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2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構

2016.8.30.(火)

 2015年の1年間に報告された医療事故は3654件あり、うち9.6%に当たる352件が死亡事故、9.9%に当たる362件が障害残存の可能性が高い重篤なものであった。また、同じく2015年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は78万4190件あり、うち2%は、仮に実施していた場合には死亡などの重篤な事故になっていた―。

 このような状況が、日本医療機能評価機構が29日に発表した2015年の「医療事故情報収集等事業」の年俸から明らかになりました。

療養上の世話、治療・処置、ドレーン・チューブで事故が生じる確率が高い

 日本医療機能評価機構では、医療安全対策の一環として医療機関で発生した事故やヒヤリ・ハット事例を収集、分析する「医療事故情報収集等事業」を実施しており、定期的にその内容を公表しています。

 まず2015年に報告された医療事故の状況を見てみましょう。報告された医療事故は合計で3654件(国立病院など報告義務のある医療機関に限ると3374件)あり、事故の程度別に見ると、「死亡」が352件(事故事例の9.6%)、「障害残存の可能性が高い」ものが362件(同9.9%)、「障害残存の可能性が低い」ものが1030件(同28.2%)、「障害残存の可能性なし」が985件(同27.0%)などとなっています。半数近くで患者に何らかの障害が残っており、事故防止対策の強化が急がれます。

2015年の1年間に報告された医療事故の概要

2015年の1年間に報告された医療事故の概要

 医療事故の概要を見てみると、最も多いのは「療養上の世話」で1301件(同35.6%)、次いで「治療・処置」1109件(同30.4%)、「ドレーン・チューブ」と「薬剤」がいずれも260件(同7.1%)などと続いています。

2015年の1年間に報告された医療事故の概要

2015年の1年間に報告された医療事故の概要

 事故の内容と程度をクロス分析すると、「与薬」「治療・処置の管理」「治療・処置の実施」「ドレーン・チューブ類の使用」「転倒」などのミスで患者が死亡している状況が明らかになっています。重篤な事故の発生防止に向けた対策が必要です。

 また事故の発生要因(複数回答)を見てみると、「確認の怠り」が最も多く、事故全体の12.0%を占めています。次いで「患者側の要因」11.1%、「観察の怠り」10.4%、「判断の誤り」10.0%などと続きます。確認や観察の怠り、判断誤りなど当事者側の行動に起因する事例は、事故全体の45.6%とほぼ半数を占めており、すべての医療機関で、改めて「業務手順の見直しと遵守の徹底」などを行う必要があります。

2015年の1年間に報告された医療事故の発生要因(複数回答)

2015年の1年間に報告された医療事故の発生要因(複数回答)

 事故に関連した診療科(複数回答が可能)としては、整形外科(566件)、外科(352件)、消化器科(301件)などで多く、特に整形外科に注目すると、「療養上の世話」361件、「治療・処置」90件などに起因する事故が目立ちます。複数回答なので、上記とは母数が異なりますが、整形外科における「療養上の世話」に起因する事故は全体の8.0%、同じく「治療・処置」に起因する事故は全体の2.0%を占めています。

ヒヤリ・ハット事例は78万件超、死亡に繋がる可能性のあった事例も

 ヒヤリ・ハット事例に目を移してみましょう。

 2016年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は合計で78万4190件で、その内訳は「薬剤」が最も多く25万7893件、次いで「療養上の世話」17万4691件、「ドレーン・チューブ」12万419件などで多くなっています。

 「ヒヤリとした、ハットした」にとどまり、実際に患者に誤った行為などをしていないケースが全体の約3割に当たる24万5730件ですが、仮に誤った行為を実施していた場合には2869件では「死亡」もしくは「重篤な状況」に至り、また1万5806件では「濃厚な処置・治療が必要になった」と考えられます。改めて「十分な注意」「ミスが生じない体制づくり」が必要と言えるでしょう。

 事例の発生要因(複数回答)を見てみると、「医療従事者・当事者の確認の怠り」(24.0%)が飛び抜けて多く、以下「観察の怠り」8.9%、「繁忙だった」8.7%、「判断の誤り」8.1%などと続きます。医療事故に比べて「確認の怠り」の割合が高くなっていますが、「大丈夫だろう」はあらゆる場面で大事故に直結する可能性があるため、現場の業務フロー(複数チェックも含めて)を改めて確認し、必要があれば見直すべきでしょう。

2015年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例の概要

2015年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例の概要

ダブルチェックをしても、それが機能していないケースもある点には要注意

 今回の年報では、具体的な事故事例(9事例)について詳細な分析を行い、再発防止策などを検討しています。このうち「エポプロステノール静注用」の希釈方法を誤った事例に注目してみましょう。

 ある医療機関では、胸部大動脈瘤の外科的手術に備えて、肺動脈性高血圧症の病態をコントロールするためにエポプロステノールを投与していましたが、看護師AおよびBの2名でダブルチェックを行ったにも関わらず、「希釈方法の誤り」というミスが生じてしまいました。

 院内には「学習会で練習し、取り扱いを理解した看護師のみがエポプロステノールを取り扱う」という内規がありましたが、経験不足や思い込み、別のルール違反などもあり、ダブルチェックが事実上機能していない状況にあったことが分かっています。

 このため事故が発生した医療機関では、▽エポプロステノールを部署における最重要薬剤に位置づけ、スタッフの再教育と混注手順・手技を再確認する▽特殊薬剤などの準備・投与は受け持ち看護師が最後まで継続して行う(そこにダブルチェックを組み込む)▽エポプロステノールの溶解(希釈)方法を注射準備台に表示する―などの改善策をとっています。

 こうした個別事例の研究を進めるとともに、それを一般化し、各医療機関で運用しやすい形にカスタマイズすることが事故防止には不可欠と言えるでしょう。

 
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