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医療保険改革案まとまる!「段階的な保険料(税)引き上げ」により、後期高齢者の急激な負担増に配慮!—社保審・医療保険部会(1)

2022.12.15.(木)

12月15日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、次のような医療保険制度改革案が了承されました。

【出産育児一時金の見直し】
▽一時金の額を、現在の42万円から50万円に引き上げる(2023年度から)
▽財源の一部(費用全体の7%)を75歳以上後期高齢者にも求める(2024年度から)が、急激な負担増を避けるために「2024年度・25年度は2分の1負担(つまり3.5%)」「2026年度から満額負担(7%)」とする

出産育児一時金について、これまでは「公的病院の出産費用額平均」をベースに設定していたが、2023年度には「全施設の出産費用額平均」を踏まえた引き上げを行う(医療保険部会(1)1 221215)



【後期高齢者と現役世代との負担の公平化】(「75歳以上の後期高齢者」と「74歳未満の現役世代」とで、医療費負担の伸びが同程度になるような仕組みとする)

▽低所得者の保険料負担が増加しないよう、「均等割り」(全員が負担する部分)と「所得割り」(所得が高いほど多く負担する部分)との比率を見直す(現在「1対1」を「48対52」程度とする)
→その際、年収153万円から200万円の人の「所得割負担増」が急激になることを避けるために、「2年かけて段階的に引き上げる」こととする

▽一定所得以上の人は、それ以上に所得が高くなっても保険料(税)額は同額とする」という【賦課限度額】(上限額)について現在の66万円から80万円に引き上げるが、急激な負担増を避けるために「2024・25年度に73万円に引き上げ」「2026年度から80万円に引き上げ」とする

現役世代と後期高齢者の「負担の公平性確保」を行うが、後期高齢者の急激な負担にも配慮し段階的な導入とする(医療保険部会(1)2 221215)



【現役世代内の保険料負担の公平性確保】
▽75歳未満の現役世代の医療費負担(とりわけ70-74歳の前期高齢者の医療費を支える部分)について、「現役世代内の公平性」確保を図るための仕組みについて、現在の「加入者数に応じた調整」から、「3分の2を加入者数に応じた調整」「3分の1を総報酬(給与+賞与)に応じた調整」の組み合わせに変更する

▽主に負担増となるのは健保組合である点を考慮し、「企業の賃上げ努力を促進する形での補助」創設などの支援を行う

【医療費適正化計画の見直し】
▽例えば、「風邪や急性下痢症への抗菌剤投与の適正化」「白内障手術や化学療法などの外来移行」について指標・目標値を定めて推進するなど

今後、厚労省で必要な法律改正案の作成、予算上の措置・運用上の見直しなどを進めていきます。

これまでの制度改革案に激変緩和措置が加わったことで、「高齢者の保険料負担増」の内容にも変化が生じています。本稿ではその点に焦点を合わせ、改革内容の詳細は別稿で報じます。

12月15日に開催された「第161回 社会保障審議会 医療保険部会」

出産育児一時金は50万円に引き上げ、後期高齢者の財源負担は「段階的に導入」

Gem Medで報じているとおり、医療保険部会で「医療保険改革」論議が積極的に進められ、今般の意見取りまとめに至りました。
出産費用の見える化論議
医療保険改革による高齢者の負担増試算等
現役世代内の負担公平化論議
後期高齢者の負担見直し論議
医療費適正化計画見直し論議(2)
出産育児一時金見直し論議
世代間・世代内の負担公平化論議
簡素なオンライン資格確認等システム論議
医療費適正化論議
キックオフ論議



12月9日の前回会合では、▼出産育児一時金の見直し▼現役世代の負担軽減に向けた、高所得の75歳以上後期高齢者の保険料負担見直し▼現役世代内の負担の公平性確保(前期高齢者納付金への一部総報酬割導入)—に関する財政試算結果が示されました。

その後に、冒頭にも述べた次のような調整が行われました。
(1)出産育児一時金の額を「50万円」に引き上げる(これまでは「47万円」への引き上げで試算)

出産育児一時金について、これまでは「公的病院の出産費用額平均」をベースに設定していたが、2023年度には「全施設の出産費用額平均」を踏まえた引き上げを行う(医療保険部会(1)1 221215)



(2)後期高齢者による財源負担について「2024年度・25年度は2分の1負担(つまり3.5%)」「2026年度から満額負担(7%)」とする(これまでは「24年度から満額負担」で試算)

