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2022年10月からの新たな【介護職員等ベースアップ等支援加算】の枠組み決定―社保審・介護給付費分科会

2022.3.1.(火)

今年(2022年)10月からの新たな「介護職員の処遇改善に向けた加算」の枠組みが、2月28日に持ち回りで開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で決定しました(後藤茂之厚生労働大臣からの諮問に対して、社保審の田中滋会長(埼玉県立大学理事長)名で答申)。

名称は【介護職員等ベースアップ等支援加算】に決定。既存の【介護職員処遇改善加算】の(I)から(III)を取得するなどの要件を満たした介護事業所・施設に対し、「介護職員(常勤換算)1人当たり月平均9000円の賃上げ」が可能となるような加算を設けるものです。算定した加算額の3分の2は、名称どおり「介護職員等のベースアップ」などに充てることが求められます。

委員からは「実際に介護職員の賃金がどうアップしたのかの検証が必要である」「処遇改善加算が複雑になっており、今後、整理・簡素化が必要である」「処遇改善を加算で行うべきか、という点について議論していく必要がある」などといった意見が出ており、将来的な検討課題に位置づけられます。

●【介護職員等ベースアップ等支援加算】の答申にかかる厚労省サイト(介護給付費分科会)はこちら

介護職員等ベースアップ等支援加算の概要(介護給付費分科会(2) 220228)

介護職員処遇改善加算(I)-(III)取得が条件、ケアマネ事業所や訪問看護STは対象外

昨年(2021年)11月19日に閣議決定された新たな「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」、12月20日に成立した2021年度補正予算において、「介護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(月額9000円)引き上げるための措置(補助金交付)を来年2月(2022年2月)から9月まで実施する」ことが決まりました(関連記事はこちら)。

来年(2022年)2-9月における補助金の概要(介護給付費分科会1 211224)



また12月22日の後藤茂之厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣合意において、「10月以降は介護報酬で同様の処遇改善(介護職員の収入を3%程度改善できる処遇改善)を行う」方針も決まりました(関連記事はこちらこちら)。

新たな処遇改善加算の概要(介護給付費分科会1 220112)



後者の「10月からの新たな加算」について介護給付費分科会で議論が続けられ、今般、枠組みの決定(諮問・答申)に至ったものです(関連記事はこちら(審議報告)こちらこちらこちら)。

まず、新加算の名称は【介護職員等ベースアップ等支援加算】に決まりました。2012年度に創設された【介護職員処遇改善加算】、2019年度に創設された【特定処遇改善加算】に次ぐ、3つ目の処遇改善加算です。

介護職員等ベースアップ等支援加算を含めた、3つの処遇改善加算の全体像(介護給付費分科会(3) 220228)



加算を取得できるのは、【特定処遇改善加算】と同様に「現行の【介護職員処遇改善加算】(I)から(III)までを取得している事業所」となります。介護職員処遇改善加算が設けられていない訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)など、さらに対象サービスの中でも、要件・基準を満たさず加算(I)(II)(III)を取得できていない事業所・施設は対象外となります。

加算の額は「介護職員(常勤換算)1人当たり月平均9000円の賃上げ」が可能となるように設定されます。具体的には事業所ごとの「総介護報酬」(月々に事業所で算定する介護報酬の総額)に「サービス種類別の加算率」をかけて計算します。

▼各事業所の介護報酬報酬(毎月、請求する介護報酬の単位数、ただし介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算は除外して計算する)
×
▼サービス種類ごとの交付率(下表)

介護職員等ベースアップ等支援加算の加算率(介護給付費分科会(1) 220228)



こうして得られた加算を「介護職員等の処遇改善」に充てることが求められ、次のような点が明示されています。

▽賃上げの対象職種は「介護職員」だが、事業所の判断で「他の職員」の処遇改善に処遇改善加算収入を充てられる(柔軟な運用を認める)

▽賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の3分の2以上は「介護職員等のベースアップ等」(「基本給」または「決まって毎月支払われる諸手当て」の引き上げ)に使用しなければならない



算定手続きについては、次のような考え方が示されています。

▽要件を満たした介護事業所・施設が都道府県に申請(介護職員・その他職員の月額の賃金改善額を記載した計画書を提出)を行い、都道府県が加算を給付する

▽介護事業所・施設では、賃金改善後に都道府県へ「実績報告」を行う

▽申請は今年(2022年)8月から受け付け、10月分から毎月、加算が給付される(介護報酬であり請求から給付までには時間がかかる(10月分が12月に支払われる))



こうした新加算について介護給付費分科会委員からは、例えば▼効果検証が必要である(石田路子委員:高齢社会をよくする女性の会理事、名古屋学芸大学看護学部教授)▼賃金支払い方式の決定は本来、事業所・施設の裁量にゆだねられるべきである。要件(ベースアップを3分の2以上とする点など)や名称について2023年度以降に再検討すべき(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼処遇改善加算が複雑化しており、簡素化・整理を今後検討していくべき(長内繁樹委員:全国市長会、豊中市長)▼処遇改善は重要だが、加算対応は利用者負担などにもつながる点を十分に考慮した制度を検討していくべき(鎌田松代委員:人認知症の人と家族の会理事)▼介護事業所・施設に勤務する看護職員の処遇改善についても検討を行うべき(田母神裕美委員:日本看護協会常任理事)―などの意見が改めて示されました。

介護現場の実態を見ると「処遇改善を加算で行っていく」手法には合理性があります。その一方で「本来は労使間の交渉で決すべき」「介護職員よりも低賃金の被保険者の負担増になってしまう」などの批判も古くからあります。2024年度の次期介護報酬改定(診療報酬との同時改定)において重要な論点となることでしょう。



答申を受け、今後、厚労省でより詳細な内容を詰めて「告示」「通知」「Q&A」などが順次示されていきます。



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