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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

全国の分娩施設の「出産費用や機能、サービス」などを公表し、妊婦の「施設を比較・選択」を支援—社保審・医療保険部会(1)

2023.9.8.(金)

本年(2023年)4月に出産育児一時金引き上げられた。それと時を同じくして、相当数の医療機関等が出産費用の増額を行っているが、妊婦等への説明・周知が不十分な部分もあり改善を求めていく—。

「出産費用(正常分娩)の保険適用」に向けて、妊婦なども参加する検討の場を新たに設ける—。

また来年(2024年)4月から、分娩取扱施設ごとに「出産費用」や「機能」などを明示し、「どの施設で分娩するか」を比較・選択しやすくするサービスを厚労省が始める—。

9月7日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こういった方針が固められました。同日には「マイナンバーカードによるオンライン資格確認」「子ども医療費助成」なども議題に上がっており、別稿で報じます。

9月7日に開催された「第167回 社会保障審議会 医療保険部会」

出産費用、一時金の引き上げと並行して増加する傾向にある

昨年12月の医療保険部会決定等を踏まえて、「2023年4月1日以降の分娩より、出産育児一時金の額を、従前の42万円から50万円に引き上げる」対応が行われています。

出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険などの加入者(被保険者・被扶養者)が出産した際、その経済的負担を軽減するために一定の金額を支給する制度です。従前の「42万円」では、実際の出産費用(2020年度には全体平均で46万7000円、公的病院に限れば45万2000円)を十分に賄えていないことから、少子化対策の一環として大幅増額が行われたものです(関連記事はこちら)。

その議論の過程で、「出産育児一時金の引き上げにより、医療機関の設定する出産費用が引き上げられているのではないか」との指摘がなされました。厚生労働省保険局保険課の山下護課長は、9月7日の医療保険部会に次のような「出産育児一時金に関する調査」結果を報告しています。

▽昨年(2022年)4月から本年(2023年)4月において、出産費用の増額を行った分娩取り扱い施設が44.5%、価格改定を行っていない施設が54.3%

▽出産費用の増額を行った施設の「増額決定時期」としては、「出産育児一時金大幅増額が確定」した本年(2023年)1月以降が最も多い

昨年(2022年)4月から今年(2023年)4月までの出産費用改定状況(医療保険部会(1)1 230907)



▽2018年以降、昨年(2022年)3が鵜までに出産費用の増額を行った分娩取り扱い施設が26.5%、価格改定を行っていない施設が70.8%

2018年4月から昨年(2022年)3月までの出産費用改定状況(医療保険部会(1)2 230907)



こうした状況を踏まえると「出産育児一時金の引き上げにより、医療機関の設定する出産費用が引き上げられている」状況を伺うことができます。実際に、この4月(2023年4月)の出産育児一時金アップ(42万円→50万円)に並走するように、実際の出産費用は上昇しています。

出産費用額の推移(医療保険部会(1)3 230907)

出産費用を引き上げる場合、妊婦等に時間をかけて内容を周知することが求められる

もっとも出産費用増額の背景には「光熱水費などの高騰」「医療機器の高騰」「人件費の高騰」などがあり、今後も出産費用は増加していくと見込まれます。実際に、コスト増に伴う増額予定・検討中の施設が半数超あります。

今後の出産費用改定の状況(医療保険部会(1)4 230907)



上述のように、出産費用は分娩取扱施設が自由に増額を行うことができ、それ自体に問題はありませんが、妊婦サイドにとっては「突然、出産費用が大幅増になる」ことは好ましくありません。どの施設で分娩するかは妊婦サイドが時間をかけて考慮しており、一般の買い物のように「値上げしたのであれば、別のもっと安いところを探そう」と簡単に動くことはできないからです。

このため厚労省や自治体は「値上げを行う場合には、その理由などを丁寧に説明するとともに、十分な周知期間をとってほしい」と要望していますが、実態を見ると▼値上げ1か月前の説明が半数近くを占めている▼値上げ情報の説明を行っていない施設が13.1%—あることが分かっており、「改善」が強く求められます。