(3)後期高齢者保険料(税)の「所得割り」引き上げについて、「年収153万円から200万円の人のでは、2年かけて段階的に引き上げる」こととする(これまでは「2024年度から引き上げ」で試算)

(4)後期高齢者保険料(税)の【賦課限度額】(上限額)について、「2024・25年度に73万円に引き上げ」「2026年度から80万円に引き上げ」とする(これまでは「2024年度から80万円とする」ことで試算)

現役世代と後期高齢者の「負担の公平性確保」を行うが、後期高齢者の急激な負担にも配慮し段階的な導入とする(医療保険部会(1)2 221215)



後期高齢者保険料(税)の急激な増加を避けるためのもの(激変緩和措置)で、これにより「1人当たり保険料(税)額」の試算結果にも変化が生じています。



まず、(1)(2)の出産育児一時金については、金額の引き上げにより、必要な財源が「500億円」に膨れ上がりました(47万円への引き上げでは400億円が必要であった)。

また、75歳以上の後期高齢者負担割合を2024年度・25年度には2分の1とすることにより、各医療保険の負担増は、▼後期高齢者医療制度で130億円(47万円への引き上げ・2024年度からの満額負担(以下同)では260億円)▼協会けんぽで220億円(同60億円)▼健保組合で160億円(同40億円)▼共済組合で80億円(同20億円)▼国保で60億円(同10億円)—となります。

これを加入者1人当たり負担増額(単純に「上記財源÷加入者数」で保険料(税)がいくら上昇するのか)で見ると、次のようになります。
▽後期高齢者医療制度:年600円・月50円の増(47万円への引き上げ・2024年度からの満額負担(以下同)では年1300円増であった)

▽協会けんぽ:年600円・月50円の増(同、年200円増であった)

▽健保組合:年600円・月50円の増(同、年200円増であった)

▽共済組合:年800円・月70円の増(同、年200円増であった)

▽国保:年200円・月20円の増(同、年50円増であった)

出産育児一時金の見直しによる各保険者への財政影響試算(医療保険部会(1)3 221215)



一時金額を引き上げ、一方で後期高齢者の負担増を緩和したため、「現役世代の負担増」が目立つ内容となっています。

低所得高齢者で負担増が生じない、高所得高齢者では段階的に保険料(税)の負担増

また、上述の医療保険改革内容をすべて実施した場合には、75歳以上の後期高齢者の保険料負担は次のようになります。激変緩和前に比べて「所得の高い後期高齢者の負担増の度合いが緩やかになっている」ことが確認できます。

▽単純に「必要財源÷加入者数」で計算した1人当たり年間保険料額
【現行】:8万2000円(a)

【激変緩和がない場合】:2024年度から8万7300円(aから+5300円)

【激変緩和が行われた場合】
▼2024年度:8万6100円(aから+4100円、b)
▼2025年度:8万7200円(aから+5200円、bから+1100円)



▽年収80万円の人
【現行】:1万5100円(a)

【激変緩和がない場合】:2024年度から1万5100円(aから+ゼロ円)

【激変緩和が行われた場合】
▼2024年度:1万5100円(aから+ゼロ円、b)
▼2025年度:1万5100円(aから+ゼロ円、bから+ゼロ円)



▽年収200万円の人
【現行】:8万6800円(a)

【激変緩和がない場合】:9万700円(aから+3900円)

【激変緩和が行われた場合】
▼2024年度:8万6800円(aから+ゼロ円(上記(3)参照)、b)
▼2025年度:9万700円(aから+3900円、bから+3900円)



▽年収400万円の人
【現行】:21万7300円(a)

【激変緩和がない場合】:23万1500円(aから+1万4200円)

【激変緩和が行われた場合】:2024年度から23万1300円(aから+1万4000円)



▽年収1100万円の人
【現行】:67万円(a)

【激変緩和がない場合】:80万円(aから+13万円)

【激変緩和が行われた場合】
▼2024年度:73万円(aから+6万円(上記(4)参照)、b)
▼2025年度:80万円(aから+13万円、bから+7万円)

医療保険改革による後期高齢者の保険料(税)への影響試算(医療保険部会(1)4 221215)



「経済力のある高所得の後期高齢者にも応分の負担を求める」(これにより現役世代の負担増を抑制する)ことが、今回の医療保険改革の重要ポイントです。しかし、医療保険部会委員からは、高所得者とはいえ「急激な負担増」を避ける必要があり、「段階的な引き上げを行うなどの配慮を行うべき」との指摘が行われ、今回の激変緩和措置導入になったものです。

別稿で、改革の全体像を眺めます。



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