2024年12月2日以降のマイナ保険証「以外」(資格確認書等)で保険診療受けるための法令整備を決定—中医協総会(2)
2024.11.14.(木)
本年(2024年)12月2日に保険証の「新規発行」が停止され、「マイナンバーカードと保険証の一体化」が行われる。ただしマイナ保険証を持っていなくとも、医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)が発行する「資格確認書」などによっても、従来通りの保険診療を受けることができる。こうした点の法令上の整理を行う—。
11月13日に開催された中央社会保険医療協議会総会で、こうした点が了承されました(福岡資麿厚生労働大臣の諮問に対し、中医協の小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)が答申)(同日の新たな認知症治療薬「ケサンラ」の保険適用に関する記事はこちら)。
「マイナンバーカード以外」で保険診療を受ける場合の法令整備を決定
医療DXの推進を目指し、「現行の健康保険証の新規発行を本年(2024年)12月2日に終了し、マイナ保険証(マイナンバーカードの保険証利用)を基本とする仕組み(マイナンバーカードと保険証の一体化)に移行する方針が固められ、「マイナンバーカードの保険証利用促進に向けた総合的な対策が順次進められています(関連記事はこちらとこちら)。
もっとも「12月2日以降、従来の保険証は使えなくなる」わけではありません。厚生労働省はこれまでに、次のような複数の方法で保険診療を受けることが可能である旨を明示しています(関連記事はこちら)。
(1)マイナンバーカードと保険証の紐づけを行っている場合
→「マイナンバーカード」で保険診療を受ける(医療機関等窓口の顔認証付きカードリーダーシステムで資格確認)
(2)マイナンバーカードと保険証の紐づけを行っているが、何らかの事情でオンライン資格確認を行えなかった場合
▼「患者自身のマイナポータル画面(PDF含む)+マイナンバーカード」で保険診療を受ける(マイナポータル画面で資格情報を医療機関が確認する)
▼「医療保険者が交付した【資格情報のお知らせ】(A4の紙)+マイナンバーカード」で保険診療を受ける(『資格情報のお知らせ』で資格情報を医療機関が確認する)
▼「マイナンバーカードを提示するとともに、初診の場合には患者に【被保険者資格申立書】を記載してもらう、再診の場合には医療機関で過去の受診情報をもとに資格確認する」ことで保険診療を受ける(関連記事はこちら)
(3)マイナンバーカードを持っていない場合、マイナンバーカードと保険証との紐づけを行っていない場合
▼「保険証」(有効期限が切れるまで)で保険診療を受ける(従来と同じ)
▼「医療保険者が交付した【資格確認書】」で保険診療を受ける(保険証と同様に【資格確認書】を医療機関窓口に提示する)(関連記事はこちら)
ところで、保険診療を行う保険医・保険医療機関が遵守すべき規則である「保険医療機関及び保険医療養担当規則」には、「医療機関の窓口では『患者の保険証(被保険者証)』等によって、患者が保険診療を受けられるかどうか(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険などの公的医療保険に加入しているかどうか)を確認する」(資格確認)旨が規定されており、上記の「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」などによる確認が可能な点は規定されていません。これを放置すれば、上記のような「資格確認書によって保険診療を受ける」ことができません。
そこで中医協では、次のような法令上の整備を行うことを決定しました(厚労省サイトはこちらとこちらとこちら)。
(A)「保険医療機関及び保険医療養担当規則」の見直し
▽上述の「保険診療を受けるための資格確認」について、(a)保険証(被保険者証)が廃止されることを受け、新たに「資格確認書」による資格確認が可能な旨を規定する(b)新たに「その他厚生労働大臣が定める方法」での資格確認が可能な旨を規定する—
○資格確認方法○
(現行)
▽健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認(マイナ保険証)
▽患者の提出する被保険者証
▽当該保険医療機関が、過去に取得した当該患者の資格に係る情報を用いて、保険者に対し、電子情報処理組織の使用等により、あらかじめ照会を行い、保険者から回答を受けて取得した直近の当該情報を確認する方法
↓
(見直し後)
▽(変更なし)健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認(マイナ保険証)
▽(修正)患者の提出し、または提示する資格確認書(上記(a))
▽(変更なし)当該保険医療機関が、過去に取得した当該患者の資格に係る情報を用いて、保険者に対し、電子情報処理組織の使用等により、あらかじめ照会を行い、保険者から回答を受けて取得した直近の当該情報を確認する方法
