2021年度介護報酬改定踏まえ「介護医療院の実態」「LIFEデータベース利活用状況」など調査―介護給付費分科会・研究委員会
2021.3.16.(火)
2021年度の介護報酬改定を受けて、2021年度には▼介護医療院の状況▼LIFEデータベースの利活用状況▼文書負担等の状況▼福祉用具貸与価格の適正化―の4点について実態把握(改定影響の調査)を行う―。
3月12日に開催された、社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」(以下、検証・研究委員会)でこういった方向が固められました。
早くも2024年度の次期介護報酬改定に向けた動きがスタートしたと言えます。近く開かれる介護給付費分科会での了承を経て、9月(2021年)頃に調査実施、来年(2022年)3月頃に結果公表となる見込みです。
介護療養から介護医療院への移行促進、LIFE利活用の促進などを目指す
2021年度介護報酬改定に関する告示が3月15日に行われました。関連通知や事務連絡などが今後五月雨式に示され、4月1日から新単位数や各種基準が適用されます。
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ところで、介護報酬の目的の1つに「「介護現場の課題を解決し、介護の質を向上させる」ことがあります。このため、ある年度の改定においては「前回改定で、課題解決に向けて行った見直し(改定内容)の効果・影響はどうであったか」を見極め、それをベースに考えていくことが重要です。例えば、2021年度の今回改定では訪問看護について「本来の趣旨に沿った24時間対応・機能強化が進むよう、『リハビリ専門職による軽度者中心の訪問看護』を抑制していく」方針が示されました。改定後に「リハビリ専門職による軽度者中心の訪問看護」が抑制され、本来の趣旨に沿った訪問看護が行われているか、抜け道による軽度者中心の訪問看護が横行していないか、などを調査し、その結果を踏まえて2024年度の次期改定論議を行っていくことになります。
さらに、改定論議には時間・財源の制約などもあるため、「●●まで議論したかったが、今回は○○で抑えておこう」という判断も必要となります。この場合には「次期改定に向けて●●に向けた検討をする必要がある」との宿題が残されます。
もっとも、改定の効果・影響がすぐに出る項目と、比較的時間がかかる項目があるため、調査は「改定年度、改定翌年度、改定翌々年度」に分けて行われます。改定年度には「すぐに効果の現れる」項目を、時間のかかる項目については「翌年度、翌々年度」という具合に分担するイメージです。
この点、3月12日の検証・研究委員会では、次期2024年度介護報酬改定に向けて、2021年度には次の4項目の調査を行う方針を固めました。近く、親組織である介護給付費分科会での了承を経て、調査実施に移ることになります(3月にも介護給付費分科会で方針を決定し、9月頃に調査実施、来年(2022年)3月頃に調査結果報告を行うスケジュール感)。
(1)介護医療院におけるサービス提供実態等
(2)LIFE を活用した取組状況の把握、および訪問系サービス・居宅介護支援事業所における LIFE の活用可能性
(3)文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減
(4)福祉用具貸与価格の適正化
まず(1)では、今回改定で創設された新加算(▼医療療養に1年以上入院する患者を受け入れる介護医療院を評価する【長期療養生活移行加算】(1日につき60単位)▼寝たきり防止・重度化防止に向けた取り組みを評価する【自立支援促進加算】(1か月につき300単位)―など)の効果や、サービス提供の実態、さらに「医療療養・介護療養からの移行状況」を把握します。
介護療養の設置期限は2024年3月31日ですが、これまでの調査で「なぜか、2024年4月以降も介護療養にとどまる」と考えている施設が少なからず存在することが分かっています。この場合、入所者は保険給付を受けられなくなる(介護保険給付、医療保険給付)ため、その処遇悪化等が強く懸念されることから、調査結果を踏まえて「介護療養等から介護医療院への転換を促進する方策」をさらに強化していく必要も出てきそうです。
すべての介護医療院(2020年12月末時点で562施設)、すべての介護療養(580施設程度)、すべての介護療養型老健施設(160施設程度)、3分の1の医療療養などを対象に、上記項目が詳しく調査されます。
また、2021年度からCHASE(利用者の状態、ケアの内容に関するデータベース)とVISIT(リハビリに関するデータベース)を一体運用し、名称を「LIFE」と改められます。(2)では、このLIFEの取り組み状況、活用状況などを調査します。
介護分野においても「エビデンスに基づくサービス提供」が重視されています。どういった状態の人に、どういったサービスを提供すると、どういった効果が生まれるのかというデータを集積することで、「より適切で、効果の高い介護サービス」が見えてきます。各事業所・施設では、そのエビデンスに則った介護サービス提供が求められ、報酬もその考えに沿って設定されることが必要です。
2021年度改定では、このLIFEの利活用が広範な介護サービスで求められるようになったことを踏まえて、施設系・通所系・多機能系・居住系サービス、訪問系サービス(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ)、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)を対象に、▼LIFE を活用した取り組み(特にリハビリ・機能訓練、口腔、栄養等の多職種連携)の実態把握 ▼LIFE の導入および活用に係る事例の収集と課題の検証▼フィードバックの利活用方法および介護サービスの質に係る効果の検証▼介護報酬における訪問系サービスおよび居宅介護支援事業所へのLIFEの拡充に係る課題の検証―を行います。
介護報酬改定論議を行った介護給付費分科会では「データ入力等の負担が大きい」との声が介護現場から出ており、2021年度改定では入力項目の整理(必須項目を限定するなど)や、報酬(加算)の引き上げなども行われました。これらの効果がどう表れているのか、調査結果に注目が集まります。
(3)は、介護現場で大きな課題となっている「負担軽減」に関する調査です。すべてのサービスを対象に、▼利用者への説明・同意等に関する電磁的方法の利用状況と文書量・業務量の変化▼各種記録の電磁的記録の利用状況と文書量・業務量の変化▼運営規程や重要事項説明書における従業者の員数の記載に関する実態把握▼運営規程等の重要事項の掲示に関する実態把握▼更なる文書負担軽減や手続きの効率化のための介護現場の実態把握―などが行われます。
負担軽減は、継続した課題であることは疑いようがなく、2024年度の次期改定でも重要論点の1つとなるでしょう。
さらに(4)は、従前「バラつきが極めて大きい」と指摘され、2018年10月から上限価格公表等(上限を超過する場合には保険給付から除外される)が行われている「福祉用具貸与」について、▼2021年度改定後の実態▼事業者の経営への影響▼利用者への影響―などを調査するものです。
事業者経営が厳しくなり「撤退」などが生じれば、サービス基盤が脆弱となり、本末転倒です。状況をしっかり把握し、必要な見直しなどを検討していくことが重要です。
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