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患者・一般国民の多くはオンライン診療よりも対面診療を希望、かかりつけ医機能評価する診療報酬の取得は低調―入院・外来医療分科会(5)

2023.6.12.(月)

患者、一般国民の多くは、「オンライン診療よりも対面診療を希望」している。オンライン診療を実施していない医療機関の大多数が「今後もオンライン診療を実施する予定はない」と考えている—。

かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料などの取得状況は、依然として「低調」である—。

6月8日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)では、こういった議論も行われています(急性期入院医療に関する記事はこちら、ICUなどの高度急性期入院医療に関する記事はこちら、地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟に関する記事はこちら、療養病棟・医師働き方改革に関する記事はこちら)。

オンライン診療よりも「対面診療」を希望する患者・一般国民が多い

Gem Medで報じているとおり2024年度の次期診療報酬改定に向けて、入院・外来医療分科会で「専門的な調査・分析」と「技術的な課題に関する検討」が始まっています。

外来医療に関して「オンライン診療」の状況を見てみましょう。オンライン診療は新型コロナウイルス感染症の中で「最低限の医療アクセスを可能とする」との考えの下、大幅に拡大する特例(オンライン診療を届け出なしで実施可能とする、電話での初診まで認めるなど)が設けられました(関連記事はこちら)。

しかし、この特例には様々な問題点もあり(皮膚科での電話初診実施など)、2022年度の前回診療報酬改定で「オンライン診療の規定見直し」を実施。例えば、▼情報通信機器を用いた初診料(オンライン初診料)の設定▼情報通信機器を用いた再診料・外来診療料(オンライン再診料)の設定▼情報通信機器を用いた医学管理等の評価見直し▼在宅時医学総合管理料(在総管)におけるオンライン在宅管理の評価見直し▼施設入居時当医学総合管理料(施設総管)におけるオンライン在宅管理の評価見直し—などが行われました(関連記事はこちら)。特例は、この7月(2023年7月)で終了し、引き続きオンライン診療を実施する場合には、本則の施設基準・要件を満たすことが求められます(関連記事はこちら)。

今般の調査では、オンライン診療全般について次のような状況が明らかになりました。

▽情報通信機器を用いた初診料等の施設基準は31.9%で届け出られている

オンライン初診料の取得状況(入院・外来医療分科会(5)5 230608)



▽2022年10月のオンライン診療実績を見ると、大半は「実施実績なし」であるが、一部医療機関で「15回超」算定している(オンライン初診料6施設(全体の2.4%)、オンライン再診料等23施設(全体の9.3%))

オンライン診療の実施状況(入院・外来医療分科会(5)6 230608)



▽情報通信機器を用いた医学管理料は、「特定疾患療養管理料」が平均5.7人と最多

オンライン医学管理の実施状況(入院・外来医療分科会(5)7 230608)



▽オンライン診療未実施施設の「今後の意向」を聞くと、82.3%が「実施の意向なし」であった。その理由としては「対面診療の方が優れている」72.3%、「患者のニーズがない・少ない」52.9%、「オンライン診療のメリットが手間やコストに見合わない」43.0%などが目立つ

オンライン診療料などの今後の取得意向(入院・外来医療分科会(5)8 230608)



医療機関サイドの状況をみると、一部に「オンライン診療に極めて積極的に取り組む」ところがあるが、多くは「オンライン診療に懐疑的」なように見えます。



また、患者サイドの「オンライン診療に対する考え方」については、次のような状況が明らかになっています。

▽オンライン診療受診経験あり者の感想としては、「対面診療であればすぐに受けられる検査や処置が受けられないと感じた」38.4%、「対面診療と比べて十分な診療を受けられない」20.5%、「診療以外に掛かる費用が高い」5.6%などが目立つ

患者の「オンライン診療」の感想(入院・外来医療分科会(5)9 230608)



▽オンライン診療受診経験なし患者の「オンライン診療を受けない理由」としては、「対面の方が十分な診察が受けられる」が44.9%で最多

患者の「オンライン診療」の印象(入院・外来医療分科会(5)10 230608)



▽患者の75%がオンライン診療よりも対面診療を希望しており、オンライン・対面の判断を「医師の判断に任せる」患者は25%程度にとどまる

患者の「オンライン診療vs対面診療」希望(入院・外来医療分科会(5)11 230608)



また、同様の結果が「一般国民を対象にしたWEB調査」からも明らかになっており、患者・一般国民の多くは「オンライン診療よりも対面診療を希望している」状況が伺えます。無理筋なオンライン診療推進は禁物のようです。

患者の「オンライン診療」の感想(入院・外来医療分科会(5)12 230608)

一般国民の「オンライン診療」の印象(入院・外来医療分科会(5)13 230608)

一般国民の「オンライン診療vs対面診療」希望(入院・外来医療分科会(5)14 230608)



もっとも、医師不足などのへき地や離島などでは、一定の医療アクセスを確保するために「オンライン診療」の充実に期待が集まっています。そこでは、オンライン診療のデメリット(対面診療に比べて得られる情報が限られているなど)を補うために「D to P with N」(訪問看護の場と、遠隔地の医師をオンラインでつなぎ、患者の状態などを看護師が医師に伝え、医師の指示などを看護師が患者にかみ砕いて伝える形態)などに大きな期待が集まっています(関連記事はこちら)。

かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料などの取得は依然「低調」

また「かかりつけ医機能」を評価する診療報酬については、次のような状況が明らかになっています。

▽地域包括診療診療料・地域包括診療加算の届出状況は「低調」である

地域包括診療料等の取得状況(入院・外来医療分科会(5)1 230608)



▽地域包括診療料のハードルとしては、「24時間対応薬局との連携」、「常勤医師の配置」、「在宅療養支援診療所でない」などが目立つ

地域包括診療料のハードル(入院・外来医療分科会(5)2 230608)



▽地域包括診療加算のハードルとしては、「24時間対応薬局との連携」、「時間外対応加算等の施設基準クリア」、「慢性疾患に係る適切な研修終了」などが目立つ

地域包括診療加算のハードル(入院・外来医療分科会(5)3 230608)



▽地域包括診療料・地域包括診療加算の未届出施設は、今後も「届け出の予定なし」が大多数である

地域包括診療料等の今後の取得意向(入院・外来医療分科会(5)4 230608)



「かかりつけ医機能」の充実が重視される中で、診療報酬上の評価をどう考えていくかが2024年度改定でも重要論点に位置づけられると考えられます。



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