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急性期充実体制加算の緊急手術・看護必要度II・敷地内薬局NG等の考え方整理―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(1)

2022.4.1.(金)

厚生労働省は3月31日に、2022年度の診療報酬改定の疑義解釈(その1)を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

2022年度診療報酬改定については、2月9日に中央社会保険医療協議会で答申が行われ、3月4日には新点数表や施設基準の告示等が行われるとともに、関連通知が発出されています。改定の姿がこのように明らかになってきていますが、細部について医療現場からさまざまな「疑問」(疑義)が出されます。疑義解釈は、こうした医療現場の疑問に厚労省が回答を行うものです。今後も五月雨式に疑義解釈が示されていきます。

膨大な量のQ&Aが示されていますので、本稿ではスーパー急性期1を評価する【急性期充実体制加算】に焦点を合わせ眺めてみます。

急性期充実体制加算における「緊急手術」、「時間外の救急患者への手術」に限定せず

【急性期充実体制加算】は、手術等実績・救急搬送患者受け入れ実績・ICU等のユニット設置・入院患者の急変に迅速に対応する体制(RRS)の構築・感染防止対策の徹底・外来機能分化など、極めて優れた「高度急性期・急性期医療」を提供する急性期一般1病棟等(スーパー急性期一般1)を評価する新加算です(関連記事はこちら)。

施設基準を満たす急性期一般1病棟などで、「入院した日」(急性期一般1算定病棟に入院した日)から14日を限度に、▼7日以内:460点(1日につき)▼8-11日:250点(同)▼12-14日:180点(同)―が入院基本料に上乗せされます。

急性期充実体制加算の主な施設基準



手術等実績については、例えば「全身麻酔による手術が年間2000件、このうち緊急手術が350件」以上などの厳格な基準が設けられています。今般の疑義解釈では「緊急手術」(病状の急変により緊急に行われた手術)の考え方を次のように整理し、「時間外の救急搬送患者に対する手術」に限定されないことを明らかにしています。

▽「病状の急変」は入院外での急変に限定されない
▽「休日」「診療時間以外の時間」「深夜」に行われる手術に限定さない
▽「患者の病状の急変により緊急に行われた手術」であることが求められ、「医療機関、医師の都合により行われた手術」は該当しない
▽各病院で「病状が変化しており、予定日よりも早く緊急に手術を行う必要あり」と判断される場合は「緊急手術」に含めてよいが、「手術実施の判断」から「手術開始」まで24時間を超える場合は緊急手術に該当しない



また、手術等実績は「選択要件」となっており、上述の「全身麻酔手術2000件以上・うち緊急手術350点件以上」は必須要件ですが、ここに「悪性腫瘍手術:400件以上、腹腔鏡・胸腔鏡手術:年400件以上、心臓カテーテル法による手術:年200件以上:消化管内視鏡手術:年600件以上:化学療法:年1000件以上の中から4つ以上を満たす」などの選択要件が付加されます。

さらに、このうち「化学療法:年1000件以上」クリアで要件を満たそうとする場合には、あわせて▼外来腫瘍化学療法診療料1を届け出る(抗がん剤を外来投与する場合の総合的管理を評価する新点数、関連記事はこちら)▼外来腫瘍化学療法診療料1で院内のがん化学療法レジメンの妥当性を評価し、4割以上が外来実施可能とする―ことが求められます。

今般の疑義解釈では、後者の「外来実施可能なレジメン4割以上」要件について、「実績は必要ない」が「外来で実施可能なレジメンの対象となる患者に対しては、外来での化学療法の実施方法について説明を行う」ことを求めています。あわせて「外来で実施可能なレジメン一覧」を院内掲示する(手術件数等と同様に)ことも必要です。

RRS体制のための「所定研修」「院内講習」について考え方を明確化

また、RRS要件(入院患者の急変に迅速に対応する体制)については、例えば▼救急または集中治療経験を有し、所定研修を修了した医師1名▼救急または集中治療経験を有し、所定研修を修了した専任看護師1名―を核に構成される「院内迅速対応チーム」を設置し、24時間対応体制を確保することなどが求められます。

今般の疑義解釈では、この「所定研修」には、現時点(2022年3月末時点)で次の3つが該当することが明示されました。今後、対象が拡大される可能性もあります。

▽日本集中治療医学会の「Rapid Response System 出動スタッフ養成コース(日本集中治療医学会認定ハンズオンセミナー)」
▽SCCM(米国集中治療医学会)の「FCCS(Fundamental Critical Care Support)」
▽医療安全全国共同行動の「RRSセミナー〜急変時の迅速対応とRRS」



