医療DXの入り口「マイナンバーカードによる医療機関受診」促進のため総合対策、全医療機関に利用状況を通知—社保審・医療保険部会
2024.1.22.(月)
本年(2024年)12月2日で「保険証の新規発行が終了」し、徐々に「マイナンバーカードの保険証利用」に一本化していく。このため、例えば「マイナンバーカードの保険証利用が多い医療機関等への補助」「全医療機関等へのマイナンバーカードの保険証利用状況通知」「医療保険者における『マイナンバーカードの保険証利用』の目標値設定」などの取り組みを総合的に行い、「マイナンバーカードの保険証利用」を促進していく—。
1月19日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こういった方針が概ね了承されました。近く厚労省で「前期高齢者交付金及び後期高齢者医療の国庫負担金の算定等に関する政令」の改正が行われます。
マイナンバーカードを持たない者のため「資格確認書による保険診療受診」環境を整備
昨年末(2023年末)に「現行の健康保険証の新規発行を本年(2024年)12月2日に終了し、マイナ保険証(マイナンバーカードの保険証利用)を基本とする仕組みに移行する」方針が閣議決定されました。
一方、マイナ保険証の利用状況は依然として低調です。
そこで厚生労働省はマイナ保険証の利用促進に向け、例えば次のような対策を総合的に行う考えを提示しました。
【医療機関・薬局】
▽「本年(2024年)1月以降の利用率」が昨年(2023年)10月に比べて増加した医療機関等に対し、増加量に応じた支援を行う
▽マイナ保険証と診察券との一体化等への補助金創設
▽2024年度診療報酬改定での「マイナ保険証利用実績に応じた評価」を検討
▽全医療機関への「マイナ保険証利用実績」通知(自主目標設定などに向けて活用してもらう)
▽国所管団体が開設する公的医療機関等への「2023年5月末、11月末の利用率の目標設定」を要請(国立病院機構(NHO)、地域医療機能推進機構(JCHO)、国立高度専門医療研究センター(NC)、労働者健康安全機構(JOHAS)、日本赤十字社、済生会)
▽厚労省所管法人の病院におけるマイナ保険証専用レーンの設定・説明員の配置
▽マイナ保険証を利用できなかった事例への対応(コールセンターへの情報提供に基づく事実調査など)
▽レセプトオンライン請求時にマイナ保険証への取り組み状況アンケート調査(2月以降、窓口での「マイナンバーカード(マイナ保険証)お持ちですか」との呼びかけ、マイナ保険証の利用を促すチラシ、ポスター等の院内配布、掲示等、医療機関ホームページへの「マイナンバーカード」の持参の記載状況などをアンケート調査する)
【保険者・事業者】
▽マイナ保険証の利用率目標設定(2月中に国から事務連絡などを行う)と、実績におうじた保険者インセンティブ・業績評価等
▽集中的な動画広報
▽加入者への「マイナ保険証のメリット周知」など(マイナ保険証を利用すれば限度額認定証が不要となるなど)
▽国保直営診療施設におけるマイナ保険証の利用率の目標設定(2月中目途)
▽健康経営優良法人認定制度における認定等の際の調査項目にマイナ保険証利用に関する事項追加
「過去の診療情報を現在の診療情報に活かし、より質の高い効率的な医療提供を可能とする」医療DXの入り口となるのがマイナ保険証利用と言え、こうした方針に異論・反論は出ていません。ただし、「患者・国民にマイナ保険証の利便性・メリットを実感してもらうことが最も重要である」(猪口雄二委員:日本医師会副会長)、「マイナ保険証利用実績を保険者へのペナルティに用いることは好ましくない」(前葉泰幸委員:全国市長会相談役・社会文教委員/津市長、北川博康委員:全国健康保険協会理事長)などの注文がついています。関係者全員が「マイナ保険証の利用促進」にさらに力を入れることが重要です。
なお、マイナンバーカードを保持するか否かは国民の自由であり、「保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化」する場合には、「マイナンバーカードを持たない人が、どうやって保険診療を受けるか」が気になります。
この点、▼発行済の保険証は「最大1年間利用可能」とする▼マイナンバーカードを持たない者・マイナ保険証利用を行わない者に「資格確認書」を各医療保険者が無料でプッシュ型で交付する—という対応が行われます(加入者側が申請せずとも資格確認書が交付される)。
保険証廃止後であっても「マイナンバーカードを持たずに保険診療を受けられる」環境が整えられます。
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