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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

安全・適正にオンライン診療等を推進するための基本方針、対面診療との適切な組み合わせが重要—厚労省

2023.7.4.(火)

厚生労働省は6月30日に通知「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針について」を発出しました。
【厚労省サイト】
通知本体
基本方針
オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集

安全性・適正性を確保したうえで、オンライン診療を含めた遠隔医療を推進していくことを目指すものです。事例集では、個別医療機関・自治体における「遠隔医療推進の実事例」が掲載されており、各医療機関・自治体で参考にすることが期待されます。

安全性の確保、適正性の確保を前提として「オンライン診療等の遠隔医療」を推進

Gem Medでも報じているとおり、オンライン診療を含めた「遠隔医療」について、適正性を確保しながら推進を図っていくための基本方針策定論議が社会保障審議会・医療部会で行われてきました(関連記事はこちらこちらこちら)。

基本方針では、遠隔医療を次の2つに区分けし、それぞれについて安全性・適正性を確保したうえでの推進方針を示しています。
(1) オンライン診療等(医師と患者間での遠隔医療)
(2) 医師等医療従事者間での遠隔医療

まず(1)のオンライン診療には、医師が情報通信機器を用いて患者の診療を行う「オンライン診療」(いわゆる「D to P」(Doctor to Patient))のほか、その弱点・デメリット(対面診療に比べて得られる情報が少ないなど)を克服できる▼D to P with D(かかりつけ医の医師等と患者との対面診療に、専門医等がオンラインで参画する形態)▼D to P with N(訪問看護の場とオンライン診療をつなぎ、医師が映像を確認しながら看護師に指示を出し、より適切なオンライン診療を行う形態)▼D to P with その他医療従事者(薬剤師や理学療法士等の医療従事者が患者サイドに同席し、よい適切なオンライン診療を行う形態)▼D to P with オンライン診療支援者(医療従事者以外)(医療従事者以外の介護スタッフ等が機器操作を支援し、オンライン診療を受けやすくする形態)—があります。

これらオンライン診療には、患者の通院負担軽減、医療従事者の往診・訪問負担軽減、感染症への感染リスク軽減、患者がリラックスした環境での受診などのメリットがあります。また、医師が不足する過疎地などで、「かかりつけであるが当該傷病の専門外である医師」や「訪問看護を行う看護師」が、オンラインで「専門知識を持つ医師」の診断・指導を受けながら対面診療・訪問看護を行う体制が整えば、「医師の地域・診療科偏在」が大きく改善するという効果も期待されます。

一方で、「医療機関職員のリテラシー不足」「患者の理解不足」「高齢者が受診する場合の機器利用面等での不安」「地域によっては通信インフラが整っていない」といったなどの面で課題もあります。

そこで基本方針では、安全性・適正性を確保したうえで推進するために、▼対面診療と適切に組み合わせたオンライン診療を進める▼オンライン診療の限界等を正しく理解し、患者・家族等に「オンライン診療の利点と不利益」などを事前に説明する▼学会のガイドライン等を踏まえて、適切な診療を実施する▼患者が求める場合に実施すべきであり、研究を主目的としたり医師側の都合のみで行ったりしてはならない—などの基本的な考え方を確認。

そのうえで、▼医療機関が導入時に参考とできるような事例集、手引き書、チェックリストなどを作成する▼オンライン診療などの課題を整理し、エビデンスの収集・構築を進める▼地域の「オンライン診療を実施している医療機関」を住民が把握しやすいように工夫する—などの取り組みを進める考えが明確化されました。



また(2)の医師等医療従事者間での遠隔医療には、▼遠隔放射線画像診断(遠隔地の放射線科医にCT・MRI等の医用画像を共有し、画像診断に関する相談を行う)▼遠隔病理画像診断(遠隔地の病理医に、患者から採取した組織・細胞の標本の顕微鏡画像等を共有し、病理診断に関する相談を行う)▼遠隔コンサルテーション(遠隔地にいる専門医師に診療情報や検査画像等を共有しながら診断・治療方 針等に関する相談を行う)▼遠隔カンファレンス(多拠点にいる医療関係者がテレビ会議システムを用いて、患者の事例検討等を行う)▼遠隔救急支援(専門医のいない医療機関で救急患者を受けた際に、遠隔地にいる専門医に患者の検査画像等を共有しながら、治療や搬送等に関する相談を行う)▼12誘導心電図伝送(急性心筋梗塞等の患者を救急車(ドクターカー・ヘリ含む)で医療機関に搬送する際、車中より、12誘導心電図から搬送先医療機関に情報共有し、心臓カテーテル治療の迅速化を図る)▼遠隔ICU(複数のICUをネットワークで接続し、中心となる基幹施設に設置した支援センターから集中治療の専門医が患者をモニタリングし、各ICUの担当医へ診療支援を行う)▼遠隔手術指導(手術中の術野映像、患者のバイタルデータ等をリアルタイムに遠隔地の医師へ共有し、指導を受けながら手術を行う)—などのさまざまな形態があります。

限られた医療資源を有効活用するため、医療従事者の業務負担を軽減するために極めて有用ですが、「遠隔にいる医師(医療従事者等)の役割と責任の範囲の明確化」、「個人情報保護」などの点で課題もあります。また、遠隔地にいる医師等の状況が見えにくいため、「相談等を受ける側の医療従事者の負担がかえって増加してしまいかねない」可能性もあります。

こうした課題の解消に向けて、基本方針では▼「エビデンス構築」「手引きの作成」などを行う▼「遠隔医療に関する地域における先行事例」を把握し、導入を検討する医療機関に「導入済み医療機関」を紹介する―など、医療機関間の連携関係構築を支援する考えを明確化しています。



このほか、「地域でオンライン診療のネットワークを構築していく」「医療従事者の教育・患者の教育を充実していく」「オンライン診療の質を評価し、それを医療機関にフィードバックしていく」「新たな医療技術等の登場を踏まえ、必要に応じて遠隔医療推進の在り方を検討していく」方針も示されています。例えば、超高速で安定した通信回線環境が整えば「遠隔地の医師がロボット支援下手術機器を操作して、手術を行う」ことも一般的になってくる可能性があります。そうした状況に合わせて「安全性・適正性を確保したうえでの遠隔医療の在り方」を見直していくことが重要でしょう。

遠隔医療推進の基本方針案1(社保審・医療部会(1) 230512)

遠隔医療推進の基本方針案2(社保審・医療部会(2) 230512)

遠隔地のがん患者へ、オンラインセカンドオピニオンを提供する病院も

なお、事例集では、オンライン診療に取り組む医療機関が「どのような形態のオンライン診療を行っているのか」「どのようなシステムを導入しているのか(費用面も含めて)」「どのような患者がオンライン診療を利用しているのか」「オンライン診療の課題は何か」「オンライン診療の効果はどのようなものか」などを整理。なかには「がん患者へのセカンドオピニオンについて、遠方に居住する患者や、直接話しづらいと考える患者向けにオンライン診療を実施している」(亀田総合病院:千葉県)といった事例もあります。

また、自治体の事例を見ると、山口県や長崎県において「過疎地や離島におけるオンライン診療」を県や基幹病院等が一体となって推進している状況が伺えます。



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