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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

2016年7-9月、医療事故が866件報告され、うち7%超で患者が死亡―医療機能評価機構

2017.1.10.(火)

 日本医療機能評価機構が先ごろ発表した「医療事故情報収集等事業」の第47回報告書によると、2016年7-9月に報告された医療事故は866件、ヒヤリ・ハット事例は7566件に及びました。

 医療事故のうち62件(7.2%)で患者が死亡しており、90件・10.4%は患者に障害が残る可能性が高いことも分かりました(関連記事はこちらこちら)(機構のサイトはこちら)。

療養上の世話における医療事故が多いが、治療・処置、薬剤でも増加

 この期間に報告があった医療事故866件を事故の程度別に見ると、「死亡」が62件(事故事例の7.2%)、「障害残存の可能性が高い」が90件(同10.4%)、「障害残存の可能性が低い」が230件(同26.6%)、「障害残存の可能性なし」が256件(同29.6%)などとなっています。

 医療事故の概要を見ると、最も多いのは「療養上の世話」で322件(同37.2%)、次いで「治療・処置」273件(同31.5%)、「薬剤」68件(同7.9%)、「ドレーン・チューブ」56件(同6.5%)などと続いています。「治療・処置」と「薬剤」に関する事故の割合が高まっており、医療現場でのダブルチェックなどをさらに徹底する必要がありそうです。

2016年7-9月に報告された医療事故のうち、7.2%・62件では患者が死亡している

2016年7-9月に報告された医療事故のうち、7.2%・62件では患者が死亡している

 一方、事故の発生要因(複数回答)に目を移すと「患者側の要因」がもっとも多くなっており、事故全体の11.7%を占めています。次いで「当事者の観察怠り」11.2%、「当事者の確認怠り」11.0%、「当事者の判断誤り」9.6%などと続きます。当事者側に起因する項目は全体の43.6%を占めており、業務手順の見直し(ミスが生じない仕組みの構築)や、複数チェックの徹底などを改めて検討する必要がありそうです。

 事故に関連した診療科としては、依然として整形外科が突出して多く153件で、医療事故全体の13.9%を占めています。次いで、外科7.8%、内科7.2%、精神科6.6%、消化器科6.2%などと続きます。整形外科で生じた医療事故の概要では、「療養上の世話」に起因するものが81件と最多で、整形外科における事故の52.9%、医療事故全体の9.4%を占めていますが、シェアの平準化が進んでいるようにも見えます。

ヒヤリ・ハット事例、4分の1が「当事者の確認ミス」に起因

 ヒヤリ・ハット事例については、2016年7-9月の報告件数は7566件ありました。そのうち3857件について影響度を見ると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が94.2%ですが、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」も4.0%、「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」も1.8%あることから、現場の手順など見直しを今一度行う必要があるでしょう。

 ヒヤリ・ハット事例7566件の概要を見ると、「薬剤」が最も多く3154件(ヒヤリ・ハット事例全体の41.7%)、次いで「療養上の世話」1232件(同16.3%)、「ドレーン・チューブ」1086件(同14.4%)などとなっています。「薬剤」に関連する事例が医療事故に比べて多い点は、従前から変わっていません。

2016年7-9月に報告されたヒヤリ・ハット事例のうち、一部は「一歩間違えば、死亡もしくは重篤な状況に至った」と考えられ、その重大性を認識する必要がある

2016年7-9月に報告されたヒヤリ・ハット事例のうち、一部は「一歩間違えば、死亡もしくは重篤な状況に至った」と考えられ、その重大性を認識する必要がある

 事故の発生要因(複数回答)としては、医療従事者・当事者の「確認の怠り」(25.0%)が飛び抜けて多く、ほか「観察の怠り」8.9%、「繁忙だった」7.8%、「判断の誤り」7.1%などと続きます。前述のように「大事故に直結する可能性のあったミス」である点を考慮すれば、やはり現場の業務フロー(複数チェックも含めて)を早急に見直す必要があると考えられます。

抗がん剤「タルセバ錠150mg」を「同100mg」と誤る事例が複数発生

 報告書では毎回テーマを絞り医療事故の再発防止に向けた分析も行っています。今回は、(1)腫瘍用薬に関連した事例(3回目)(2)歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例(3)小児用ベッドからの転落に関連した事例―の3点に的を絞った詳細な分析も行っています。

 このうち(1)の腫瘍用薬(抗がん剤など)に関連する医療事故については、今回は「指示、調剤、準備、患者への説明・指導」における事故にフォーカスを絞っています。特に多いのは「薬剤量間違い」によるもので、例えば▼「タルセバ錠100mg」を予定していたところ、誤って「同150mg」を投与(過剰事例)▼「ティーエスワン配合OD錠 T20」を予定していたところ、誤って「同 T25」を投与(同)▼「ジオトリフ錠40mg」を予定していたところ、誤って「同30mg」を投与(過少投与)―したケースが複数報告されています。

腫瘍用薬について、同じ薬剤を「過剰投与・過少投与したケース」が報告されており、業務手順などを再度見直す必要がある

腫瘍用薬について、同じ薬剤を「過剰投与・過少投与したケース」が報告されており、業務手順などを再度見直す必要がある

 こうした誤りが生じた背景・要因を詳しく見ると、▼ルール違反(「規格注意」の記載があり、処方せんにチェックを入れるルールを守っていない)▼確認不足・思い込み▼知識不足(タルセバ錠が複数規格あることを知らなかった)▼勤務体制(当直時に1人で調剤と鑑査を行った)―などが浮かんでいます。このため、機構では▼調剤時の確認(指差し・声出しなど)▼鑑査時の確認(確認事項全てにチェックを付けるなど)▼環境整備(規格注意の札を明確化)▼情報共有▼勤務体制の検討―などをあげています。しかし、ルールをいかに厳格に設定しても、それを違反してしまえば意味がありません。システム上の手当なども将来的に検討していく必要がありそうです。

 
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