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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

画像診断報告書を確認せず、悪性腫瘍等の治療が遅れた事例が37件も発生―医療機能評価機構

2018.5.15.(火)

 CTやMRIの画像の確認をしたが、医師が「画像診断報告書」を確認しなかったため、オーダーした検査目的以外の悪性腫瘍などの所見に気づかず、治療が遅れてしまった―。

 こうした事例が、2015年1月から2018年3月までに37件も報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。訴訟にもつながりかねないミスであり、機構では「業務工程の整理・確立」が必要と強調しています。

各病院で、画像検査から患者報告までの「業務フロー」を再整理し、確立すべき

 日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等は義務づけ)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に気づいたが、ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集・分析し、事故発生の防止に向けた提言等を行っています(医療事故情報収集等事業)(関連記事はこちらこちら)。また事故事例などの中から、毎月、とくに注意すべき事例等をピックアップし、「医療安全情報」として公表しています(最近の情報はこちらこちらこちら)。5月15日に公表された「No.138」では「画像診断報告書の確認不足」がテーマとなりました。本テーマは、2012年2月にも取り上げられていますが、その後も同様事例が相次いでおり、医療現場における早急な周知が求められます。

 ある病院では、肝内胆管がん術後の患者に対し、外来においてフォローアップでCT検査を実施しました。検査後、主治医は画像を見て患者に説明しましたが、その後、画像診断報告書の確認を忘れていました。5か月後に再度CT検査を実施。その際、別の放射線科の医師が過去のCT画像と比較しようとしたところ、5か月前の画像診断報告書が未読で、そこには「肺がん疑い」と記載されていることに気付き、主治医に連絡しています。

また別の病院では、腎がんの精査のために外来で造影CT検査を行いました。医師は外来診察中に画像を見て患者に説明しましたが、その後、画像診断報告書の確認を失念。患者が3か月後に腎がん手術のために入院した際、担当医が3か月前に実施した造影CT検査の画像診断報告書の中に「肝臓に悪性腫瘍の転移が疑われる。精査が必要である」旨が記載されていることに気付きました。

画像検査の流れは、病院によって若干の違いがありますが、例えば(1)医師が画像検査を放射線部にオーダーする → (2)放射線部で検査を行い画像を作成する → (3)医師が画像を見て患者に説明する → (4)放射線部で「画像診断報告書」を作成する → (5)医師が放射線部の「画像診断報告書」を確認し、必要があれば、患者に追加説明を行う―という場合、(5)がなされていないケースが、2015年1月から今年(2018年)3月までに37件も報告されているのです。

その背景には、▼画像で検査目的の部位を見て患者に説明した時点で(4)の画像診断報告書が作成されておらず、その後、見るのを忘れてしまった▼そもそも画像診断報告書を見る習慣がなかった▼CT・MRIの検査を同時期に行い、MRI検査結果で診断が確定できたため、CT検査の画像診断報告書を見なかった▼専門領域の読影に自信があり、画像診断報告書を見なかった―など、さまざまな要因があるようです。

画像検査において、「画像検査報告書を確認し、患者に必要な追加説明を行う」という工程を失念し、悪性腫瘍等を見逃す事例が多数発生している

画像検査において、「画像検査報告書を確認し、患者に必要な追加説明を行う」という工程を失念し、悪性腫瘍等を見逃す事例が多数発生している

 
機構では、「画像検査」→「画像診断報告書の確認」→「患者への説明」の流れを各病院で整理しなおし、「業務工程を確立」することが必要と強調しています。もっとも、どれだけ業務フローを精緻に確立しても、スタッフが、それを遵守しなければ画餅に帰してしまいます。そこで、遵守しない場合に別のスタッフが直ちに気づけるような仕組み、例えば、相応の費用が発生すると思われますが、「画像診断報告書が未読の場合には、一定時間後にアラートが発生する」ような仕組みの構築を、システム会社と検討してもよいかもしれません。

なお、37件の「画像診断報告書確認不足」事例のうち、36件・97.3%は「CT検査」事例であり、とくに留意する必要がありそうです。
 
 
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