アンプルや包装の色で判断せず、必ず「薬剤名」の確認を―医療機能評価機構
2016.9.21.(水)
アンプルや包装が類似していたため、誤った薬剤を患者に投与してしまった―。
このような事例が、2012年1月から16年7月までに4件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)(機構のサイトはこちら。
機構では、まず「アンプルや包装の色が類似した薬剤がある」ことを認識し、実際に「薬剤名」を確認する手順を院内で定め、遵守するよう呼びかけています。
「茶色のアンプル」「赤い包装シート」だけで判断してしまった事例が発生
日本医療機能評価機構は、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています。このほど公表された「No.118」では「外観の類似した薬剤の取り違え」がテーマに取り上げられました。
ある病院では、手術中に患者が吐き気などを訴えたため、医師が「プリンペラン」の処方を口頭で指示。医師Bは「プリンペランは茶色のアンプルである」という認識で薬剤を取り出し、1人で準備、投与しました。その後、患者の血圧が著しく下がり(処置済)、術後に確認したところ、使用していないはずの「ペルジピン」の空アンプルがあり、薬剤の取り違えが判明しました。
また別の病院では、患者が外来受診後に、院外の薬局で内服薬を処方されました。患者がその薬を服用していたところ、▼食欲不振▼倦怠感▼歩行困難▼―といった症状が出たため入院。持参薬を確認したところ、藥袋の記載は「ワーファリン錠」でしたが、中には「ラシックス錠」が入っていました。保険薬局の薬剤師が、同じ棚にあった「赤いPTP包装」からラシックス錠をワーファリン錠と思い込んで調剤し、監査でも間違いに気づかなかったことが分かりました。
このほかに、「セレネース注」と「サイレース静注」、「ラシックス注」と「プリンペラン注射液」について、同じ茶色のアンプルであったために誤投与してしまった事例が報告されています。
このように「アンプルの色」や「包装の色」が類似している薬剤は取り違えの可能性が高く、薬剤の誤投与は大きな健康被害につながりかねません。
機構では、まず「アンプルや包装の色が類似した薬剤が存在する」ことを認識するよう指摘。その上で、「アンプルや包装の色で判断せず、薬剤を手にとった際に、『薬剤名を確認』する手順を院内で定め、それを遵守する」よう強く求めています。
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