▽(新設)その他厚生労働大臣が定める方法(上記(b))
なお、「既に発行されている保険証(被保険者証)」についても、有効期限が切れるまで使用できるため、その旨を明示する「経過措置」も置かれます。
(B)上記(b)の「厚生労働大臣が定める方法」として、次を規定する(厚労省告示で規定)
→「マイナ保険証」を持参したが、何らかのトラブル等で「マイナ保険証でのオンライン資格確認」が行えない場合の措置
(i)患者のマイナンバーカードおよび「資格情報通知書」(資格確認書)
(ii)患者のマイナンバーおよび「マイナポータルで取得した当該患者の被保険者・被扶養者の資格に係る情報」が記録されたもの
(iii)利電子証明書の有効期間満日から3か月までの間の「医療機関から保険者に対して、当該患者の被保険者・被扶養者の資格情報照会を行い、保険者から回答を受けることで資格確認をする方法」
こうした法令上の整備と、上述した(1)から(3)の資格確認との対応関係は、大まかに次のように整理できます。
(1) マイナンバーカードと保険証の紐づけを行っている場合
→(A)の「健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認」として規定済
(2)マイナンバーカードと保険証の紐づけを行っているが、何らかの事情でオンライン資格確認を行えなかった場合
→(B)厚生労働省告示の(i)から(iii)として新たに規定する
(2) マイナンバーカードを持っていない場合、マイナンバーカードと保険証との紐づけを行っていない場合
→(A)の「資格確認書」、あるいは「保険証の経過措置利用」として新たに規定する
この内容に異論は出ていませんが、小塩会長は「医療DX推進は極めて重要となるが、医療保険制度を堅持し、保険診療を受けられない国民が1人でも生じることのないようにすることも極めて重要である。混乱が生じた場合には、直ちに対応することも重要と考えている」とコメント。また、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「マイナ保険証により『資格確認の誤り』がなくなることに期待しているが、マイナ保険証定着には一定の時間がかかる。保険証や資格確認書で受診する患者についても、資格確認の徹底をお願したい。また資格確認方法について国民に十分な周知を行ってほしい」と政府に要請しています。
中医協答申を受け、厚労省は必要な法令整備を速やかに行います。
このほか、11月13日の中医協総会では、次のような点も了承等されています。
▽2024年度診療報酬改定に関する結果検証調査(2024年度調査)として、▼精神医療等の実施状況▼在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理及び訪問看護の実施状況▼長期処方やリフィル処方の実施状況▼後発医薬品の使用促進策の影響およ実施状況—に関する調査票を決定(厚労省サイトはこちら)
▽17成分・19品目の新薬の保険適用を決定(厚労省サイトはこちら)(新たな認知症治療薬「ケサンラ」の保険適用に関する記事はこちら)
▼うち一部高額医薬品を使用した場合、当該診療をDPCの包括対象から除外する(厚労省サイトはこちら)
▼筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制に用いる「ロゼバラミン筋注用25㎎」と、先天性プロテインC欠乏症に起因する静脈血栓塞栓症・電撃性紫斑病の治療・血栓形成傾向抑制に用いる「セプーロチン静注用1000単位」について、【在宅自己注射指導管理料】の対象薬剤に追加する(厚労省サイトはこちら)
▽以下の医療機器・臨床検査等の保険適用を決定(厚労省サイトはこちら)
▼重度の急性期症状を呈する深部静脈血栓症(既存治療が実施困難、有効な治療効果が得られない)における血流再開を図るための「ClotTriever 血栓除去システム」(105万円)
▼経カテーテル的大動脈弁置換術の際に生じる塞栓物質を捕捉、除去することを目的に大動脈分岐部に一時的に留置する遠位塞栓防止デバイスである。「SENTINEL 脳塞栓保護デバイス」(52万円)
▼既存療法で治療困難な症候性腸骨大腿静脈流出障害に対し、腸骨大腿静脈の内腔を確保するために用いる「VENOVO 静脈ステントシステム」(33万5000円)
▼がん組織中のFGFR2融合遺伝子の検出(タス ルグラチニブコハク酸塩の胆道癌患者への適応を判定するための補助に用いる)を行う「AmoyDx FGFR2 Gene Break-apart FISH プローブキット」(7850点)
▼血清中の抗GM-CSF抗体の検出(自己免疫性肺胞タンパク症の診断の補助)を行う「KBM ラインチェック APAP」(1380点)
▼アルツハイマー病による軽度認知障害・認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化等を行う「アミヴィッド静注」「ビザミル静注」
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