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現役世代の医療費負担軽減に向け、後期高齢者、とりわけ高所得な高齢者の負担増を実施へ—社保審・医療保険部会(2)

2022.11.18.(金)

「75歳以上の後期高齢者」と「74歳未満の現役世代」とで、医療費負担の伸びが同程度になるような仕組みを構築する—。

「75歳以上の後期高齢者」について、世代内で「公平な負担」となるように、「より経済能力の高い者」(=高所得者)に、より多くの保険料負担をお願いする。このため、「一定所得以上の人は、それ以上に所得が高くなっても保険料(税)額は同額とする」という【賦課限度額】(上限額)について「現在は66万円」としているところ、「80万円」に引き上げる—。

11月17日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、こういった議論も行われています。同日には「医療費適正化計画の見直し」も議題にあがっており、すでにGem Medで報じています(関連記事はこちら)。

11月17日に開催された「第158回 社会保障審議会 医療保険部会」

高齢者と現役世代の盛大間、高齢者の世代内で「負担の公平化」を目指す

Gem Medで報じているとおり、医療保険部会で「医療保険改革」論議が積極的に進められています。
医療費適正化計画見直し論議(2)
出産育児一時金見直し論議
世代間・世代内の負担公平化論議
簡素なオンライン資格確認等システム論議
医療費適正化論議
キックオフ論議

11月17日の医療保険部会では、▼「75歳以上の後期高齢者」と「74歳未満の現役世代」の世代間における負担の公平化▼「75歳以上の後期高齢者」の世代内における負担の公平化▼国民健康保険制度の見直し—を議題としました。

まず、「75歳以上の後期高齢者」と「74歳未満の現役世代」の世代間における負担の公平化を見てみましょう。

75歳以上の後期高齢者が加入する「後期高齢者医療制度」では、▼どうしても医療費(=支出)が高くなる▼所得水準が低い(=収入が少ない)—ため、「現役世代からの財政支援」が行われています(財源構成は概ね「公費5割、現役世代からの支援金4割:高齢者自身の保険料1割」となっている)。

高齢化の進展により「後期高齢者が増加」→「高齢者医療費も増加」→「負担も増加」していきます。その際、「少子化により現役世代の人口は減少する」一方で「高齢者人口は増加する」ため、現役世代・高齢者に同じように「負担増の割り振り」を行えば、1人当たりの負担増は「現役世代で大きく、高齢者で小さく」なります。そこで、現役世代の負担が過重にならないように「2年ごとに【現役世代人口の減少】による現役世代1人当たりの負担の増加分を、高齢者と現役世代で折半し、設定する」仕組みがもうけられています。

現在の後期高齢者医療制度の仕組みでは「現役世代の負担」が急騰してしまっている(1)(医療保険部会(2)1 221028)

現在の後期高齢者医療制度の仕組みでは「現役世代の負担」が急騰してしまっている(2)(医療保険部会(2)2 221028)



ただし、この仕組みによっても、上述のように▼現役世代の負担増加が非常に大きい▼省愛的には後期高齢者人口が減少していく点に対応できない—という課題があります。

このため、厚生労働省は「介護保険制度の仕組みを参考に、『75歳以上の後期高齢者が負担する保険料の伸び率』と『74歳未満の現役世代が負担する後期高齢者支援金の伸び率』とが、同じくなるような仕組み」を導入する考えを示しました。2024年度から「75歳以上の後期高齢者において保険料負担が増加」し「74歳未満の現役世代において支援金負担が減少」することになります。

後期高齢者と現役世代との「世代間」の公平性確保策(医療保険部会(2)1 221117)



また、「75歳以上の後期高齢者」の世代内における負担の公平化に向けて、後期高齢者医療の保険料について次のような見直しが行われます。「より所得の高い者」に「より多くの保険料負担」を求めるものです。

▽高所得者により多くの保険料負担を求めるため、「一定所得以上の人は、それ以上に所得が高くなっても保険料(税)額は同額とする」という【賦課限度額】(上限額)について「現在は66万円」としているところ、「80万円」に引き上げる

▽低所得者に配慮し、保険料の「所得割」(所得が多いほど、多く負担する部分)の比率を引き上げる(全員が負担すべき「均等割」は維持する)

後期高齢者医療制度の「世代内」の公平性確保策(医療保険部会(2)2 221117)



こうした「世代間の負担公平化・高齢者世代内の負担公平化」により、2024年度時点では「後期高齢者医療制度の負担増」(全体で820億円増、1人当たり平均で年間4000円・月間340円増)となる一方で、「現役世代の負担減」(例えば健保組合では全体で290億円減、1人当たり平均で年間1000円・月間90円減、協会けんぽでは全体で300億円減、1人当たり平均で年間800円・月間70円減、国民健康保険では全体で80億円減、1人当たり平均で年間300円・月間20円減)となるとの財政試算結果が示されています。

後期高齢者医療制度の見直しに伴う財政影響(医療保険部会(2)3 221117)



ただし、制度改正は上記にとどまらず、ほかに「出産育児一時金の財源を後期高齢者にも求める」、「健保組合・協会けんぽなどにおける前期高齢者の財政調整の仕組みを見直す」ことも検討され、今後、詳細が固められていきます。このため、最終的に「後期高齢者の負担、現役世代の負担が具体的にどう変化するのか」は現時点では明らかになっていません。今後を待つ必要があります。この点、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)ら複数の委員が「全体の改革内容、全体の財政影響を早急に示してほしい」と改めて要望していします。

こうした見直しに対し、佐野委員や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)、本多孝一委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)ら多くの委員が「限界に来ている現役世代の負担軽減を実現できる」ものとして賛意を示していますが、猪口雄二委員(日本医師会副会長)や兼子久委員(全国老人クラブ連合会理事)は「後期高齢者の負担増が急すぎないか」とコメント。また兼子委員は「受診抑制につながるような『自己負担の引き上げ』は今後もすべきでない」と訴えています。



このほか国民健康保険制度に関しては、▼出産する被保険者に係る産前産後期間相当分(4か月間)の保険料一部免除(2024年1月予定)▼保険料水準の都道府県内での統一や医療費適正化の推進(2024年4月予定)▼普通調整交付金(自治体間の財政力不均衡を調整する)の在り方、生活保護受給世帯の国保加入などの継続検討—といった見直し案が示されました。今後、都道府県・市町村と調整を行い、どういった見直しを行うのかを詰めていくことになります。



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