また、同じくRRS要件の1つとして「院内迅速対応チームの対応体制・対応状況などを院内に周知し、年2回程度の院内講習を開催する」ことが求められていますが、この「RRSに関する年2回程度の院内講習」と、「A234【医療安全対策加算】における医療安全対策にかかる体制確保のための職員研修」とをあわせて実施することが可能と明示されました。

急性期充実体制加算取得には、400床未満病院でも「直ちに看護必要度II導入」を

他方、【急性期充実体制加算】では、【総合入院体制加算】のように「重症度、医療・看護必要度を満たす患者割合が●%以上」という数値基準は定められていません。ただし「急性期一般1病棟では、看護必要度IIによる評価を行っている」ことが求められます。看護必要度IIは、病棟の入院患者すべてについてレセプト電算処理システムコードを用いて看護必要度を評価するものです。この点について、疑義解釈は次のような考えを示しています。

▽急性期一般入院料1以外の病棟・病室については、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度I」「特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度I」を用いた評価を行ってもよい(従前どおりの評価票による評価)

▽「許可病床数200床以上400床未満の場合には、急性期一般1でも2022年12月31日までは看護必要度IIによる評価を行っていると見做す」との経過措置が設けられているが、【急性期充実体制加算】を取得する場合には、加算の施設基準届け出時点で「看護必要度IIによる評価」の基準を満たしていなければならない(上記経過措置は関係ない)

急性期充実体制加算取得のためには「敷地内薬局NG」、第三者を挟んでもNG

また、【急性期充実体制加算】を取得するためには「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がない」ことも求められます(3月4日の通知では「不動産賃貸借」とされていたが、3月31日付の事務連絡「令和4年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」で「不動産取引等その他の特別な関係がない」と修正された、厚労省のサイトはこちら)。いわゆる「敷地内薬局」はNGとする規定です。

この「不動産取引等その他の特別な勘嘉衛がない」とは、次のいずれにも該当しないことを意味すると明示されています。

▽医療機関が当該薬局と不動産の賃貸借取引関係にある
▽医療機関が譲り渡した不動産(薬局以外の者に譲り渡した場合を含む)を当該薬局が利用して開局している
▽医療機関に対し、当該薬局が所有する会議室その他の設備を貸与している
▽当該薬局が医療機関から開局時期の指定を受けて開局している

なお、調剤報酬に関する施設基準において、▼賃貸借には「賃料が発生しない」場合も含む▼第三者による転借が複数回行われている場合も含む(例えば「病院」―「第三者A」―「第三者B」―「薬局」というケースも含む)―ことなども明示されています。



さらに【急性期充実体制加算】取得病院では、▼手術等実績▼外来化学療法の実施を推進する体制▼24時間の救急医療提供▼入院患者の病状の急変の兆候を捉えて対応する体制(RRS)▼外来縮小体制▼退院に係る状況等▼禁煙の取扱い―について、院内の見みやすい場所に掲示することを確認しています。



