新たな認知症治療薬「ケサンラ」の保険適用、さらなる認知症治療薬の登場見据え、アミロイドPET検査などの算定ルールを整理—厚労省
2024.11.21.(木)
新たな認知症治療薬「ケサンラ」が保険適用されること、今後、さらなる認知症治療が登場することなどを踏まえ、認知症治療薬の投与対象患者を鑑別するための検査(認知症治療薬の投与の可否をか判断する検査)について、保険診療におけるルール整備(規定の一部見直し)を行う—。
厚生労働省は11月19日に通知「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました。11月20日から適用されています。
認知症治療薬のケサンラやレケンビ、アミロイドPET検査などで投与の可否を判断
今回、改正が行われたのは、2024年度診療報酬改定に関する次の2本の通知です。
(1)診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(3月5日付、保医発0305第4号)
(2)特定診療報酬算定医療機器の定義等について(3月5日付、保医発0305第11号)
このうち(1)の「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」は、診療報酬点数を算定する際の細かなルール(どういった医療行為を行えば点数算定ができるのか、どういった診療ガイドラインに従わなければならないのか、どの点数と併算定が可能なのか)などを規定する通知です。
Gem Medで報じているとおり、新たな認知症治療薬の「ケサンラ点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ(遺伝子組換え))の保険適用が11月13日の中央社会保険医療居議会で承認されました(11月20日に保険適用)(関連記事はこちら)。
ケサンラやレケンビは厚労省の作成した最適使用推進ガイドラインに沿って使用することが求められ、ガイドラインでは「アミロイドPETまたは脳脊髄液(CSF)検査で、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認されている」などの要件を満たす患者にのみ使用することとされています。
11月13日の中医協では「新たなPET検査の保険適用」を認めるとともに、保険診療の中でアミロイドβ病理検査を実施する場合のルールを見直すことも決定。今般、この決定に沿って次のような新ルール設定が行われたものです。従前「レカネマブ」のみを対象としたルールが設定されていましたが、ケサンラの保険適用、今後の類似する認知症治療薬の登場を見据えて「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」全般を対象としたルールに見直すものです。
●D004【穿刺液・採取液検査】の「15 アミロイドβ42/40比(髄液))(1282点)
▽対象患者
アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症が疑われる患者等
▽目的
効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与の要否の判断のために、アミロイドβ病理を示唆する所見を確認する
▽検査方法
CLEIA法により、脳脊髄液中のβ-アミロイド1-42およびβ-アミロイド1-40を同時に測定する
▽算定点数・回数等
▼患者1人につき1回に限り所定点数を算定する
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与中止後に、初回投与から18か月を超えて再開する場合は、さらに1回に限り算定できる
→この場合、本検査が必要と判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載する
▽留意事項
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿うこと
▼D004【穿刺液・採取液検査】の「14 リン酸化タウ蛋白(髄液)」(641点)と併せて行った場合は、主たるもののみ算定する
●E101―2【ポジトロン断層撮影】の「5 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)の「イ 放射性医薬品合成設備を用いた場合」(1万2500点)と「ロ イ以外の場合」(2600点)
(1)アミロイドPETイメージング剤を用いた場合(一連の検査につき)
▽対象患者
アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症が疑われる患者等
▽目的
効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与の要否の判断のために、アミロイドβ病理を示唆する所見を確認する
▽算定点数・回数等
▼患者1人につき1回に限り所定点数を算定する
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与中止後に、初回投与から18か月を超えて再開する場合は、さらに1回に限り算定できる
→この場合、本検査が必要と判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載する
▽留意事項
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿うこと
▽「ロ イ以外の場合」のうち、上記の場合は「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害または認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化に用いるものとして薬事承認を得ているアミロイドPETイメージング剤」を使用した場合に限り算定する
→アミロイドPETイメージング剤の注入に係る費用は所定点数に含まれ、別に算定できない
(2)「ロ イ以外の場合」
▽「効能・効果としてアルツハイ マー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿って、▼「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与終了の可否を検討する場合▼18か月を超える投与継続の可否を検討する場合—は、それぞれの場合につきさらに1回に限り算定できる
▽上記の場合については、「効能・効果として、抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化に用いるものとして薬事承認を得ているアミロイドPETイメージング剤を使用した場合」に限り算定する
→アミロイドPETイメージング剤の注入に係る費用は所定点数に含まれ、別に算定できない
(3)併算定について
