患者の氏名確認が不十分なため、誤った薬を投与してしまう事例が後を絶たず―医療機能評価機構
2016.7.19.(火)
患者に医薬品を手渡したり、投与したりする際に、患者の氏名を十分に確認しなかったために、患者の取り違えをしてしまった―。
このような事例が、2013年1月から16年5月までに6件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(関連記事はこちらとこちらとこちら)(機構のサイトはこちら)。
機構では、▽与薬時には、薬包などの氏名とネームバンドを照合する▽口頭で患者を確認する際は、患者に氏名を名乗ってもらい、薬包などの氏名と照合する―などの取り組みを行うよう求めています。
名乗れない患者ではネームバンドを確認、必ずフルネームの確認を
日本医療機能評価機構は、重要な医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています。15日に公表された「No.116」では「与薬時の患者取り違え」がテーマに取り上げられました。
ある医療機関では、看護師が患者Bの氏名が記載してある薬を持って患者Aのところに行った際、患者Aを患者Bと思い込み、患者Bの薬を見せながら「Bさんですね」とフルネームで声をかけたといいます。患者Aが「はい」と返答したため、患者Bのフロセミド錠40mg1錠(高血圧症、悪性高血圧、心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、末梢血管障害による浮腫、尿路結石排出促進への効能・効果あり)を手渡し、内服してしまいました。その直後に、看護師の目に「患者A」のネームバンドが入ったため間違いに気づいたといいます【事例1】。
また別の医療機関では、看護師が、患者Bに睡眠薬を投与する際に、苗字が同じで同年代の患者Aを患者Bと思い込み、患者Aの病室に行ったといいます。看護師は、薬包の患者氏名とネームバンドの照合を行わず、患者Bへの睡眠薬を患者Aの胃管より投与してしまいました。その後、患者Aが舌根沈下を起こした際、看護師は患者Aには睡眠薬の指示がなかったことに気付いたといいます。
このような患者の取り違えは、患者の疾病や治療内容(すでに投与されている医薬品の内容)によっては重篤な事態を引き起こしかねません。一方、確認を徹底すればこうした取り違えは防止することが可能です。このため、機構では、次のような取り組みを行うことを提案しています。
(1)与薬時には、「薬包などの氏名」と「ネームバンド」を必ず照合する(名乗れない患者では、特に注意を徹底する)
(2)口頭で患者を確認する際は、必ず患者から氏名(フルネーム)を名乗ってもらうようにし、薬包などの氏名と照合する(苗字のみの確認はしない)
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