Gem Medではオンラインによる改定セミナーも開催しております。是非、あわせてご活用ください。



【これまでの2022年度改定関連記事】
◆議論の整理(改定項目一覧)に関する記事はこちら
◆入院医療の全体に関する記事はこちら(入院医療分科会の最終とりまとめ)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
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◆救急医療管理加算に関する記事はこちら(答申)こちらこちらこちらこちら
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◆医療経済実態調査(第23回調査)結果に関する記事はこちら
◆消費税対応の是非に関する記事はこちら
◆薬価・材料価格調査に関する記事はこちら
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自院のpost acute受け入れに偏る地域包括ケア病棟、診療報酬上の評価をどう考えるべきか―中医協総会(1)
小児特性踏まえた緊急往診加算・在宅がん医療総合管理料の評価、重症者救急搬送の特別評価など実施へ―中医協総会(4)
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在宅医療の質向上のための在支診・在支病の施設基準、裾野拡大に向けた継続診療加算をどう見直していくか―中医協総会(1)
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ICU用の看護必要度B項目廃止、救命救急入院料1・3の評価票見直し(HCU用へ)など検討へ―入院医療分科会(4)
DPC外れ値病院、当面は「退出ルール」設定でなく、「診断群分類を分ける」等の対応検討しては―入院医療分科会(3)
心電図モニター等を除外して試算し、中医協で「看護必要度から除外すべきか否か」決すべき―入院医療分科会(2)
2022年度改定で、どのように「ICU等設置、手術件数等に着目した急性期入院医療の新たな評価」をなすべきか―入院医療分科会(1)
2022年度の入院医療改革、例えば救急医療管理加算の基準定量化に踏み込むべきか、データ集積にとどめるべきか―中医協
看護必要度等の経過措置、今後のコロナ拡大状況を踏まえて、必要があれば拡大等の検討も―中医協総会(2)
看護必要度やリハビリ実績指数などの経過措置、コロナ対応病院で来年(2022年)3末まで延長―中医協・総会(1)
看護必要度見直し、急性期入院の新評価指標、救急医療管理加算の基準定量化など2022改定で検討せよ―入院医療分科会
回リハ病棟ごとにADL改善度合いに差、「リハの質に差」か?「不適切な操作」か?―入院医療分科会(5)
心電図モニター管理や点滴ライン3本以上管理など「急性期入院医療の評価指標」として相応しいか―入院医療分科会(4)
一部のDPC病棟は「回復期病棟へ入棟する前の待機場所」等として活用、除外を検討すべきか―入院医療分科会(3)
ICUの看護必要度においてB項目は妥当か、ICU算定日数を診療実態を踏まえて延長してはどうか―入院医療分科会(2)
救急医療管理加算、加算1・加算2それぞれの役割を踏まえながら「対象患者要件」の明確化・厳格化など検討していくべき―入院医療分科会(1)
高齢化・コロナ感染症で在宅医療ニーズは増大、量と質のバランスをとり在宅医療提供を推進―中医協総会(2)
コロナ禍の医療現場負担考え小幅改定とすべきか、2025年度の地域医療構想実現に向け大胆な改定とすべきか―中医協総会(1)
1泊2日手術等の「短手2」、4泊5日手術等の「短手3」、診療実態にマッチした報酬へ―入院医療分科会(3)
【経過措置】の療養病棟、あたかも「ミニ回リハ」のような使われ方だが、それは好ましいのか―入院医療分科会(2)
入退院支援加算等の最大のハードルは「専従の看護師等確保」、人材確保が進まない背景・理由も勘案を―入院医療分科会(1)

後発品の信頼性が低下する中でどう使用促進を図るべきか、不妊治療技術ごとに保険適用を検討―中医協総会(2)
医療従事者の働き方改革、地域医療体制確保加算の効果など検証しながら、診療報酬でのサポートを推進―中医協総会(1)
かかりつけ薬剤師機能、ポリファーマシー対策などを調剤報酬でどうサポートすべきか―中医協総会
回リハ病棟でのADL評価が不適切に行われていないか、心臓リハの実施推進策を検討してはどうか―入院医療分科会(2)
入院料減額されても、なお「自院の急性期後患者」受け入れ機能に偏る地域包括ケア病棟が少なくない―入院医療分科会(1)
かかりつけ医機能・外来機能分化を進めるための診療報酬、初診からのオンライン診療の評価などを検討―中医協総会(2)
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2020年度改定で設けた看護必要度IとIIの基準値の差は妥当、「心電図モニター管理」を含め患者像を明確に―入院医療分科会(2)
急性期入院の評価指標、看護必要度に加え「救急搬送や手術の件数」「ICU設置」等を組み合わせてはどうか―入院医療分科会(1)
2022年度診療報酬改定に向け「入院医療改革」で早くも舌戦、「看護必要度」などどう考えるか―中医協総会
大病院の地ケアでpost acute受入特化は是正されているか、回リハ病棟で効果的リハ提供進む―入院医療分科会(3)
適切なDPC制度に向け、著しく「医療資源投入量が少ない」「自院の他病棟への転棟が多い」病院からヒアリング―入院医療分科会(2)
看護必要度II病院で重症患者割合が増、コロナ対応病院よりも「未対応」病院で重症患者割合増が顕著―入院医療分科会(1)
不妊治療の方法・費用に大きなバラつき、学会ガイドライン踏まえ「保険適用すべき不妊治療技術」議論へ―中医協総会(3)
2022年度診療報酬改定論議、コロナ感染症の影響など見据え7・8月に論点整理―中医協総会(1)

医療部会も2022年度改定基本方針案を了承、12月10日の中医協に報告されるが正式諮問は年明けに—社保審・医療部会(1)
2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)

中小規模医療機関の標準準拠電子カルテ導入、基金や診療報酬活用して支援へ―医療情報ネットワーク基盤WG