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オンライン診療「推進基本方針」を近く取りまとめ!都市部で「オンライン診療のためのクリニック」認めるか?—社保審・医療部会(1)

2023.6.2.(金)

遠隔医療を、安全性確保・適正性確保の上で推進していくための基本方針を定める。そこには「遠隔医療の1つであるオンライン診療について、例えば『受けられる検査が極めて限定される』などの限界がある」ことをより明確に示す必要があるのではないか—。

6月2日に開催された社会保障審議会・医療部会でこうした議論が行われました。「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」については、最終文言調整のうえで国民から広く意見(パブリックコメント)を募集。その結果も踏まえて近く事務連絡などの形で公表されます。

また、へき地などにおいてオンライン診療を受けやすくするために「医師が常駐しないクリニック」を特例的に公民館などに設置することを可能とする仕組みが設けられた点についても報告が行われています。今後「都市部でもこうしたクリニックを認めるべきか」が議論されます。

なお、同日の医療部会では、2022年度の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」結果についての報告も行われており、別稿で報じます。

6月2日に開催された「第99回 社会保障審議会 医療部会」

安全性の確保、適正性の確保を前提として「オンライン診療等の遠隔医療」を推進

Gem Medでも報じているとおり、オンライン診療を含めた「遠隔医療」について、適正性を確保しながら推進を図っていくための基本方針策定論議が行われています(関連記事はこちらこちら)。

情報通信機器を用いた「遠隔医療」には、さまざまなものがあります。例えば、医師が情報通信機器を用いて患者の診療を行う「オンライン診療」(いわゆる「D to P」(Doctor to Patient))や、その弱点・デメリットを克服できる「訪問看護の場とオンライン診療をつなぎ、医師が映像を確認しながら看護師に指示を出し、より適切なオンライン診療を行う形態」(いわゆる「D to P with N」(Doctor to Patient with Nurse))などがあげられます。

医師不足地域などで、「かかりつけであるが当該傷病の専門外である医師」や「訪問看護を行う看護師」が、オンラインで「専門知識を持つ医師」の診断・指導を受けながら対面診療・訪問看護を行う体制が整えば、「医師の地域・診療科偏在」が大きく改善することも期待されます。

一方、従前から行われている医療従事者間の「遠隔画像診断」や「遠隔病理診断」もあります。患者のCT・MRI画像や病理標本について、情報回線を通じて遠方の専門医に「診断を仰ぐ」などするもので、これらは「D to D」(Doctor to Doctor)などと整理されます。



医療部会では昨年(2022年)3月から、こうした遠隔医療全般について「安全性の確保、質の確保」を大前提として推進していく方針策定論議を行っており、5月12日の前回会合では、厚生労働省から「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」案(以下、基本方針案)が提示され、例えば次のような考え方が示されました。

▽すでにあるオンライン診療の適切な実施に関する指針(以下、オンライン診療指針)は主に安全性・適正実施を担保するために「規制」を目的としているが、新たに策定される基本方針は、安全性・適正性を前提としたうえで「推進」を主な目的とする

▽患者に対するオンライン診療等(D to P、D to P with Nなど)
→患者の通院負担軽減、医療従事者の往診・訪問負担軽減、遠隔地の専門医療へのアクセスなどのメリットがあるが、医療機関職員のリテラシー向上、患者の理解などの面で課題もある
→▼医療機関が導入時に参考とできるような事例集、手引き書、チェックリストなどを作成する▼オンライン診療などの課題を整理し、エビデンスの収集・構築を進める▼地域の「オンライン診療を実施している医療機関」を住民が把握しやすいように工夫する—ことを目指す

遠隔医療推進の基本方針案1(社保審・医療部会(1) 230512)



▽医療従事者間の遠隔医療(D to Dなど)
→「医療資源の少ない地域」における医療確保や、医療従事者の働き方改革等への貢献などのメリットがあるが、遠隔にいる医師(医療従事者等)の役割と責任の範囲を明確化、個人情報保護などの点で課題もある
→「エビデンス構築」「手引きの作成」などを行うほか、「遠隔医療に関する地域における先行事例」を把握し、導入を検討する医療機関に「導入済み医療機関」を紹介するなど、医療機関間の連携関係構築を支援する

遠隔医療推進の基本方針案2(社保審・医療部会(2) 230512)



こうした基本方針案に対し、委員からは「不適切な広告へのしっかりした指導などとセットで遠隔医療を進めるべき」、「過疎地などでのオンライン診療等導入のインフラ整備について国による支援をしてほしい」、「遠隔医療の推進で、かえって負担が増えるようなことは避けるべき」、「オンライン診療等には『リスクも伴う』ことを患者・国民に十分に認識してもらうべき」などのさまざまな視点からの注文が付きました(関連記事はこちら)。



厚労省は、こうした注文を踏まえた改正内容案を6月2日の医療部会に再度提示。例えば▼「遠隔医療とは何か」という点についてより明確化する▼オンライン診療の課題例として、「オンライン診療で求めらる『急病急変時の対応方針』や『症状増悪があった場合の対面診療の受診先等の説明』などの確認が難しい」ことなどを明示する▼今後、国に求める役割の1である「遠隔医療の質担保」について、「先進技術の導入」「役割分担や連携のあり方を含む遠隔医療の質の担保」などを例示する—などの修正が行われています。