出産費用改定の情報提供状況(医療保険部会(1)5 230907)

出産費用(正常分娩)の保険適用に向け、妊婦などの声も聴く検討の場を設置

繰り返しになりますが、正常分娩は医療保険給付の対象となっておらず、出産費用は自由診療として分娩取扱施設が「自由に料金設定を行う」ことが可能で、国や自治体が料金設定に口を出すことは許されません。したがって、たとえば「どれだけ出産育児一時金を引き上げても、それに合わせて出産費用が上がってしまい妊婦・家族などの負担軽減効果が小さくなってしまう。出産費用の引き上げを控えてほしい」などと国や自治体が要請することはできないのです。

このため医療保険部会委員からは「正常分娩の保険適用を検討してはどうか」との意見が出され、岸田文雄内閣総理大臣も「正常分娩の保険適用」を検討する方針を明確にしています(2026年度の保険適用を目指す)。

この点、山下保険課長は「正常分娩の保険適用に向けた検討の場を新たに設置する。妊婦サイド、医療保険者サイドなどさまざまな関係者に議論してもらいたい」との考えを示しました。スケジュールなどは明らかにされていませんが、健康保険法等の改正が必要となるため、仮に2026年度から保険適用を行うのであれば「2024年内に議論を固め、2025年に法改正を行う。その後に保険診療ルールを中央社会保険医療協議会で固め、2026年度から保険適用する」というイメージが浮かびます。今後の議論に注目が集まります。

全国の分娩施設の費用・サービスなどを比較できるWEBサイトを2024年4月にオープン

また医療保険部会では「出産育児一時金の引き上げ」と合わせて、「出産費用の見える化を進める」方針も決定しています(関連記事はこちらこちら)。

この方針を踏まえて山下保険課長は、来年(2024年)4月から厚生労働省ホームページにおいて「どの地域の、どの分娩取扱施設がどのような機能(周産期母子医療センターなのか、クリニックなのか、医師や助産師などは何名配置されているのか、年間の経膣分娩・帝王切開件数はどの程度なのか、など)をもち、どのような付帯サービス(立ち合いは可能か、無痛分娩を行っているかなど)を行っているのか、費用(分娩費、室料など)はどの程度なのか」を公表する考えを明らかにしました。

出産費用見える化に向けた情報提供項目(医療保険部会(1)6 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ1(医療保険部会(1)7 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ2(医療保険部会(1)8 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ3(医療保険部会(1)9 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ4(医療保険部会(1)10 230907)



妊婦や家族が「どの施設で分娩するか」を選択する際の重要な資料の1つになると期待されます。

この点、「費用の内訳などを詳細に明らかにすべきではないか。項目が不十分である」との声が佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)といった医療保険者代表委員、経済界などから出されました。

確かに、情報が詳細であるほうが施設選択においては好ましいと考えられそうです。しかし、上述のように「出産費用は自由に施設で決めることができ、その内訳提示などは困難である」こと、「同じ視点で情報が整理され、選択する側が誤解しないように留意しなければならない」こと(例えば「A施設は100万円だが諸費用込み、B施設は30万円だが諸費用別」という情報では比較ができない)等を踏まえると、現時点で「費用の内訳を示す」ことなどは困難です。このため上記の厚労省案の形で「来年(2024年)4月から情報公開を行う」ことが決定しました。

なお、山下保険課長は「もちろん作って終わりではない。情報公開後に逐次検証を行い、必要な拡充などを検討していく。あわせて利用者ニーズに応えられるようにスマートフォンでの閲覧なども可能な仕組み検討していく」と強調。また、将来に向けて「妊婦が最も欲しいのは、施設における『医療の質』情報であり、研究を進めるべき」(中村さやか委員:上智大学経済学部教授)などの注文もついています。



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