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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

「マイナンバーカードによる受診」実績等もとに、最大で病院20万円、クリニック10万円の一時金を今夏支給—社保審・医療保険部会(1)

2024.4.11.(木)

「マイナンバーカードの保険証利用」実績などをもとに、今夏に最大で「病院20万円、クリニック10万円」の一時金支給を行う—。

4月10日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、厚生労働省がこういった方針を報告しました。

「マイナンバーカードの保険証利用の増加度合い」に応じて支援金を2段階で交付することが決まっていましたが、1段階目はこの支援金を維持し、2段階目を一時金に改組するものです。厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室の中園和貴室長は「一時金は、分かりやすく、迅速な交付が可能になる」とコメントしています。

医療機関等では、こうした支援金・一時金も活用し「マイナンバーカードの保険証利用」促進に努める必要があります。

なお、同日の医療保険部会では「出産費用の見える化」「2024・25年度の後期高齢者医療制度の保険料」も議題に上がっており、別稿で報じます。

4月10日に開催された「第177回 社会保障審議会 医療保険部会」

マイナ保険証の利用実績に応じた支援金を「わかりやすい一時金」に改組

医療DXの推進を目指し、「現行の健康保険証の新規発行を本年(2024年)12月2日に終了し、マイナ保険証(マイナンバーカードの保険証利用)を基本とする仕組みに移行する方針が固められ。「マイナンバーカードの保険証利用促進に向けた総合的な対策が順次進められています(関連記事はこちらこちら)。

マイナ保険証の利用状況を見ると、昨年(2023年)12月に、直近では最も低い4.29%に低下しましたが、本年(2024年)に入ってから、1月:4.60%、2月:4.99%、3月:5.47%と上昇モードに入っています。

ただし、「依然としてマイナ保険証の利用率が低調である」状況そのものは変わっていません。

マイナ保険証の利用状況(社保審・医療保険部会(1)1 240410)



そこで厚労省は、本年(2024年)5-7月を「マイナ保険証利用促進集中取組月間」とし、次のような取り組みを行う考えを明らかにしました。
▽支援金を「集中取組月間限定の一時金」(最大、病院20万円、クリニック10万円)に改組する

▽新聞広告、テレビCM、地下鉄車内放映など、さまざまなメディアを活用した集中的な広報展開を行う



前者の一時金について、少し詳しく見てみましょう。

2023年度の補正予算において、マイナ保険証利用率が増加した医療機関に、増加率(最低5%以上-最高50%以上)に応じて1件当たり20-120円を交付する支援金が創設されました(関連記事はこちらこちら)。

この支援金は、次のように2段階で医療機関に交付されることになっていました。
(1)「2023年10月のマイナ保険証利用率」と「2024年1-5月のマイナ保険証利用率の平均」とを比較して、5%以上増加した場合、増加率(最低5%以上-最高50%以上)に応じて1件あたり20-120円を支援する

(2)「2023年10月のマイナ保険証利用率」と「2024年6-11月のマイナ保険証利用率の平均」とを比較して、10%以上増加した場合、増加率(最低10%以上-最高50%以上)に応じて1件あたり40-120円を支援する

マイナ保険証の利用率増加に応じた医療機関等への補助(社保審・医療保険部会4 231214)



このうち(1)の支援金を維持したまま、(2)の支援金を次のように新たな一時金に改組します。

【新たな一時金の考え方】
▽次の2つの指標に応じて、病院では10-20万円、クリニックでは3-10万円を交付する
▼2023年10月のマイナ保険証利用率
▼「2023年10月のマイナ保険証利用実人数」から「2024年5-7月のいずれかの月で最も多いマイナ保険証利用実人数」への増加数

▽2023年10月のレセプト件数が150件以下の小規模施設(全体の約15%程度)では、配慮した区分を設ける(1-5万円)
→ただし、マイナ保険証利用実績が高ければ上述の3-10万円の一時金を受けることも可能

新たな一時金の概要(社保審・医療保険部会(1)2 240410)



▽交付要件として、▼窓口での共通ポスターの掲示▼来院患者への「マイナ保険証の利用を求めるチラシ」配布の徹底を—を設定する

ポスター・チラシの利用が一時金交付の要件となる点に留意(社保審・医療保険部会(1)3 240410)



例えば、2023年10月のマイナ保険証利用率が25%の病院では、「2023年10月のマイナ保険証利用人数」と「2024年5-7月のいずれかの月で最も多いマイナ保険証利用人数」とを比べて10-39人増加していれば12万円、40-79人増加していれば15万円、80人以上増加していれば20万円の一時金が交付されます。

また、2023年10月のマイナ保険証利用率が7%の病院では、「2023年10月のマイナ保険証利用人数」と「2024年5-7月のいずれかの月で最も多いマイナ保険証利用人数」とを比べて、9人以下の増加の場合には一時金が交付されませんが、10-19人増加していれば3万円、20-29人増加していれば5万円、30-49人増加していれば7万円、50人以上増加していれば10万円の一時金が交付されます。



2023年10月のマイナ保険証利用率が高い医療機関では「すでに利用率向上に向けて相当の努力をしている」と見て、増加人数(2023年10月→2024年5-7月)がそれほど多くなくとも、高額な一時金が交付されます。一方、2023年10月のマイナ保険証利用率が低い医療機関では「もう少し利用率向上に向けて努力してほしい」との考えの下、増加人数(2023年10月→2024年5-7月)が一定程度以上の場合に一時金が交付されます。

「支援金」→「一時金」への改組によって、一概に「医療機関の支援が充実した」とは言えませんが(上述のように支援金・一時金は考え方が異なり比較は困難)、中園保険データ企画室長は「一時金は、分かりやすく、迅速な交付が可能になる」とコメントしています。



また、支援金・一時金の交付スケジュールは次のようにイメージできます。
▽「2023年10月のマイナ保険証利用率」と「2024年1-5月のマイナ保険証利用率の平均」とを比較して、5%以上増加した場合、増加率(最低5%以上-最高50%以上)に応じて1件あたり20-120円を支援する
※1-5月平均を見るため「6月以降」に支援金が交付される

▽「2023年10月のマイナ保険証利用人数」と「2024年5-7月のいずれかの月で最も多いマイナ保険証利用人数」とを比べて、一定以上の場合には病院では10-20万円、クリニックでは1-10万円の一時金を交付する
※5-7月の「もっともマイナ保険証利用人数が多い月」を選択するため、「8月以降」に一時金が交付される



厚労省は、医療機関等がこうした支援策を利活用する「条件」を確認するためのチェックリストも作成しています。

医療機関向けチェックリスト(社保審・医療保険部会(1)4 240410)

薬局向けチェックリスト(社保審・医療保険部会(1)5 240410)



なお、「8月以降の支援策」については改めて検討されます。



医療保険部会委員から、こうした考え方に異論・反論は出ておらず、保険者代表委員・医師会代表委員・経済界代表委員らが「医療DXの入り口となるマイナ保険証の利活用推進に向けて協力していく」考えを強調しています。あわせて「マイナ保険証の利便性向上、万全なセキュリティ対策によって利活用推進を図る必要がある」(内堀雅雄委員:全国知事会社会保障常任委員会委員長/福島県知事)、「国民に対し『安心して利用できる状況になっている』点をわかりやすくPRする必要がある。また、現実的には『マイナ保険証での受診のほうが医療費ベースで20円安くなる』点をしっかり周知するほかないであろう」(前葉泰幸委員:全国市長会相談役・社会文教委員/津市長)との意見も出ています。

今後の推移をしっかり見守る必要があります。



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