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医療事故報告、制度発足から1年で388件が報告され、161件で院内調査完了―日本医療安全調査機構

2016.11.4.(金)

 医療事故報告制度が昨年(2015年)10月からスタートして1年が経過した。相談件数は累計で388件、うち院内調査が完了したものは161件。また、第三者機関である医療事故調査・支援センター(以下、センター)への調査依頼は16件あり、うち遺族からが13件。調査を依頼した理由は「治療や死因に関する院内調査結果に納得がいかない」というものが多かった―。

 日本医療安全調査機構(日本で唯一のセンター)が2日に公表した「医療事故報告等に関する報告について―医療事故調査制度開始1年の動向(平成27年10月~平成28年9月)」から、こういった状況が明らかになりました(調査機構のサイトはこちら(要約版)こちら(数値版))。

事故発生から報告までの期間が延伸ぎみ

 医療事故調査制度は、医療事故の原因を探り再発防止策を策定・周知することを目的として昨年(2015年)10月からスタートしました。すべての医療機関が、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち「管理者が予期しなかったもの」すべてをセンターに報告します。さらに事故が発生した医療機関で事故の原因を調査し、それをセンターや遺族に報告。センターでは事例を集積して再発防止策などを練ります(関連記事はこちらこちらこちら)。

 今般、制度発足から1年が経過したことを受け、調査機構が制度開始から1年間の状況を公表したものです。

 まず、報告された事故の件数を見ると1年間で388件となっており、ここ半年間は「1か月当たり30件台」で推移していますが、調査機構では「傾向は見えない」とコメント。

昨年(2015年)10月からの1年間に報告された医療事故は388件

昨年(2015年)10月からの1年間に報告された医療事故は388件

 地域別・病床規模別に見ると、人口100万人当たり報告件数は九州ブロックで3.93件、東北ブロックで2.22件、病床1万床当たりの報告件数は関東甲信越ブロックで3.24件、中国四国ブロックで1.37件と差がありますが、制度開始から時間が経つとともに差が縮小してきています。調査機構では制度の正しい理解に向けて「支援団体等連絡協議会と連携して、研修などを実施する」としています。

 また事故発生から報告までの平均期間は、制度開始から半年間は21.9日でしたが、それ以降の半年間は41.2日に伸びています。報告までに3か月以上かかっている事例も大幅に増加しており、この背景について詳しく分析する必要があります。

医療事故の発生から報告までにかかった期間は延伸傾向にある

医療事故の発生から報告までにかかった期間は延伸傾向にある

院内調査における外部委員参加や解剖実施は増加傾向

 事故を報告した医療機関は、事故の原因などを自院内で調査することが必要です。報告された388件のうち、すでに院内調査が完了したものは161件で、全体の41.5%に相当します。

報告された医療事故のうち、4割の161件では院内調査が完了している。院内調査にかかる時間は徐々に延びてきている

報告された医療事故のうち、4割の161件では院内調査が完了している。院内調査にかかる時間は徐々に延びてきている

 事故報告から院内調査が完了するまでの期間は平均118.5日ですが、6か月を超えても完了していない事例が59件あり、今後、この期間はさらに延びると予想されます。調査に時間がかかっている背景には、▼外部委員の選出に時間がかかっている▼制度の理解(報告書提出義務など)が不十分であった▼解剖結果が出るまでに時間がかかっている▼遺族への対応に時間を要している―などがあり、調査機構では詳細な分析を行うとともに、「外部委員の推薦体制」を整備するなどの支援が必要と提言しています。

 なお解剖の実施割合や外部委員の参加割合が時間の経過とともに増加しており、より明確かつ公正・中立に死因などを把握できる環境が整ってきています。調査機構は「必要に応じて適切に解剖調査が実施されることが望ましい」とコメントしています。

解剖の実施割合は、制度の浸透とともに高まってきており、より正確な死因分析が期待できる

解剖の実施割合は、制度の浸透とともに高まってきており、より正確な死因分析が期待できる

院内調査に外部委員が参加する割合も、制度浸透に合わせて高まってきており、より公平・中立な調査が期待される

院内調査に外部委員が参加する割合も、制度浸透に合わせて高まってきており、より公平・中立な調査が期待される

センターへの調査依頼、遺族から13件、医療機関から3件

 医療事故調査制度では、院内調査がベースとなりますが、遺族や医療機関からセンターに調査を依頼することも可能です。遺族が院内調査に納得できない場合や、小規模な医療機関で十分な調査体制を整えられないようなケースが考えられます。

 センターへの調査依頼件数は累計で16件。その内訳は遺族から13件、医療機関から3件となっています。

 調査依頼の理由を見ると、遺族は「院内調査結果(治療や死因など)に納得できない」というものがやはり多くなりました。医療機関は「死因が明らかでない」「院内調査結果を検証してほしい」という理由で調査を依頼しています。

遺族からセンターへの相談内容、報告制度と無関係のものも多い

 先に説明したとおり、医療事故報告制度の報告対象は「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち「管理者が予期しなかったもの」とされていますが、現場では判断に迷うケースも少なくありません。

 このためセンターには数多くの相談が寄せられます。制度発足から1年間になされた相談件数は1820件、うち医療機関からが1078件、遺族などからが525件という状況です。

 医療機関からの相談は「相談・報告の手続き」「院内調査」「報告対象の判断」など多岐にわたります。遺族などからの相談は「報告対象の判断」が圧倒的ですが、その7割は「制度開始前の死亡事例」や「生存事例(事故にあった本人からの相談)」となっており、現行の医療事故調査制度とは直接の関係がないものです。調査機構では「(国民全体に対する)制度に関するさらなる普及啓発の必要性」を強調しています。

 

 冒頭にも述べましたが、医療事故報告制度は「再発防止」を目的としており、制度の浸透とともに、これまで以上に迅速な報告と公正・中立な調査が進むことが期待されます。

 
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