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看護職員等の処遇改善、病院の必要額と診療報酬との間に生じる過不足をどう考えていくかが最大論点—中医協総会

2022.4.27.(水)

この10月(2022年10月)から診療報酬によって「看護職員等の処遇改善」を行うことになるが、「病院の必要額」(看護職員数×1万2000円)と「診療報酬で手当てする額」との間には、どうしてもズレ・過不足が生じる。これをどう考えていくべきかが最大の論点となる—。

まず議論の前提となるデータ収集のため、対象病院(救急医療管理加算を算定する、救急搬送件数が年200台以上の医療機関および三次救急を担う医療機関、2800施設程度と想定される)から看護職員数や患者数などの直近数値を把握する特別調査を行う—。

4月27日に開催された中央社会保険医療協議会の総会および基本問題小委員会で、こうした点が決定されました。

看護職員処遇改善、「必要額」と「診療報酬収益」との過不足をどう考えていくべきか

Gem Medで報じているとおり「看護職員の処遇改善に向けた診療報酬」論議が本格スタートしています。

昨年(2021年)11月19日に閣議決定された新たな「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」、12月20日に成立した2021年度補正予算では、「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を1%程度(月額4000円)引き上げるための補助金を今年2月から9月(2022年2-9月)まで交付することを決定。

看護職員等処遇改善補助金の概要



また昨年12月22日の後藤茂之厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣合意において、「10月以降は診療報酬で同様の処遇改善(看護職員の収入を3%程度改善できる処遇改善)を行う」方針も固めています(関連記事はこちら)。

後者の「看護職員の処遇改善」のための診療報酬措置については、まず中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(入院外来医療分科会)で調査分析・技術的検討を行い、その後に中医協で具体的な制度設計(点数・要件の設定)を行うことになっています(関連記事はこちら)。

補助金であれば、病院からの「自院には看護師を常勤換算で●人雇用しているので、4000円×●人=◆円を交付してほしい」との申請に基づいて「◆円」を交付すれば済みます(その後に、◆円をどの職種に、いくら配分するかは個々の病院が柔軟に決定できる)。

一方、診療報酬については、そう簡単には話が進みません。

まず病院に「いくらの財源を渡せばよいか」は比較的容易に計算できます。上記補助金と同様に「X病院には看護師が常勤換算で〇人雇用されているので、1万2000円×〇人=◇円を渡せばよい」と導き出せます。

しかし、この「◇円を病院に渡すための診療報酬」をどう考えるかとなると、非常に難しい話になってくるのです。

例えば総合入体制加算や急性期充実体制加算などと同じようにのように、「入院患者について1日につきX点を上乗せする」(看護職員等処遇改善加算)といった仕組みとした場合、病院が得られる収益は「1か月の延べ患者数×X点×10円」となります。

このため、◇円(1万2000円×〇人(常勤看護職員数))=「1か月の延べ患者数×X点×10円」となるように「X点」を設定することになります。

しかし、▼看護職員数が全く同じ病院同士でも「延べ患者数」は異なる▼同じ病院でも月によって「延べ患者数」は異なる—ことからため、「X点」を1つに定めることは不可能に近いのです。「X点」を一律に設定した場合、ある病院では「1万2000円×〇人」よりも得られる収益が多くなり、別の病院では「1万2000円×〇人」よりも得られる収益が少ないという事態が生じてしまいます。

病院をグルーピングして「急性期一般1病院ではX1」「急性期一般2病院ではX2」などと細分化しても、グループ内で必ず過不足が生じ、また個別病院ごとに設定(対象病院は2800病院程度と想定されるので、2800通りのXを設定)したとしても「月ごとの過不足」が生じてしまうのです。「入院初日にY点算定できる」などの仕組みとしても同じ問題が必ず生じます。

入院外来医療分科会(4月13日)でも、また4月27日の中医協・基本問題小委員会でもこの問題がクローズアップされました。診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「過不足を最小にする方策をこれから中医協で模索していくことになる。最新データに基づいて試算等を行い、どのくらいの過不足・バラつきが生じるのか、どこまで許容するのか、また過不足・バラつきが出た場合の対応をどう考えるのか、などを検討していく必要がある」と指摘しました(関連記事はこちら)。

過不足・バラつきを小さくするためには、上述のように「類似した病院をグループ化」し上述のXを細分化していくことが必要です(消費税対応改定でも同様の検討が行われている、関連記事はこちら)。しかし、細分化には「制度が複雑になる」という問題点もあります。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「制度を複雑にすれば修正対応も難しくなるため、シンプルな仕組みとすべきである。どのような仕組みとしても過不足・バラつきは生じるので、一定の『受け入れ・割り切り』をし、運用状況(過不足の状況)を見ながら修正していくことが現実的である」との考えを示しています。同じく支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「介護職員処遇改善加算」などを参考にすべきとコメントしている点にも注目すべきでしょう。介護保険の世界では、古くから【毎月の総報酬×介護従事者の配置状況に応じた加算率(介護職員割合が高いサービスでは高い加算率、介護職員割合が低いサービスでは低い加算率)】で計算した財源を介護事業所・施設にわたす、という「明確な割り切り」が行われています(関連記事はこちら)。



