経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入し、患者が呼吸困難となる事例が発生―医療機能評価機構
2016.12.15.(木)
経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入し、そのまま栄養剤や内服薬を注入したため、患者が呼吸困難に陥ってしまった―。
このような事例が、2013年1月から16年10月までに11件も件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
機構では、「経鼻栄養チューブが胃内に挿入されているか、気泡音の聴取のみでは十分に確認できない」ことを強調し、各医療機関で「胃内に挿入されていることを確認する手順」(例えば胃内容物の吸引やX線撮影など)を決め、遵守するよう呼びかけています。
気泡音の聴取のみでは、チューブが胃内に挿入されたかを十分に確認できない
日本医療機能評価機構は、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。15日に公表された「No.121」では「経鼻栄養チューブの誤挿入」がテーマに取り上げられました。
ある病院では、医師が、気管切開している患者に経鼻栄養チューブを挿入後、気泡音を聴取し、チューブが胃内に入ったと判断。看護師が栄養剤の注入を開始したところ、患者が咳き込み、呼吸苦を訴えたので、医師が気管孔から気管支鏡を用いて「気管内に経鼻栄養チューブが挿入されていた」ことが分かったといいます。
また別の病院では、看護師が経鼻栄養チューブを挿入後、胃内容物を吸引できなかったものの、別の看護師と2名で気泡音を聴取し、チューブが胃内に入ったと判断。看護師は、内服薬を注入する前に、再度、他の看護師と気泡音を聴取しています。内服薬を溶かした白湯を注入したところ、咳嗽が出現しSpO2が80%前後に低下したため、胸部エックス線撮影を行い、「右気管支に経鼻栄養チューブが挿入されている」ことが分かったといいます。
こうした事例が2013年以降、11件も発生していることを重く見て、機構では「経鼻栄養チューブが胃内に挿入されていることを確認する際、『気泡音の聴取のみ』では信頼できる方法ではない」ことを改めて強調。その上で「経鼻栄養チューブの挿入後、胃内に挿入されていることを確認する手順(例えば、「胃内容物を吸引しての確認」や「X線撮影でチューブの先端の位置を確認する」など)を決め、遵守する」よう強く求めています。
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