●修正後の基本方針案はこちら



この修正基本方針案に異論・反論は出ておらず、「国、自治体が遠隔医療の情報提供・周知・広報・好事例共有を進めていく必要がある。技術は日進月歩であり、基本方針案の今後の見直しに向けた現状把握、エビデンス構築にも力を入れるべきである」(内堀雅雄委員:全国知事会、福島県知事)、「将来の技術革新を見据え、その可能性をつぶさないようにすべきである」(神野正博委員:全日本病院協会副会長)、「美容医療分野を中心に不適切なオンライン診療が行われており、監視・是正をしっかりと進めるべき」(山口育子委員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)などの「適正な形での遠隔医療推進」を応援する声が多数だされました。

もっとも、「過疎地や離島では、遠隔医療を実施するための通信インフラが整っていない。『通信インフラを含めた社会資本整備を進め、遠隔医療については地域格差を出すべきでない』(すでに対面診療については地域格差が出ている)旨を追記すべきではないか」(山崎親男委員:全国町村会、岡山県鏡野町長)、「オンライン診療の限界に関して、例えば『実施できる検査が極めて限定される』などの具体的内容を追記すべきではないか」(山口委員)などの注文も改めて出ています。

厚労省は「さらに文言の調整を行い、近々にパブリックコメント(国民の意見)を募集する」考えを示しました。パブリックコメントを踏まえて基本方針を決定し、近く公表することになるでしょう。



ところで、5月12日の前回会合では島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)から「遠隔画像診断などのD to Dも、オンライン診療指針(規制)の対象に加えるべきではないか。ケースによっては遠隔地の読影医の判断が最優先され、それに基づく医療が行われることも少なくないためである」との指摘がありました。遠隔医療に携わる医療従事者すべてが、安全性の確保や質の担保に関して「それぞれ責任をもって業務にあたる」ことの重要性を指摘する意見と言えます。

ただし、「D to D」や「遠隔画像診断」「遠隔画像診断」とひとまとめにすることはできず、個々のケースで「どの医師がどの程度の責任を負うべきか」は変わってきます。例えば、遠隔地の読影医の意見が「丸ごと採用される」ケースもあれば、「一つの見解として参考にするにとどめる」ケースもあるでしょう。このため基本方針案では「責任分解などを一律に規定する」ことはせず、まず「どのようなケースがある」のかを把握し(調査)、それぞれの場合にどういった責任分解が考えられるのかなどの研究を進めていく考えを示しています。

この点、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)も「オンライン診療を受けた患者が急変し、救急搬送された場合に、オンライン診療の担当医と、救急医療(対面診療)の担当医とで、どのような責任を負うのかなどについて現場は大きな関心を持っている」旨を指摘し、今後の調査研究を十分に進めるよう要請しています。



なお、上述の委員意見にもあるようにICT技術はますます進展すると見られ、また患者・国民、医療提供者の遠隔医療に関する知識や受け止めも今後変わっていくと考えられます。そうした状況を踏まえ、基本方針も必要に応じてアップデートされていくことでしょう(もちろん、オンライン診療指針についてもアップデートが重ねられていく)。

オンライン診療のための「医師が常駐しないクリニック」、都市部でも設置すべきか?

ところで厚労省は、医療部会での議論(関連記事はこちらこちら)も踏まえて、こちら5月18日に通知「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」を発出しています。

医療資源が乏しい山間地や離島などでは「オンライン診療」の活用が、医療提供体制確保のために重要となります。しかし、山間地や離島では、高齢の住民・患者が多く、ICT機器を操作してオンライン診療を受けることが困難です。

そこで、例えば公民館などに「医師が常駐しない、オンライン診療を受けるためのクリニックを開設する」ことを特例的に認め、公民館職員などの手助けを得てオンライン診療を受けやすくする環境を整えることとしました。

安全かつ適切にオンライン診療が行えるよう、毎年「オンライン診療指針の遵守状況」や「遠隔地の管理者(院長)と常時連絡が取れる体制の確保」、「急変時に対応する医療機関との連携についての『事前』の明確化」などについて確認を行うことが求められます。

この特例が適用される範囲については、「都道府県知事が必要と判断する地域」を含めるなど、相当柔軟に規定されています。このため内堀委員らは「自治体の意見を十分に取り入れてくれた」と歓迎しています。

また、厚生労働省医政局総務課の古川弘剛・医療政策企画官(政策統括官付情報化担当参事官室併任)は「今後、より分かりやすいQ&Aなどを示してく」考えも明らかにしており、離島やへき地などの医療資源の乏しい地域においてオンライン診療が浸透していくことに期待が集まります。



ところで、規制改革推進会議では「へき地等に限らず、都市部を含め、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所を開設可能とする」ことを求めています(本年(2023年)中に措置を指示、内閣府のサイトはこちら(規制改革推進に関する答申))。

この点についても今後、医療部会で議論していくことになりますが、「医療資源の潤沢な都市部などで『医師の常駐しないオンライン診療のためのクリニック』を設けたとして、何の意味があるのだろう?公民館などに行ける高齢者等であれば、わざわざ『助力を得てオンライン診療を受ける』よりも、『直接、医療機関を受診する』ほうがはるかに手軽ではないか(誤診なども防げる)。『そもそも都市部等においてニーズがあるのか』『オンライン診療の機器、ソフトを販売したいがための規制改革推進会議委員の要請にすぎないのではないか』という点から明らかにする必要がある」と非常に厳しく見る識者もおられます。今後、どのような議論が交わされるのか注目する必要があるでしょう。



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