看護職員処遇改善のための診療報酬設定論議スタート、まず技術的課題等を分科会で整理―中医協総会
2022.3.23.(水)
今年(2022年)10月から「看護職員の処遇改善」のための診療報酬対応を行う。確実に「現場職員の賃金改善」に結びつく仕組みとすることが必要であり、まず技術的課題の整理や詳細な調査分析を診療報酬調査専門組織を「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(現在の「入院医療等の調査・評価分科会」から名称変更)で実施―。
その後、分科会の整理・分析結果を踏まえ、具体的な制度設計を中央社会保険医療協議会で議論し、決定する―。
3月23日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった方針が固められました。
介護報酬の「処遇改善加算」に内在する問題点も踏まえた議論を求める声も
昨年(2021年)11月19日に閣議決定された新たな「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」、12月20日に成立した2021年度補正予算において、「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を1%程度(月額4000円)引き上げるための措置(補助金交付)を今年2月(2022年2月)から9月まで実施する」ことが決まりました。
また昨年12月22日の後藤茂之厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣合意において、「10月以降は診療報酬で同様の処遇改善(看護職員の収入を3%程度改善できる処遇改善)を行う」方針(今後、制度設計を中央社会保険医療協議会で行っていく)も決まりました(関連記事はこちら)。
後者の「看護職員の処遇改善」のための診療報酬措置については、他の2022年度診療報酬改定内容(急性期充実体制加算の新設や、重症度、医療・看護必要度の見直しなど)と切り離して議論することとされていました(関連記事はこちら)。前者の「2―9月を対象とする看護職員の処遇改善のための補助金」の状況なども勘案する必要があるためです。
また、大臣合意では「介護職員の処遇改善に向けた介護報酬上の仕組み」(2012年度からスタートした介護職員処遇改善加算、2019年度からスタートした特定処遇改善加算、2022年10月からスタートする介護職員等ベースアップ等支援加算)を参考にすることとされています。介護報酬では「介護サービスごとに、スタッフ数に占める介護従事者割合をベースにした加算率を設定し、各事業所の毎月の総報酬に加算率を乗じる」形で処遇改善の財源が交付されています。今後、「診療報酬で、こうした考え方をどう取り込んでいくのか」を具体的に考えていく必要があります。
さらに、10月の新点数スタートから逆算すると「遅くとも8月頭には詳細を決定しておく」必要があり、議論・検討にかけられる時間はそれほど多くありません。
このように「補助金の実態調査・分析」「診療報酬の具体的・技術的検討」を、短期間に集中的に行う必要があることから、3月23日の中医協総会で厚生労働省保険局医療課の井内努課長は「まず、中医協の下部組織である『入院・外来医療等の調査・評価分科会』(以下、分科会)で技術的な検討を行う」「分科会の議論を踏まえ、具体的な制度設計を中医協で詰めていく」考えを提示。了承されました。
この点、中医協委員からは、例えば▼「分科会は技術的課題の整理等にとどめ、具体的な方向は中医協で議論する」旨を分科会委員にも徹底してほしい(城守国斗委員:日本医師会常任理事)▼介護職員の処遇改善に関する加算では「加算がサービス毎に設定されるため、介護従事者を加配する事業所・施設では財源配分が相対的に小さくなってしまい、1人1人の介護従事者の処遇改善も小さくなる」「事業所の毎月の総報酬×加算率で財源を計算するため、処遇改善に充てる財源は毎月変動してしまい、実際の給与増などに困難が生じる」などの課題がある。診療報酬論議ではこうした課題を十分に勘案すべき(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼診療報酬による処遇改善では、病院ごとに必ず「過不足」が生じるが、一定程度は受け入れてもらう必要がある。看護配置のほか患者数なども勘案した仕組みを考え、事後的な検証を行える仕掛けを設けるべき(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)▼確実に看護職員の処遇改善に結びつくことを担保する仕掛け(賃金改善実績の報告など)が必要だが、病院の負担増にも配慮してほしい(吉川久美子専門委員:日本看護協会常任理事)―などの注文が早くも付いています。分科会論議、その後の中医協論議で勘案していくことが求められます。
また、病院経営者でもある島弘志委員(日本病院会副会長)や池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)からは「救急患者受け入れ200件以上、3次救急」などの取得要件が設定されているため、「診療報酬を取得できる病院と取得できない病院とか生じ、病院間の格差につながる。これが『第一歩目』にとどまり、段階的に改善されていくならよいが、固定化されれば『病院の差別化』にもつながるという問題点があることを十分に留め置いてほしい」との指摘も出ています。
「救急患者受け入れ200件以上、3次救急」などの取得要件は、上述した大臣合意で「決定済」であり、2-9月を対象とした補助金でも要件化されています。このため10月からの診療報酬では要件に組み入れられることになりますが、「将来的にどう考えていくか」(例えば2024年度・26年度の診療報酬改定でどう対応していくか)という課題は残りそうです。
なお、2-9月の補助金の実態に関しては「申請状況がまとめられるのは5月以降、実績がまとめられるのは10月以降」となるため、どういったデータが利活用できるのかは未知数です。
ところで、上述のとおり「入院医療等の調査・評価分科会」が「入院・外来医療等の調査評価分科会」に改組されました。従前は「入院医療」をターゲットにして技術的課題の整理等を行ってきましたが、2022年度診療報酬改定で「外来データ提出加算」等が創設され、外来医療についても詳細なデータに基づく技術的課題の整理等を行うことになっています。
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【2022年度診療報酬改定総点検2】各種加算充実し、医療従事者全体の働き方改革を診療報酬でサポート
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多種類薬剤を処方された患者への指導管理を調剤報酬で評価すべきか、減薬への取り組みをどう評価するか―中医協総会(3)
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看護必要度等の経過措置、今後のコロナ拡大状況を踏まえて、必要があれば拡大等の検討も―中医協総会(2)
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一部のDPC病棟は「回復期病棟へ入棟する前の待機場所」等として活用、除外を検討すべきか―入院医療分科会(3)
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