手術場では、清潔野を確保後すぐに消毒剤を片付け、誤投与を予防せよ―医療機能評価機構
2018.1.15.(月)
手術や処置を行う際、消毒済みの場所(清潔野)に置いてあった消毒剤を、誤って患者に注射してしまった―。
こうした事例が、2014年1月から2017年11月までに4件も報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。機構では、「術中感染などを防ぐための消毒が終わったら、消毒剤を入れた容器を清潔野に置かない」といった対策を講じるよう、医療機関に呼び掛けています。
年1例ペースで誤投与が発生、造影剤や麻酔剤と区別つかず
日本医療機能評価機構では、注意すべき医療事故やヒヤリ・ハット事例の内容について、「医療安全情報」として毎月公表し、注意喚起を行っています(最近の医療安全情報はこちらとこちらとこちら)。1月15日に公表された「No.134」では「清潔野における消毒剤の誤った投与」がテーマとなりました。
日本医療機能評価機構によると、消毒剤を誤投与してしまった事例として、2014年1月から2017年11月までに、次の4例が医療機関から報告されています。
(1)患者の冠動脈に造影剤を投与しようとして、消毒剤「ハイポエタノール液2%」(一般名:チオ硫酸ナトリウム水和物・エタノール)を投与してしまった
(2)患者に造影剤を静脈注射しようとして、消毒剤「ポピヨドン液10%」(一般名:ポビドンヨード)を投与してしまった
(3)患者の皮下に局所麻酔剤「キシロカイン注ポリアンプ1%」(一般名:リドカイン塩酸塩)を投与しようとして、消毒剤「ヂアミトール水」(一般名:ベンザルコニウム塩化物)を投与してしまった
(4)患者の痛みを緩和するために、「アナペイン」(一般名:ロピバカイン塩酸塩水和物)の調製液投与による腹直筋鞘ブロックを行おうとして、消毒剤「0.05%ヘキザック水R」(一般名:クロルヘキシジングルコン酸塩)を投与してしまった
このうち、(1)の「冠動脈造影時に誤って消毒剤を投与した」事例では、消毒剤の容器と造影剤の容器が清潔野に置いてありました。2つの容器のサイズ・形状が似ていた上、どちらの容器にも薬剤名が表示されていませんでした。このため、医師Aは見分けることができずに消毒剤を注射器に吸って医師Bに渡し、医師Bが患者の冠動脈に消毒剤を注入してしまいました。
また(3)の「局所麻酔剤と誤って消毒剤を投与した」事例では、まず消毒剤のヂアミトール水で術野を消毒。その後、ヂアミトール水が入ったプラスチック容器と、局所麻酔剤が入ったビーカーの両方が清潔野(器械台)に載った状態となりました。助手の医師が、局所麻酔剤と誤って消毒剤を注射器に吸って術者に渡し、術者が患者に消毒剤を皮下注射してしまいました。この事例では(1)の事例と異なり、ビーカーに「局所麻酔剤」と記載されていましたが、助手の医師は気付かず、プラスチック容器に入った消毒剤を局所麻酔剤だと誤認してしまったといいます。
手術中の感染などを防ぐ取り組みとして、消毒による清潔野の確保は必須ですが、誤って消毒剤を患者に投与すれば、健康被害を引き起こしかねません。日本医療機能評価機構では、薬剤の誤認対策として、(1)消毒後は、消毒剤を入れた容器を清潔野から取り除く(2)清潔野で使用する容器に薬剤名を明示して、使用前に確認する―といった取り組みを紹介しています。
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