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へき地等での医療確保に向け、「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」を特例的に認める—厚労省

2023.5.24.(水)

へき地等においても一定の医療提供を確保するために、特例的に「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設」を認める—。

都道府県知事等は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守可能な体制が整っていることを実地調査も通じて確認するなど、適切な医療提供体制が整えられているのかを確認する必要がある—。

厚生労働省は5月18日に通知「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」を発出し、こうした点を明確化しました(厚労省サイトはこちら)。

オンライン診療指針が遵守可能かなどを、実地調査も行って確認を

へき地の公民館などに「医師が常駐しないクリニック」を特別に設置することを認め、そこでスタッフが患者(PC操作に不慣れな高齢患者など)のオンライン診療受診を支援することを可能とする—。

こういった特例措置が社会保障審議会・医療部会で固められました(関連記事はこちら)。

医療機関等の整備が十分でなく、医療アクセスに困難を生じているへき地において、「公民館などに、オンライン診療を行うための医務室」を設置し、それを病院や診療所のサテライト施設として指定。医務室に医師は常勤していませんが、そこにPCやテレビ電話などが設置し、公民館スタッフなどの助力を得て患者がオンライン診療を受けるというイメージです。医療資源が極めて乏しいへき地住民にも、一定の医療アクセスを確保するための特例措置です。

今般の通知では、この「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」開設にあたっての留意点が次のように整理されました。

▽医療資源が限られ、受診機会が十分に確保されていない場合がある「へき地等」において、特例的に「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」開設を認める



▽へき地等」とは以下をさす
・準無医地区
・離島振興法の規定により離島振興対策実施地域として指定された「離島の地域」
・奄美群島振興開発特別措置法に規定する「奄美群島(鹿児島県奄美市、大島郡の区域)」
・小笠原諸島振興開発特別措置法に規定する「小笠原諸島」
・沖縄振興特別措置法に規定する「離島」
・準無医地区と同程度に医療の確保が必要な地区(▼中心的な場所を起点として半径4㎞の地区内の人口が50人未満で、かつ山、谷、海などで断絶されている▼中心的な場所を起点として半径4㎞の地区内に医療機関はあるが診療日数が少ない(概ね3日以下)、または診療時間が短い(概ね4時間以下)▼地区住民が医療機関にアクセスできる定期交通機関があり、かつ1日4往復以上、所要時間1時間未満だが、運行している時間帯が朝夕に集中している▼豪雪地帯等で冬期間は定期交通機関が運行されない、または極端に運行数が少なくなる—)で、都道府県知事が「「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」開設が必要と認めた地域



▽「医療資源が限られ、受診機会が十分に確保されていない場合がある」ことに鑑みた特例であり、当該診療所の開設場所は「へき地等の地区における中心となる場所」など、特例の趣旨を踏まえた場所とする(地域住民のアクセスに支障がある場所での開設などは好ましくない)



▽当該診療所の管理者は「当該診療所のスタッフと常時連絡を取れる」体制を確保するなど、医療法に規定される管理者としての責務を確実に果たすことが必要である

▽都道府県知事等は以下の点に留意する
▼当該診療所について「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守可能な体制が整っていることを実地調査も通じて確認する

▼当該診療所から「チェックシート」「急変時の対応について事前に合意した対面で対応可能な医療機関名」(当該診療所の管理者が所属する医療機関が急変時に自ら対面で対応を行う場合は当該医療機関名)の提出を求める
→急変時などの対応を確実なものとするため、「医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」の管理者が所属する医療機関は、自院が急変時の対面対応を行う場合を除き「急変時の対応について合意した医療機関と連携可能な地域の医療機関」とする

▼当該診療所の開設が地域医療に与える影響・可能性について、地域医師会など、診療に関 する学識経験者の団体等と連携して把握する

▼概ね「1年毎」に次の点を確認し、地域医療に与える影響・可能性について、地域医師会など、診療に関する学識経験者の団体等と連携して把握する
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守可能な体制を整えているか
・オンライン診療の実施件数



▽へき地等で、医療機関がオンライン診療を事業として行い、「定期的に反覆継続(おおむね毎週2回以上)して行われることのない」または「一定の地点で継続(おおむね3日以上)して行われることのない」場合には、1962年の厚生省通知「巡回診療の医療法上の取り扱いについて」に準じて「新たに診療所開設の手続を要しない」ものとするが、当該通知の第二の二(一)-(四)の手続き(以下)を遵守する必要がある

【巡回診療の医療法上の取り扱いについて】(抜粋および編集部で一部改変)
第二 医療法および関連法令の適用、これに関する指導監督については次のとおりとする
二 巡回診療が医療機関の事業として当該医療機関所在の都道府県内で行われる場合
(一)新たに診療所開設の手続を要しないものとするが、当該医療機関から次に掲げる事項の提出を求める。これを変更したときも同様とする
ア 当該医療機関の開設者の名称および主たる事務所の所在地
イ 当該医療機関の名称および所在地
ウ おおむね3か月から6か月までの期間毎に巡回診療を行う場所、ならびに各場所毎の医師・歯科医師である実施責任者の氏名、診療を担当する医師・歯科医師の氏名、担当診療科目を記した実施計画
エ 診療を行おうとする科目
オ 巡回診療実施の目的および維持の方法、ならびに診療報酬の徴収方法
カ 移動診療施設を利用する場合は、その構造設備の概要
キ 当該医療機関の開設者が公益法人等である場合には定款または寄附行為
(二) (一)のウに記した医師・歯科医師である実施責任者をして、当該医療機関管理者の指揮監督のもとに医療法・関連法令の「管理者に関する規定」に則って巡回診療を管理させる
(三) 巡回診療の実施に関しては、医療法施行令第4条または第4条の2第1項、第2項の規定に基づく許可・届け出((開設者の住所変更等の届け出、開設後の届け出)を要しないものとして差し支えないこと。
(四) 巡回診療を行うにあたっては衛生上、防火上、保安上安全と認められる場所を選定し、かつ、清潔を保持するよう留意させる



本通知の別添であるチェックシートは、例えば▼オンライン診療は「患者との合意」の下で行われるべきこと▼オンライン診療が適切でないと判断した場合はオンライン診療を中止し、速やかに適切な対面診療につなげること▼直接の対面診察に代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を、オンライン診療により得ること▼初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うこと—など、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守可能な体制を整えているかを確認するものとなっています(通知の4ページ目以降がチェックシート)。



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