主治医への難病等情報提供、主治医→学校医等への児童アレルギー情報提供を診療報酬で評価へ―中医協総会(2)
外来がん化学療法・化学療法患者への栄養管理・遺伝子パネル検査・RI内用療法を診療報酬でどう推進すべきか―中医協総会(1)
かかりつけ医機能の推進、医療機関間の双方向の情報連携を診療報酬でどうサポートしていけば良いか―中医協総会
在宅医療の質向上のための在支診・在支病の施設基準、裾野拡大に向けた継続診療加算をどう見直していくか―中医協総会(1)
「回復期リハ要する状態」に心臓手術後など加え、希望する回リハ病棟での心リハ実施を正面から認めてはどうか―入院医療分科会(7)
急性期病棟から地ケア病棟への転棟患者、自宅等から患者に比べ状態が安定し、資源投入量も少ない―入院医療分科会(6)
顔面熱傷は救急医療管理加算の広範囲熱傷でないが手厚い全身管理が不可欠、加算算定要件の見直しを―入院医療分科会(5)
ICU用の看護必要度B項目廃止、救命救急入院料1・3の評価票見直し(HCU用へ)など検討へ―入院医療分科会(4)
DPC外れ値病院、当面は「退出ルール」設定でなく、「診断群分類を分ける」等の対応検討しては―入院医療分科会(3)
心電図モニター等を除外して試算し、中医協で「看護必要度から除外すべきか否か」決すべき―入院医療分科会(2)
2022年度改定で、どのように「ICU等設置、手術件数等に着目した急性期入院医療の新たな評価」をなすべきか―入院医療分科会(1)
2022年度の入院医療改革、例えば救急医療管理加算の基準定量化に踏み込むべきか、データ集積にとどめるべきか―中医協
看護必要度等の経過措置、今後のコロナ拡大状況を踏まえて、必要があれば拡大等の検討も―中医協総会(2)
看護必要度やリハビリ実績指数などの経過措置、コロナ対応病院で来年(2022年)3末まで延長―中医協・総会(1)
看護必要度見直し、急性期入院の新評価指標、救急医療管理加算の基準定量化など2022改定で検討せよ―入院医療分科会
回リハ病棟ごとにADL改善度合いに差、「リハの質に差」か?「不適切な操作」か?―入院医療分科会(5)
心電図モニター管理や点滴ライン3本以上管理など「急性期入院医療の評価指標」として相応しいか―入院医療分科会(4)
一部のDPC病棟は「回復期病棟へ入棟する前の待機場所」等として活用、除外を検討すべきか―入院医療分科会(3)
ICUの看護必要度においてB項目は妥当か、ICU算定日数を診療実態を踏まえて延長してはどうか―入院医療分科会(2)
救急医療管理加算、加算1・加算2それぞれの役割を踏まえながら「対象患者要件」の明確化・厳格化など検討していくべき―入院医療分科会(1)
高齢化・コロナ感染症で在宅医療ニーズは増大、量と質のバランスをとり在宅医療提供を推進―中医協総会(2)
コロナ禍の医療現場負担考え小幅改定とすべきか、2025年度の地域医療構想実現に向け大胆な改定とすべきか―中医協総会(1)
1泊2日手術等の「短手2」、4泊5日手術等の「短手3」、診療実態にマッチした報酬へ―入院医療分科会(3)
【経過措置】の療養病棟、あたかも「ミニ回リハ」のような使われ方だが、それは好ましいのか―入院医療分科会(2)
入退院支援加算等の最大のハードルは「専従の看護師等確保」、人材確保が進まない背景・理由も勘案を―入院医療分科会(1)

後発品の信頼性が低下する中でどう使用促進を図るべきか、不妊治療技術ごとに保険適用を検討―中医協総会(2)
医療従事者の働き方改革、地域医療体制確保加算の効果など検証しながら、診療報酬でのサポートを推進―中医協総会(1)
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回リハ病棟でのADL評価が不適切に行われていないか、心臓リハの実施推進策を検討してはどうか―入院医療分科会(2)
入院料減額されても、なお「自院の急性期後患者」受け入れ機能に偏る地域包括ケア病棟が少なくない―入院医療分科会(1)
かかりつけ医機能・外来機能分化を進めるための診療報酬、初診からのオンライン診療の評価などを検討―中医協総会(2)
感染症対応とる医療機関を広範に支援する【感染対策実施加算】を恒久化すべきか―中医協総会(1)
2020年度改定で設けた看護必要度IとIIの基準値の差は妥当、「心電図モニター管理」を含め患者像を明確に―入院医療分科会(2)
急性期入院の評価指標、看護必要度に加え「救急搬送や手術の件数」「ICU設置」等を組み合わせてはどうか―入院医療分科会(1)
2022年度診療報酬改定に向け「入院医療改革」で早くも舌戦、「看護必要度」などどう考えるか―中医協総会
大病院の地ケアでpost acute受入特化は是正されているか、回リハ病棟で効果的リハ提供進む―入院医療分科会(3)
適切なDPC制度に向け、著しく「医療資源投入量が少ない」「自院の他病棟への転棟が多い」病院からヒアリング―入院医療分科会(2)
看護必要度II病院で重症患者割合が増、コロナ対応病院よりも「未対応」病院で重症患者割合増が顕著―入院医療分科会(1)
不妊治療の方法・費用に大きなバラつき、学会ガイドライン踏まえ「保険適用すべき不妊治療技術」議論へ―中医協総会(3)
2022年度診療報酬改定論議、コロナ感染症の影響など見据え7・8月に論点整理―中医協総会(1)

医療部会も2022年度改定基本方針案を了承、12月10日の中医協に報告されるが正式諮問は年明けに—社保審・医療部会(1)
2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)

中小規模医療機関の標準準拠電子カルテ導入、基金や診療報酬活用して支援へ―医療情報ネットワーク基盤WG