この10月(2022年)10月から、なんらかの診療報酬対応が行われ、同時に「看護職員等の賃金引き上げ」がなされます。その際、どのような仕組みにしたとしても▼病院間で過不足がどの程度生じているのか▼賃金改善がどの職種を対象に、どの程度行われているのか—などを詳しく調査し、検証していくことが非常に重要となります。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)のほか、公益代表の飯塚敏晃委員(東京大大学院経済学研究科教授)や永瀬伸子委員(お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系教授)も事後の検証調査の重要性を強調。厚生労働省保険局医療課の井内努課長も「検証調査について、実施するか否かも含め別途検討してもらう」考えを述べています。

対象病院の看護職員数・患者数などを把握するために「特別調査」を実施

上述のとおり、診療報酬での対応を行うにあたっては「看護職員(常勤換算)がどの程度雇用されているのか」「患者数はどの程度なのか」を病院ごとに把握していくことが必要となります。

この点、現場実態とのズレを少しでも小さくするために「直近の状況把握」が必要とされ、4月27日の中医協総会では次のような特別調査実施方針を決定しました。4月13日の入院外来分科会論議も踏まえた調査内容となっています。

▽対象病院(救急医療管理加算を算定する、救急搬送件数が年200台以上の医療機関および三次救急を担う医療機関、2800施設程度と想定される)から次のデータを把握する

【病床数・人員配置等】(2021年7月1日時点および2022年5月1日時点、人事異動なども考慮し「4月1日」でなく「5月1日」のデータを把握する)
▼許可病床数、病棟数
▼病棟・治療室ごとの届出入院料
▼部門(病棟部門・手術室・外来部門・その他)別の看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)数(常勤換算)

【患者の受入状況等】(2021年度)
▽年間の在棟患者延べ数(いわば延べ入院患者数)
▽年間の外来患者延べ数
▽年間の救急搬送件数
▽新規入院患者数(例えば「入院初日にY点」などの仕組みを考慮する際に必要なデータである)

【その他】
▽救急医療管理加算の届け出の有無



この5―6月に調査を行い、その後にデータを踏まえた具体的な「制度設計論議」が行われることになります。



なお、中医協総会では、診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)から「第1ステップとして救急医療機関を対象に看護職員の処遇改善が行われるが、その次のステップとして『病院の種類によって看護職員の処遇に格差が出ることは正しいのか』『より広範に、すべての看護職員を対象に処遇改善を行うべきではないか』といった点が議題になることを意識してほしい」との要望が出されています。

高齢患者の手術後せん妄発生を抑制する薬剤を評価する技術等を先進医療に導入

このほか、4月27日の中医協では、新たに以下の技術が先進医療となることが報告されました。保険外の医療技術を実施する場合「一連の治療すべてが自費診療になる」ことが原則ですが(混合診療の禁止)、一定の安全性・有効性が確認された保険外医療技術については「保険診療と、保険外診療との併用」が可能になります(先進医療)。症例を積み重ね、安全性・有効性のエビデンスを構築して「保険診療への適用」を目指すものです。

【生殖補助医療】
▽強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別(医療法人社団生新会木場公園クリニックで実施)

【先進医療B】(保険適用されていない医薬品・医療機器を用いる技術など)
▽ラメルテオンを用いたせん妄発症抑制療法(国立がん研究センター中央病院で実施)
▽重症未熟児網膜症に対する抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬の硝子体注射療法(神戸大学医学部附属病院で実施)
▽反復経頭蓋磁気刺激による治療抵抗性うつ病の維持療法(国立精神・神経医療研究センター病院で実施)



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看護必要度等の経過措置、今後のコロナ拡大状況を踏まえて、必要があれば拡大等の検討も―中医協総会(2)
看護必要度やリハビリ実績指数などの経過措置、コロナ対応病院で来年(2022年)3末まで延長―中医協・総会(1)
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看護必要度II病院で重症患者割合が増、コロナ対応病院よりも「未対応」病院で重症患者割合増が顕著―入院医療分科会(1)
不妊治療の方法・費用に大きなバラつき、学会ガイドライン踏まえ「保険適用すべき不妊治療技術」議論へ―中医協総会(3)
2022年度診療報酬改定論議、コロナ感染症の影響など見据え7・8月に論点整理―中医協総会(1)

医療部会も2022年度改定基本方針案を了承、12月10日の中医協に報告されるが正式諮問は年明けに—社保審・医療部会(1)
2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)