▽E101-3【ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影】(一連の検査につき)の「4 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)、またはE101-4【ポジトロン断層・磁気共鳴コンピュー ター断層複合撮影】(一連の検査につき)の「3 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する
●E101-3【ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影】(一連の検査につき)の「4 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)の「イ 放射性医薬品合成設備を用いた場合」(1万3625点)と「ロ イ以外の場合」(3725点)
(1)アミロイドPETイメージング剤を用いた場合
▽対象患者
アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症が疑われる患者等
▽目的
効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与の要否の判断のために、アミロイドβ病理を示唆する所見を確認する
▽算定点数・回数等
▼患者1人につき1回に限り所定点数を算定する
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与中止後に、初回投与から18か月を超えて再開する場合は、さらに1回に限り算定できる
→この場合、本検査が必要と判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載する
▽留意事項
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿うこと
▽「ロ イ以外の場合」のうち、上記の場合は「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害または認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化に用いるものとして薬事承認を得ているアミロイドPETイメージング剤」を使用した場合に限り算定する
→アミロイドPETイメージング剤の注入に係る費用は所定点数に含まれ、別に算定できない
(2)「ロ イ以外の場合」
▽「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿って、▼「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与終了の可否を検討する場合▼18か月を超える投与継続の可否を検討する場合—は、それぞれの場合につきさらに1回に限り算定できる
▽上記の場合については、「効能・効果として、抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化に用いるものとして薬事承認を得ているアミロイドPETイメージング剤を使用した場合」に限り算定する
→アミロイドPETイメージング剤の注入に係る費用は所定点数に含まれ、別に算定できない
(3)併算定について
▽E101-2【ポジトロン断層撮影】の「5 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)、またはE101-4【ポジトロン断層・磁気共鳴コンピュー ター断層複合撮影】(一連の検査につき)の「3 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する
●E101―4【ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター断層複合撮影】(一連の検査につき)の「3 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)の「イ 放射性医薬品合成設備を用いた場合」(1万4160点)と「ロ イ以外の場合」(4260点)
(1)アミロイドPETイメージング剤を用いた場合
▽対象患者
アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症が疑われる患者等
▽目的
効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与の要否の判断のために、アミロイドβ病理を示唆する所見を確認する
▽算定点数・回数等
▼患者1人につき1回に限り所定点数を算定する
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与中止後に、初回投与から18か月を超えて再開する場合は、さらに1回に限り算定できる
→この場合、本検査が必要と判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載する
▽留意事項
▼効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿うこと
▽「ロ イ以外の場合」のうち、上記の場合は「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害または認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化に用いるものとして薬事承認を得ているアミロイドPETイメージング剤」を使用した場合に限り算定する
→アミロイドPETイメージング剤の注入に係る費用は所定点数に含まれ、別に算定できない
(2)「ロ イ以外の場合」
▽「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚労省最適使用推進ガイドラインに沿って、▼「効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」の投与終了の可否を検討する場合▼18か月を超える投与継続の可否を検討する場合—は、それぞれの場合につきさらに1回に限り算定できる
▽上記の場合については、「効能・効果として、抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化に用いるものとして薬事承認を得ているアミロイドPETイメージング剤を使用した場合」に限り算定する
→アミロイドPETイメージング剤の注入に係る費用は所定点数に含まれ、別に算定できない
(3)併算定について
▽E101-2【ポジトロン断層撮影】の「5 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)、またはE101-3【ポジトロ ン断層・コンピューター断層複合撮影】(一連の検査につき)の「4 アミロイドPETイメージング剤を用いた場合」(一連の検査につき)を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する
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